地域メディアは「地域をつなぐ」コミュニティー産業だ

Economic Mondayをはじめとした一連の改革を通して、地域からはどんな反応を受け取っていますか。

荒瀬 お陰様でいろいろな方から「デーリー東北が変わった」とコメントをいただけるようになりました。

 詳細はまだ申し上げられないのですが、これから観光に絡めた新しい取り組みができないかと考えています。景観の良い場所にデーリー東北の販売店が所有していた土地があり、そこを譲り受けました。その場所を起点に、地域をもっと元気にするための活動ができないか、コンセプトの立案も含めて調査研究を進めています。

 当社は報道機関としての役割を果たすことが使命ですが、ジャーナリズムはもとをたどれば、人と社会をつなぐツールです。つまり、デーリー東北の役割は、地域の人と人、あるいは人と地域をつなぐということです。この「地域をつなぐ」という機能から考えますと、地域のためにできることは、メディアの特性を生かしたものがいろいろあると考えています。

 近年、メディアが報道だけでなく、社会、地域、コミュニティーの課題解決に向けた具体的な場を提供しようという考え方が出てきています。こうした概念を「ソリューション・ジャーナリズム」と呼ぶそうですが、これに類する活動と言えそうですね。

荒瀬 一時期、私は社員のみんなに、「デーリー東北はコミュニティー産業の企業でもあります」としきりに言っていました。この八戸を中心とした北奥羽というコミュニティーが我々の活動基盤だからです。そのため、コミュニティー内を有機的に結合し維持する「ハブ」の機能を私たちが果たせれば、この地域はもっと盛り上がる。そうしたデーリー東北の存在価値、企業価値を高めるためのやり方を、いろいろと試していきたいと考えています。

地域のライフラインとして生きる

 本紙の紙面についてはどんなことを心がけていますか。

荒瀬 地域の人々にとって必要でかつ細かい情報を載せています。例えば、今日どこのコミュニティーホールでどんな催しがあるか、といった情報を毎日毎日載せています。いわゆる中央紙などと比べると、本当に細かい情報です。読者の方々はそれを見て、今日どこに出掛けようかと決めるわけです。これは中央紙とは大きく異なる点です。

 おこがましい話かもしれませんが、私たちデーリー東北は、地域の皆様に向けたライフラインの1つだと認識しています。どこの地方紙も同じ姿勢で運営していると思いますが、地域の生活にかかわる必要な情報を詰めこんでお届けしています。地域で誰かが活躍して表彰を受けた、それをデーリー東北を読んでいるからこそ知ることができた、お会いしたときにおめでとうと言えた。先にも申し上げましたが、そのような「つなぐ」役割として、より中身を磨いていきたい。

(写真撮影:井深裕介=デーリー東北新聞社)

地域に欠かせない情報を網羅し、それを正確に流通させることによって、地域全体の活性化に貢献しようという考え方ですね。

荒瀬 はい。日本の課題の上位には、地方の衰退の問題があります。地方を衰退を防ぐには、住んでいる人たちが、地域の事情を正確に把握して、良い点・良くない点の両方を踏まえて、前向きなアイデアを出していくことが大切だと思います。

 ひるがえってネットの世界を見ていると、確かに情報はたくさん流通しており、検索することで欲しい情報が簡単に、しかも無料で手に入ります。けれども、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の情報と言いますか、選別されていない情報が飛び交っていることも否めません。

 記者が地域を取材し、検証して、地域発展の道筋を報道するという地方紙の存在意義は、まさにここにあると思うのです。特に地方は都市部よりも、抽象的な説明ではありますが「生身の人間がやり取りしながら生活している」という感覚が強い。だからこそ、我々が地域のことをしっかり取材し報道し、それによって元気なコミュニティーを守り続けられる可能性がある。

 我々のような地方の新聞社は、人口が減る中で経営としては厳しい状況に直面していることは事実です。けれども、「地域をつなぐ」という我々の役割を全うすれば、地域のコミュニティーは強固になり、地域と共により良く発展していけると信じています。

(後編はデーリー東北新聞社の報道部長兼写真部長である今井崇雄氏による寄稿を掲載します)