「スープストックトーキョー」を祖業とし、現在は入場料がかかる斬新さで有名な書店「文喫」のプロデュースや各種コンサルティングなど幅広い事業を展開する株式会社スマイルズ。ファミリーレストラン「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」では、敷地内に公園をつくり上げてしまった。しかも子どもたちが主役となって考え抜いたプランを具現化したという。スマイルズを貫くユニークネスの根源に迫る。

自分ごとをビジネスに転化する独自のスタンス

 三菱商事初の社内ベンチャーとして、2000年に遠山正道氏が立ち上げたスマイルズ。スープストックトーキョーで“スープを主役”とした外食文化を日本に根付かせ、たくさんの人の胃袋を満たしてきた。

 2021年4月1日付で、飲食関連事業を2016年に分社化した株式会社スープストックトーキョーに承継。スマイルズはブランディング/コンサルティング、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」やネクタイ専門店「giraffe」の運営など、飲食以外の事業を担うことになった。

 とはいえ、両社に宿るDNAは同じだ。これまでの事業は個人の体験や世間に対する疑問をベースに、すべて自分ごとから始まった。つまり、大衆の傾向をつかむマスマーケティングとは真逆のやり方で、世の中になかったユニークな価値を次々と生み出してきた。会社案内のパンフレットの最終ページに記された「誰にも似てない」というメッセージは、スマイルズのイズムを端的に表したものだ。

 2012年にスタートしたファミリーレストラン「100本のスプーン」も、1人の社員の「なんで大人も子どもも楽しめるファミレスがないんだろう?」との思いから生まれた。もちろんファミレスやフードコートは全国どこにでもあるが、子どもと一緒の場合は機械的に“食事をする行為”が優先されてしまい、快適な空間で過ごすことは二の次になっていたからだ。

世界中から選りすぐった絵本コーナーを備える「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」(写真提供:スマイルズ)
世界中から選りすぐった絵本コーナーを備える「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」(写真提供:スマイルズ)
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 そこで100本のスプーンは「自分の家族を連れていきたくなるファミリーレストラン」をめざした。できる限り子どもと大人の垣根をなくし、子ども向けにハーフサイズで大人と同じ料理を提供。物心ついたときから本物の食を楽しむ体験を味わえるようにした。一方で10品の人気メニューをワンプレートにした「リトルビッグプレート」は、大人向けのお子さまランチ。「コドモがオトナに憧れて、オトナがコドモゴコロを思い出す。」というキャッチコピーは、まさに言い得て妙である。

 横浜市にある「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」(以下、あざみ野店)は2013年にオープン。東急グループが運営する郊外型商業施設の一角にあり、近隣を中心に自家用車でファミリー層が訪れる。かつてあざみ野店の店長を務めたこともある事業部長の宮川大氏は、100本のスプーンの特徴をこう語る。

スマイルズ 100本のスプーン 事業部長の宮川大氏(左)と、スマイルズ クリエイティブ本部 広報の蓑毛萌奈美氏(右)(写真:小口正貴)
スマイルズ 100本のスプーン 事業部長の宮川大氏(左)と、スマイルズ クリエイティブ本部 広報の蓑毛萌奈美氏(右)(写真:小口正貴)
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 「100本のスプーンでは、“自分がお客さまだとしたら、本当にこのファミレスを使いたいか”という視線を忘れないように心がけている。(設立者の)遠山もスープのたとえをよく話すが、原価を下げようと思えば簡単に下げられる。しかし、それをやってしまったら価値も下がり、お客さまの信頼関係がなくなり、足が遠のく。愚直にコツコツと良いものを提供して、長い時間をかけて信頼関係を築き上げてきた。お客さまは必ずしも値段や利便性だけで100本のスプーンに来ているわけではない。店舗で滞在する時間やそこでの体験、雰囲気、取り組んでいる姿勢などに共感して足を運んでくれる方がとても多い」(宮川氏)