プロジェクト型学習を地でいく公園づくり

 6年目に突入した2018年11月、あざみ野店では子どもたちと一緒に公園づくりに着手した。開放的なテラス席に隣接する小高い丘のような敷地を切り開き、子どもたちが思いっきり遊べる場所を自らの手でつくる画期的なプロジェクトだ。

 私有地を公園化するだけでも大胆な発想だが、そのプランを子どもたちを交えながら発展させていくアプローチはさらに斜め上をいくものだ。しかも参加者は100本のスプーンの常連客を軸に声をかけて集めた。先述したように、よほどの信頼関係がなければうまくいかないスキームといえる。

あざみ野店に隣接する公園。個性的な遊具やテーブルが並ぶ(写真提供:スマイルズ)
あざみ野店に隣接する公園。個性的な遊具やテーブルが並ぶ(写真提供:スマイルズ)
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 「もともとこの場所を借りたときは、公園の敷地を含めてテラス席にすることを考えていた。だが、スマイルズには事業部とクリエイティブチームが濃密にコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める文化が浸透している。話し合いを重ねるうちに自然と『家族のために運営している姿勢を直接的にわかりやすく伝えたい』との声が出てきた。そこから公園づくりを着想した」(宮川氏)

 子どもたちを巻き込んだ公園づくりのヒントになったのは、クリエイティブ本部 広報の蓑毛萌奈美氏が目にしたミュージアムエデュケーターの会田大也氏によるドイツのプロジェクト型学習の記事だった。プロジェクト型学習とは、日本でも2020年から始まった新学習指導要領で叫ばれている「生きる力」を実践する学習のことだ。

 会田氏の記事では、小学校5年生が校舎づくりを担当し、それを毎年同じ学年が引き継いで、11年かけて完成する取り組みを紹介していた。「業者に依頼して公園を整備するだけでは面白みがない。プロジェクト型学習をスマイルズで実現できたら我々にとっても大きな価値になると考えた」(蓑毛氏)。

 これをきっかけに会田氏、そして建築家の岡野道子氏とつながり、プロジェクトチームを結成。2018年11月から2019年3月までを「かんがえる篇」と設定し、計3回のワークショップを開催した。集まったのは小学校1〜6年生までの25人の子どもたちだ。

ワークショップでアイデアを出し合う子どもたち(写真提供:スマイルズ)
ワークショップでアイデアを出し合う子どもたち(写真提供:スマイルズ)
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 ワークショップでは果樹園、畑、秘密基地、滑車、池など、実にさまざまなアイデアが出てきた。そのすべてを実現することはできないが、頭ごなしに否定することなく「なぜできないのか」を大人たちがきちんと説明しながら進めた。

スマイルズのスタッフとともに子どもたちをサポートした岡野道子氏(左)と会田大也氏(右)(写真提供:スマイルズ)
スマイルズのスタッフとともに子どもたちをサポートした岡野道子氏(左)と会田大也氏(右)(写真提供:スマイルズ)
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 「岡野さんの『公園とは何か?』のレクチャーから始まり、整備前の敷地のフィールドワークをしたり、グループごとに公園のコンセプトづくりをしたり。最終的にはきちんと模型を作ってプレゼンを行うなど、簡易版とはいえ実際に建築家が行うプロセスをトレースした。会田さんは教育者の視点から、『自分たちが考えに考えた末に理解していく過程が重要』と励ましてくれた。子どもたちにとっては有意義な社会体験になったと思う」(蓑毛氏)