日本の文化発信地として君臨する新宿ゴールデン街。わずか2000坪ほどに290軒以上の飲み屋が密集する、世界でも稀有な飲食店街として知られ、近年ではインバウンドの観光スポットにもなった。2020年末、このまちがひとつになった新看板の掲出には、セレクトショップのビームスの社員が深く関わっている(前編はこちら)。

2020年末、ようやく掲げられた統一看板

 東京都新宿区歌舞伎町1丁目。この地に密集する飲み屋街が新宿ゴールデン街である。第二次世界大戦後から続く木造長屋が軒を連ね、令和のこの時代にあっても昭和の薫りをプンプンと漂わせている。

 ギラギラと輝く世界有数の歓楽街、歌舞伎町がすぐそばにあるにもかかわらず、新宿ゴールデン街はそれとは一線を画す独自の文化を醸成してきた。小説家、編集者、放送関係者、映画監督、ミュージシャン、俳優、芸術家などが夜ごと足を運び、戦後サブカルチャーの発信地となったのはご存じのとおりだ。バブルによる激しい地上げにも屈せず、近年では若い世代のオーナーが急増。また新たなカルチャー発信地として名を馳せる。

 新宿ゴールデン街には南側に「新宿ゴールデン街商業組合」、北側に「新宿三光商店街振興組合」と2つの組合があり、さらに地主組合の「花園街商業協同組合」が存在する。このうち、新宿三光商店街振興組合が管轄する通りに掲げられていたのは「あかるい花園○番街」と書かれた看板であり、新宿ゴールデン街の名称が使われていなかった。

新宿三光商店街振興組合の管轄地域に掲げられていた以前の看板(出所:ビームス)
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 しかし2020年12月1日、晴れて「新宿ゴールデン街 あかるい花園○番町」と名称が変更され、隣接する新宿ゴールデン街商業組合との統一看板を掲出するに至った。変更したのは「あかるい花園一番街」「あかるい花園三番街」「あかるい花園五番街」「あかるい花園八番街」「まねき通り」(これのみ2ヵ所)の全6ヵ所。鮮やかなオレンジに白文字が浮かび、夜のまちでも視認性が高い。

新たに掲出された看板。濁点の意匠はゴールデン街の名前の由来になった金貨をあしらったもの。オレンジには、代々(橙)栄えるとの意味を込めた(出所:ビームス)
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 統一看板の掲出に絡み、ビームスが尽力したことを知っているだろうか。そう、ファッション/アパレル業界で名高い、あのビームスである。一体なぜビームスが新宿ゴールデン街と接点を持ち、これまでなかなか進まなかった表記の統一を成功させたのか。これは、鎹(かすがい)となったビームス社員が半年間にわたって奮闘した物語である。