北海道ニセコ町は、国内に限らず、海外からも数多くのファンが足を運ぶスノーリゾートの聖地として知られる。その町に、超省エネの集合住宅から成る“持続可能なまち”が建設されるという。現地を訪ね、事業会社のキーパーソンに話を聞いた。

住宅不足に悩むブランド力の高いニセコ町

 北海道ニセコ町(ちょう)は、蝦夷富士とも呼ばれる美しい羊蹄山の麓にある。壮大な山懐に抱かれた同町は国際的なスノーリゾートとしてつとに有名である。

 さらさらのパウダースノーがスキーヤー、スノーボーダーを魅了してやまず、冬のハイシーズンは国内外からたくさんの観光客が訪れる。自動車で札幌市から約2時間、小樽市から約1時間半の距離にあり、冬季には新千歳空港から直行バスが運行。アクセスのよさも人が集まる要因のひとつとなっている。

 スノーリゾートはニセコアンヌプリ(標高1,308m)の裾野にあり、隣の倶知安(くっちゃん)町を含めて「ニセコユナイテッド」を形成している。メディアで報じられることの多い観光施設が密集した比羅夫(ひらふ)地区は倶知安町にあり、ニセコ町側はよりストイックな雰囲気がある。

ニセコ町役場3階から望む羊蹄山(写真:小口正貴)
ニセコ町役場3階から望む羊蹄山(写真:小口正貴)
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 冬のイメージが強いニセコエリアだが、夏も数多くの観光客がやってくる。周辺一帯のニセコ温泉郷は人気があり、ニセコ町の中央を流れる尻別川ではカヌーやラフティングが楽しめる。近年は「ニセコビレッジ」でマレーシア資本による高級ホテルの建設が進み、ゴルフ場や自然体験施設も整備。シーズンを通じてレジャーを楽しむファンも増えてきた。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、観光客が激減する大打撃を受けたのは事実だ。しかし、暮らすまちとしてのニセコ町は人気が高く、2000年以降は人口が微増傾向にある。しかも40歳代の働き盛りが増加しており、普通出生率は全国や道内平均と比較しても高い。

 将来人口は2030年に5,608人でピークを迎えると推計されている。2022年3月末時点の人口が4,887人であることから、今後も上り調子で人が増えることが予想される。外国人住民が約6%、272人いることも特徴のひとつ。町内で、ベビーカーを押す外国人の姿を見ることも珍しくはない。

 こうした背景もあり、ニセコ町では慢性的な住宅不足に悩んできた。ニセコのブランド力は高く、バブル期のペンションブームから移住者が絶えないが、宅地面積はわずか1%に過ぎない。大型ホテルをはじめとして町内で働く人たちは多いものの、住居がないためにニセコ町に住めず、周辺町村から通う人が多数いる。

 公営住宅は全60棟400戸と、5,000人規模の自治体としては少なくない数を用意しているが、それでもコロナ禍が本格化する前は入居待ちの状態が続いた。その上、家族の多い子育て世帯が狭い間取りでの生活を強いられたりといった住居のミスマッチも発生している。

 2020年7月、これらの課題を解決すべく「株式会社ニセコまち」が設立された。官民連携による事業会社で、今後はニセコまちが中心となって「SDGs街区」をつくる計画だ。文字通り“世界基準の持続可能なまちづくり”を掲げたプロジェクトで、2022年から着工する。