棚の1枠で本を販売する「書店街」も新設

ロビー奥にあるフロナカ書店街(写真:塩谷歩波)
ロビー奥にあるフロナカ書店街(写真:塩谷歩波)
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塩谷最近、ロビーに「フロナカ書店街」を新設したそうですね?

田川さんフロナカ書店街は今年(2021年)6月下旬にできました。棚の1枠を自分の本屋さんとして出店できる仕組みです。好きな本を並べて、それを販売できるんです。1枠あたり月額4000円で貸し出していまして、販売手数料はいただいていません。

塩谷どんな方が出店されているんですか?

田川さんいろんな方がいます。ものづくりをしている人から、本好きの人まで。

相良さん年齢層が面白くて、おじいちゃんやおばあちゃんもいらっしゃいます。遠くから出店している人もいますよ。本を郵送してくれれば、こちらで飾って並べるので、楽でいいようですね。

塩谷フロナカ書店街を思いついたきっかけはありますか?

田川さん入浴料金以外の収益を考えるなかで、スタッフの一人が「ブックマンション」*の取り組みを教えてくれました(*ブックマンションは東京・吉祥寺にある本屋。棚を借りて本を販売する。棚の1枠ごとにオーナーが異なり、多種多様な本が販売されている)。それを聞いた弊社の社長がすぐにやろう! と言って、1ヵ月ほどで造りました。こちらとしては本を置くだけで済むので、銭湯のオペレーションに負荷がかからないし、お風呂上がりに本を手に取る方も多くなり、いい試みだと感じています。

ロビーとフロント(写真:塩谷歩波)
ロビーとフロント(写真:塩谷歩波)
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塩谷リニューアルの前後で、以前から東京浴場を使っている常連のお客さんの反響はいかがですか?

相良さんリニューアル以降も、かつての常連さんを引き継げていると思います。新規のお客さんと共存しているなあという印象がありますね。午後6時まではおじいちゃん、おばあちゃんたちが多くて、それ以降は若い人が多いです。

塩谷リニューアル以降の新しい試みについて、常連さんはどんな反応ですか?

相良さんそんなものなくていいわよ、と言われることもあります(笑)。でも、そういう意見も、番台でのコミュニケーションの一つだと思っています。そうやって“ツッコんで”くれるのが、少しうれしかったりします。番台でなにか文句を言っても、帰り際にお菓子をくれたり。離れていく人は少ないんです。

ロビーに置かれている交換日記(写真:塩谷歩波)
ロビーに置かれている交換日記(写真:塩谷歩波)
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塩谷西小山という、まちとのつながりを感じる瞬間はありますか?

相良さんまちとのつながりとしては、ロビーに交換日記を置いています。西小山のおいしい飲食店や、いろいろなおすすめ店などを書いてもらっています。僕は西小山で働くようになって、まだ2年。わからないことが多いから、この地域に住むおじいちゃん、おばあちゃんが新しいお客さんに西小山のことを教えてあげてほしいなと思って。みんな、本当においしいお店を紹介してくれてて、素敵なんですよね。

交換日記にはおいしいお店の情報が書かれている(写真:塩谷歩波)
交換日記にはおいしいお店の情報が書かれている(写真:塩谷歩波)
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塩谷東京浴場の前には、イベントも開催できそうな大きなスペースがありますよね。ここは何かに使われているのですか?

相良さん週に2回、魚屋さんが店を出しています。リニューアル前からここに出店していたそうで、今も続いています。めちゃくちゃ売れています! まず銭湯自体を整えてからになりますが、いずれはこのスペースの新しい活用方法も考えていきたいです。一部をテラスみたいにしてもいいかなあと思ってます。

女性脱衣所側のおこもりサウナ(写真:塩谷歩波)
女性脱衣所側のおこもりサウナ(写真:塩谷歩波)
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塩谷おこもりサウナは、リニューアルオープンして、しばらくしてから導入しましたね。

相良さんそうなんです、もう一つアイテムがないと弱いなと思ったのです。そこで2021年1月からサウナを導入しました。おこもりサウナのコンセプトは“自分でカスタマイズできるサウナ”。サウナって、人によって好きなコンディションが違うじゃないですか。暗闇で瞑想できるサウナが好きな人もいるし、とにかく熱いサウナが好きな人もいる。そこで、お客さんが自分に合わせてカスタマイズできるように、一人用の貸し切りサウナを考えました。コロナ禍でも気兼ねなく使える強みもありますし、実は持ち運べるので賃貸物件でも導入しやすい手軽さがあります。おこもりサウナは入浴料とは別に、使用料(1020円)をいただいています。おこもりサウナの設置には1つあたり100万円ほどかかったのですが、サウナの稼働率が50~60%でも、年間売り上げとして400万円は見込めるので3ヵ月で回収できました。

塩谷すごい! 優秀なアイテムですね。

相良さんこういう試みも含め、ほかの銭湯がまねできるビジネスモデルを作っていきたいんです。本棚はスペースがあればどこでもできるし、おこもりサウナも賃貸物件の銭湯でも実施できる。一つでも多くの銭湯が廃業せずに残れるように、いろいろなビジネスモデルを確立するというのが東京浴場での試みの根底にあります。

塩谷素晴らしいですね。おこもりサウナは、どのような方たちが利用されていますか?

相良さんサウナ好きの方々ですね。東京浴場がある品川区在住で、週1〜2回サウナに行く人をターゲットにしていましたが、バッチリはまっている感じがあります。みんなサウナハットを持っているんですよ。実は今後、サウナを増やそうと考えています。女性浴場にあるおこもりサウナも男性側に持ってきて、女性側には別のサウナの設置を検討しています。イメージは2人か3人で入れる感じ。女性は団体で来る方が多いので、需要があるかなあと考えています。

 リニューアル以前から訪れている常連さんにも、新規のお客さんからも愛され続ける老舗銭湯の東京浴場。今後も新たな取り組みを企画中とのことで、これからの活躍もとても楽しみです。

筆者 塩谷歩波(えんや・ほなみ)
設計事務所、高円寺の銭湯「小杉湯」を経て、絵描きとして活動。建築図法のアイソメトリックと透明水彩で銭湯を表現した「銭湯図解」シリーズをSNSで発表、それをまとめた書籍を中央公論新社より発刊。レストラン、ギャラリー、茶室など、銭湯にとどまらず幅広い建物の図解を制作。TBS「情熱大陸」、NHK「人生デザイン U-29」など、数多くのメディアに取り上げられている。エッセイ「40℃のぬるま湯につかって」を連載中。好きな水風呂の温度は16℃。

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