セレクトショップのビームスによる「BEAMS JAPAN(ビームス ジャパン)」は、日本の魅力を世界に向けて発信している。昨今ではモノの販売やプロデュースに閉じず、自治体や企業と連動したまちの活性化にも精を出す。ファッション/アパレル業界をリードする同社がなぜ、リアルなモノ、ヒト、コトの媒(なかだち)をするのか。ビームス ジャパンに込めた思いと、全国各地で花開いた成果を紹介する。
改めて気づいた日本のカッコよさ
1976年、東京・原宿にオープンしたビームス。良質なセンスで輸入衣料や雑貨をそろえ、日本におけるセレクトショップの先駆けとしてファッションシーンを牽引してきた。
そのビームスが、創業40周年となる2016年にオープンしたのが東京・新宿にある「ビームス ジャパン」だ。店舗のコンセプトは日本の魅力を世界に発信すること。地下1階〜5階までを「食」「ファッション」「カルチャー」などの切り口で分類し、日本各地から逸品を集めて販売している。
現在、店舗は新宿、渋谷、京都の3ヵ所にあるが、ビームス ジャパンはプロジェクト総体の名称でもある。今ではモノ売りの枠を超え、自治体や企業とも連携した“まちの活性化”にまで深く関わっている。
米国文化、ファッションへのあこがれが起因して始まったビームスが日本の良さに目を向けるようになったのは、代表取締役社長の設楽洋氏が改めて「日本文化はカッコいい」ことに気づいたからだという。海外に足を運んだ際、高評価を得るメイド・イン・ジャパンの製品に触れる機会が多かったことも後押しした。
実はビームス ジャパンが始まる2016年以前から、まちの活性化に連なる動きはあった。そのひとつが2014年にスタートした、東日本大震災の被災地復興を支援する「KENDAMA TOHOKU(ケンダマトウホク)」プロジェクトだ。
海外にもファンが多いけん玉を核に、競技用けん玉で日本一の生産量を誇る山形工房(山形県長井市)、東北ちくちくプロジェクト(宮城県石巻市)、南三陸ミシン工房(宮城県南三陸町)、ふくしまオーガニック コットンプロジェクト(福島県いわき市)のメンバーらが集結し、ビームスがけん玉やトートバッグ、Tシャツなどを企画・販売。世界から有名選手を招いたけん玉イベントを石巻市で定期開催するなど、継続的に活動してきた。
ビームス ジャパンでプロジェクトリーダーを務める佐野明政氏は、ビームスの南馬越一義氏(シニアクリエイティブディレクター)の下、KENDAMA TOHOKUの舞台裏で奔走した人物。佐野氏は「ビームスには、いろんなブランドとコラボしてきた別注(特別に注文して作ること)の歴史がある。ビームスと組めば面白いことができるのではないか。そんな土壌があったと思う」と振り返る。
その働きぶりを設楽氏に認められ、ビームス ジャパンには準備段階から参加。外部アドバイザーに放送作家の小山薫堂氏を迎え、これまでのスタイルにとらわれない発想でプロジェクトを進めてきた。
「設楽からは『ビームス ジャパンでは小売り以外のビジネスを担当してほしい』と言われた。それを聞いて、モノ売りで完結しない、コト体験まで含めたビジネスを回すことが自分の役割なんだなと。ちょうど世の中がモノからコトへとシフトしてきた潮流も大きかった。そこに日本ならではのこだわりの文化をかけ合わせれば、面白いことができそうだと考えた」(佐野氏)