サウナといえば男性が好むイメージがありましたが、サウナブームで多彩なサウナが登場し、男性だけでなく女性の利用客もどんどん増えています。銭湯の元番頭で絵描きの塩谷歩波さんが、全国にある地域色豊かなサウナを訪れ、まちや人との関係を解き明かします。野尻湖畔にあるログハウス型サウナ「The Sauna」は、予約が取れないことで有名です。どうやって人気サウナとなったのか、その歩んできた道のりを探ります。
前編はこちら

 2019年2月に野尻湖のゲストハウスLAMP内にオープンし、サウナ愛好家から愛され続け、いまや予約が取れない人気サウナとなった「The Sauna」。2022年1月には新たに2棟のサウナもオープンし、進化し続けています。後編では、LAMP野尻湖の支配人でサウナビルダーの野田クラクションベベーさんにお話を伺います。

左は野田クラクションベベーさん、右は筆者の塩谷歩波。撮影時のみマスクを外してもらいました(写真:アトリエエンヤ)
左は野田クラクションベベーさん、右は筆者の塩谷歩波。撮影時のみマスクを外してもらいました(写真:アトリエエンヤ)
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塩谷まず、The Saunaができるまでの経緯を教えてください。

ベベさんThe Saunaをつくる前からLIG(宿事業としてLAMPを運営するウェブ制作会社)に所属していたのですが、以前は米国横断や日本一周、ラッパーをしていました。サウナにハマったのは日本一周をしていたとき。四国のお遍路中にお風呂屋さんに立ち寄って、日焼けが痛くて仕方なかったからクールダウンのつもりで水風呂に腕をつけてみたら、気持ちよくて。全身つかって椅子で休んでいたら、さらに気持ちよくて。その日は野宿なのによく眠れたこともあって、水風呂の良さに気づきました。東京に帰ってからはサウナに足を運ぶようになり、すっかりハマってしまいましたね。

塩谷水風呂からサウナの良さを知ったのですね。サウナをつくろうと思ったのはどうしてですか?

ベベさん当時、ラッパーの活動に行き詰まりを感じていました。歌っても歌っても誰にも届かなくて、挫折感がありました。仕事の関係でたくさんの人とお会いしていたのですが、どの人も仕事が好きな気持ちが根幹にあるのに、自分は好きな気持ちがないままラッパーを続けていて、自分との差を感じてつらかったです。

 そこでいろんな先輩にその気持ちを相談したら「ベベはサウナの話をしているときが一番目が輝いている」と言われました。自分はサウナが好きなんだ、ならサウナを仕事にしたい! と思ったんです。でもLIGはウェブ制作会社だからどうしようかと迷っていたときに、宿事業としてLAMPを運営していることを思い出しました。フィンランドではサウナの後に湖や海に飛び込むのが普通だし、野尻湖のほとりにあるLAMPにサウナをつくって湖に飛び込んだら気持ちいいんじゃないかと。

塩谷ウェブ制作会社のLIGがLAMPを運営しているのですね。

ベベさんそうなんです。そもそも、野尻湖を中心にアウトドアスクールを行っているサンデープラニングがLIGの前身です。47年前、ゴウさん(LIGの会長)のお父さんのヨシさんがカヤックを教えたことからサンデープラニングは始まりました。

 野尻湖周辺はカヤックだけでなく春や秋には山菜やきのこ狩りもできて、通年でアウトドアを楽しめる場所として人気があったのですが、アウトドアブーム自体が衰退してきて……。事業の形態を変える必要がでてきた8年くらい前に、サンデープラニングの拠点がゲストハウスLAMPとなりました。

現在もサンデープラニングは営業中。夏には野尻湖で水上スポーツのSUP(サップ)も楽しめる(写真:LAMP)
現在もサンデープラニングは営業中。夏には野尻湖で水上スポーツのSUP(サップ)も楽しめる(写真:LAMP)
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塩谷どうしてLAMP内にサウナをつくるのではなく、サウナ小屋を建てたのですか?

ベベさんむしろ、最初はLAMP内ではなく野尻湖の湖畔沿いにサウナをつくろうと思ったんです。サウナをつくるときにゴウさんに言われたのは「1年目で黒字化すること」「自分で資金を集めること」。早速、開業に必要な資金を調べたのですが、営業許可を取るためにはシャワーやトイレなどの設備が必要で、最低でも2000万円かかることが分かりました。

 そうなると1年目で黒字化はとても無理なので他の方法を探したところ、LAMPの敷地内にサウナ小屋を建てるなら旅館業法の変更届を出すだけで済むという。サウナ小屋だけなら300万〜400万円あれば建てられるので、資金面でもこれがベストでした。そこでクラウドファンディングで資金を集め、2019年2月にログハウス型のサウナ小屋「ユクシ」を建てました。