日々の健康のため、疲れた心と体を癒やすため、サウナの人気が高まっています。これまで男性が好むイメージが強かったサウナですが、最近は女性サウナーも増加中。銭湯の元番頭で絵描きの塩谷歩波さんが、全国にある地域色豊かなサウナを訪れ、まちや人との関係を解き明かします。今回はさいたま市。前編に続き、「お風呂とカフェの融合」がテーマの「おふろcafé utatane」を紹介します。

女性用浴室の奥に新しく設置したバレルサウナ。男性用浴室にも同様のバレルサウナを設置している(写真:塩谷歩波)
女性用浴室の奥に新しく設置したバレルサウナ。男性用浴室にも同様のバレルサウナを設置している(写真:塩谷歩波)
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 おふろcafé utataneの浴室の奥を見ると、樽(たる)のような形のサウナが新設されていました。「バレルサウナ」と呼ぶそうです。取材した2021年6月中旬の時点ではまだ稼働前とのこと。今後、どのように展開されていくのか、おふろcafé utataneの統括支配人である新谷竹朗さんに詳しく伺ってみましょう。

おふろcafé utataneの統括支配人の新谷竹朗さん(写真左)。右は塩谷歩波。撮影時のみマスクを外してもらいました(写真:アトリエエンヤ)
おふろcafé utataneの統括支配人の新谷竹朗さん(写真左)。右は塩谷歩波。撮影時のみマスクを外してもらいました(写真:アトリエエンヤ)
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塩谷まずは、おふろcafé utataneをオープンした経緯から聞かせてください。今年(2021年)で何年目になりますか?

新谷さん今年で8年目になります。2013年11月にオープンしました。施設自体は高架下の遊休不動産を活用する目的で建てられた温浴施設で、過去には別団体がスーパー銭湯として運営していました。その契約期間が終わった後、居抜きで貸し出すという話があり、私たち「温泉道場」が手を挙げました。

 埼玉はスーパー銭湯激戦区で、ライバルがめちゃくちゃ多いんですよ。この近くなんて大型の施設が6つもあります。なので、普通のお風呂屋さんをやっていても絶対埋もれてしまう。当時は若者や女性が楽しめる施設があまりありませんでした。その一方で、スターバックスがはやっていたり、イケアのような北欧文化に注目が集まっていたりしたこともあったので、木目調の落ち着いた館内をカフェで過ごすように、むしろカフェの中にお風呂がついているぐらいのスタンスで始めたのがおふろcafé utataneでした。

塩谷なるほど。ラウンジの天井にゆらめくオーロラ風の布や、カフェで提供する北欧風のメニューは、そういった「北欧の文化を伝える」ことが軸にあるのですか?

ラウンジからカフェスペースを見る。天井にオーロラ風の布がゆらめく(写真:塩谷歩波)
ラウンジからカフェスペースを見る。天井にオーロラ風の布がゆらめく(写真:塩谷歩波)
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カフェで提供しているノルウェーサーモンプレート(写真:塩谷歩波)
カフェで提供しているノルウェーサーモンプレート(写真:塩谷歩波)
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新谷さんそうですね。「本物を伝える」という理念の下、実際にフィンランドを訪れてインスピレーションを得たり、フィンランド大使館に監修していただいたりと、常にブラッシュアップしています。

塩谷サウナブームが来たことで、一気に人気が出たのでしょうか?

新谷さんいえ、サウナブームは最近です。画像共有アプリ「インスタグラム」のブームのときが来館者数はピークでした。インスタ映えするフォトスポットだと、写真を撮ることを目的に高校生や大学生の女性などに来てもらえるのですが、タオルを貸し出しても使用されずに返ってくることもありました。風呂屋なのに風呂に入らない方が多い。もちろん収益的には良かったのですが、あまりお風呂屋さんとしての魅力が発信できていないなと感じていました。

 そういうときに僕が関わるようになり、フィンランドらしさを伝える工夫をコツコツ始めました。北欧メニューのプレートをつくったり、サウナに関するトークイベントを行ったり……。

塩谷新谷さんがそんなチャレンジを始めたのは2018年頃ですよね。どんどんサウナコンテンツが充実していくのが面白くて、私も見ていました。

新谷さん以前フィンランドに行ったとき、たまたま公衆サウナに入ったらとても感動して、必ず日本でもつくろうと決めました。それが原動力です。もともといろんな人が集まる拠り所みたいなカフェをつくってみたいと思っていました。日本の銭湯に似ているフィンランドの公衆サウナを知り、これをやってみようと考えました。