知事も信頼を置く地域を盛り上げる連動企画

 例えば2018年1月から継続中の案件に、福島県との「ふくしまものまっぷ」がある。こちらも震災復興を契機とした取り組みで、自治体だけではできないユニークな試みを民間企業の力を借りながら実現している。2021年3月までの間に、タイアッププロジェクトは第26弾まで実施済み。福島県の内堀雅雄知事も意欲的で、過去に新宿のビームス ジャパンに訪れたこともある。

福島県知事が大喜びしたという“立つ”赤べこ(出所:ビームス)
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 「一緒に動いているバイヤーの鈴木(修司氏)が、もともと福島県で発行していた『ふくしままっぷ』という情報誌にヒントを得て、県全域の名産品や伝統工芸品、食べ物などをフォーカスしたいと企画した。これまでに大堀相馬焼、白河だるま、郡山市のソウルフードであるクリームボックスなどを取り上げ、物品に関してはその都度コラボレーションしてきた。中でも内堀知事が大喜びしたのが、別注の赤べこ。会津地方の名産品である赤べこと起き上がり小法師の構造を組み合わせて“立つ”ようにしたところ、知事室に飾ってくれるほど気に入ってくれた。自由なアイデアが出てきて、それをメーカーさんと一緒に形にできるのがビームスの強みだと認識してくれたようだ」(佐野氏)

 2016年から始まった大分県別府市との「BEAMS EYE on BEPPU」では、協業開始にあわせて別府市から新宿の店舗に温泉を直送。1階スペースに「ビームスの足湯」を設け、大きな話題を呼んだ。また、別府市の事業者と意見交換しながら、温泉の源泉を利用した飲料、スキンケア商品、人気銘菓、ポン酢、つげブラシなどを新規開発。「あたらしいみやげもの」として販売した。

別府市の事業者と開発した「あたらしいみやげもの」(出所:ビームス)
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 「ある自治体で事業者を交えたディスカッションに同席したとき、事業者が『自治体は新しい商品を作れと言うけれど販路がないじゃないか』と指摘していて。でもビームス ジャパンなら実店舗もEC(電子商取引)もあり、販路を確保した上でコラボできる。その効果が決して少なくないことを福島県や別府市との事例で証明した。皆さん、新しい販路の開拓にすごく悩まれているが、我々の取り組みが良い循環につながっている実感はある」(佐野氏)

 2020年からは福井県とのプロジェクト「FUKUI TRAD」に着手。福井県に点在する越前漆器、越前和紙、越前焼、越前箪笥、越前打刃物、若狭塗、若狭めのう細工と7つの伝統工芸品をアップデートし、若い世代にその素晴らしさを伝える企画である。2024年に開業予定の北陸新幹線延伸ルートにあわせたファン創出の狙いもある。

 ビームス ジャパンではターゲットを若い女性に絞り、工芸品の開発監修に当たった。2021年3月から発売した第1弾の「ふくいとらっど」では、”女優・創作あーちす”とであるのんさんに原画を依頼。越前漆器のネイルチップ、越前焼のネックレス、越前和紙のシュシュ、若狭塗の塗箸などがフェミニンかつ今風のプロダクトに生まれ変わった。

“映え”必至のふくいとらっどのプロダクト群(出所:ビームス)
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 「これだけ可愛いとインスタ映えする。これまでの活動を見て、ビームスのトータルプロデュース能力、1を10に増幅して発信できる力を信頼してくれているのだと思う。どういうデザインが消費者に響き、どのようにプロモーションすればより伝わるか。小売りで培ってきたノウハウを、モノやコトの新たな体験に応用できるフェーズになってきた」(佐野氏)