企業を巻き込んだ都会ならではの企画も

 自治体に限らず、企業とのコラボも積極的に進める。もちろん利己的な内容ではなく、文化やまちを横断した取り組みとなる。

 2019年から始めた「銭湯のススメ。」は、牛乳石鹸のアプローチがきっかけ。リーチできていない潜在層にアピールしたいとの相談を受け、銭湯文化や風呂文化の継承を大事にしたいとの思いをヒアリングした。そこで銭湯を舞台にしたトークショーや、東京都浴場組合の協力のもとスタンプラリーなどを実施。2020年は新型コロナウイルスの影響により延期を余儀なくされたが、2021年4月には第2弾となる「銭湯のススメ。2021」を無事にスタートさせている。

「銭湯のススメ。2021」の設営準備を見守る佐野氏(写真:小口正貴)
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 第2弾ではスポーツ×銭湯を軸に、『テルマエ・ロマエ』『オリンピア・キュクロス』の作者であるヤマザキマリさんに銭湯の壁画デザインを依頼。前回のイベントで会場を提供した東京・東上野の寿湯の壁にプロジェクターで原画を映し出し、銭湯絵師の田中みずきさんが一昼夜をかけて描き上げた。

東上野の寿湯に描かれた「銭湯のススメ。2021」のダイナミックな壁画(写真:小口正貴)
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 当初のオファーから発展し、大掛かりな魅力発信プロジェクトとなったのが2019年の「大名古屋展」だ。そもそもはサッカーJ1リーグに所属する名古屋グランパスのユニフォームデザインの依頼だったが、佐野氏が名古屋市出身ということもあり「ビームスの視点で名古屋の企業とともに名古屋の文化を届けたい」(佐野氏)というアイデアにつながった。

ビームスが2019年にデザインした名古屋グランパスのユニフォーム(出所:ビームス)
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 「名古屋グランパスがスタジアムイベントとして『鯱(しゃち)の大祭典』を企画していたので、連動企画として走らせようと。愛知県、名古屋市を盛り上げる意図が同じだったからだ。ビームスではシャチハタ、スジャータめいらく、クッピーラムネで有名なカクダイ製菓らを取りまとめ、コラボTシャツの販売や名古屋の魅力を伝えるフリーペーパーの配布などを行なった。グランパスの2試合では、ビームスがデザインしたレプリカユニフォームを計6万枚配布し、スポーツとファッションをクロスオーバーさせた。僕らはサッカーファンにリーチできないし、グランパスはサッカーファン以外へのリーチが難しい。お互いの企画力と持ち味をかけ算したことで、かなりの波及効果があった。この方法論を日本全国で展開したい」(佐野氏)

「大名古屋展」のコラボ商品の数々。地元の有名企業が参加した(出所:ビームス)
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 数年前の地方創生ブームでは、地方都市に首都圏のコンサルティング会社や広告代理店が大挙して押しかけ、結局は何も成果が残らないといった事例も散見された。東京から乗り込むビームスが警戒されることはないのか? そんな意地悪な質問に佐野氏はこう答えてくれた。

 「バイヤーの鈴木も僕も、とにかく最初に課題とやりたいことをしっかりと聞くようにしている。常に立ち位置は対等で、上から目線で何かを提案することはない。いずれにしろ、僕らの場合は単純にアドバイスして終わりではなく、最終的にはモノが生まれ、Webや動画、フリーペーパーなどのコンテンツもついてくる。そこには必ずビームスのロゴが入るわけで、ブランドを背負ってプロジェクトを推進している責任と覚悟がある。コンサルや代理店とは、その点が決定的に違う」(佐野氏)

 こうきっぱりと答えたのが印象的だ。

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