「地域経済を世界視点で」。こんなコンセプトで話題を呼んでいる地方紙の紙面がある。その名も「Economic Monday(エコノミック・マンデー)」。青森県八戸市に拠点を置く「デーリー東北」の特別紙面だ。大胆なインフォグラフィックスと共に描かれる地域と世界のつながりは、地元民でなくても興味深い。現場取材記者の目線から見える「地域の輪」とは、どんなものか。世界とのつながりは。そしてメディアの役割とは。

 紙面を彩るインフォグラフィックス、地域と世界のつながりをやさしく解説する文章。デーリー東北新聞社が展開する特別紙面「Economic Monday(エコノミック・マンデー)」が話題を呼んでいる。「地域経済を世界視点で」をコンセプトに掲げたこの紙面、毎月第一月曜日の「デーリー東北」を包む形で読者に届けられる。2017年には「グッドデザイン賞」を受賞、2019年10月7日の発行号で50号を迎えた。

 デーリー東北新聞社の今井崇雄編集局報道部長兼写真部長は、本社を置く青森県八戸市について「北東北随一の産業都市で、小粒ながらも世界を相手にする企業が立地する」と表現する。同社が地域の強みを生かして展開するEconomic Mondayは、コンテンツを通じて地域と世界をつなぎ、そこにある「地域の輪」をより強くしようとしている。

 地域に生きる人々と、人々が営む産業の姿。そして世界とのつながりは、どんなものか。Economic Mondayで数々の記事の取材・執筆を担ってきた今井氏の視点で見てみよう。以下、今井氏による寄稿である。(編集部)

「地域をつなぐ」というメディアの役割

 地域を形づくるものとはなんだろうか。歴史や文化、地理、行政、経済、学区、スポーツ……。このようなさまざまな輪がいくつもの同心円となり、一つの地域を形づくっているのだと思う。

 私たち地方紙の役割を端的に言えば、こうした輪の輪郭をくっきりとさせ、「地域をつなぐ」ことだと思っている。もちろん、市役所や町役場などの行政を始めとする権力の監視も含まれる。

 もしかしたら都会では失われかけた輪だろうか。地方では色濃く残っているものの、今やグローバル化やデジタル化、人口減少など遠心力が働く要因は枚挙にいとまがない。私たちの使命と存在意義は、そのような中でも地域のつながりを保ち、強めていくことだと思っている。

 2015年に創刊70周年を迎え、大規模な紙面改編を考えた時、私たちは冒頭に挙げた「地域をつなぐ輪」のうち「経済」に着目した。弊社が拠点とする青森県八戸市は北東北随一の産業都市で、小粒ながらも世界を相手にするような企業が立地しているからだ。

 しかも、国内有数の水産基地、畜産基地でもあり、経済全般に対する市民の関心は高いと考えた。取材する側もテーマには事欠かないはず。こうして、外部のプロデューサーやデザイナーとの協業で生まれたのが、月刊経済特集「Economic Monday」だ。

「地域経済を世界視点で」がコンセプト。しかし、いかにグローバル化が進んでいるとはいえ、北の外れにある地方都市がそんなに世界とつながっているだろうか──。少々長くなるが、実際に今まで取り扱ったテーマをいくつか紹介したい。

消えたスルメイカの謎
八戸港は長年にわたってイカの水揚げ日本一を誇る。だが、5年ほど前から極端な不漁に見舞われ、漁業者のみならず加工業者、飲食業者に大きな打撃を与えている。背景を探ると、地球規模の環境変動に加え、北朝鮮の違法操業やミサイル発射が漁場を脅かす現状が浮かび上がった。
南部ダイバー物語
八戸市の南に位置する旧種市町は国内潜水士の約2割を輩出し、町出身者は世界中で海底資源の開発や沈没船の引き揚げなどに活躍している。小さな町からなぜこれほど多くの潜水士が生まれるのだろう。現状や歴史的な経緯などを探った。
若き国フィリピン
都会の大企業と同様に市内の企業も人手不足に苦しんでおり、地元大学と連携してフィリピンから人材を確保する動きがある。海外取材を交えて紹介。
你(ニー)はなんで上海に?
世界随一の経済都市・上海では、多くの地元出身者が活躍している。故郷を遠く離れて働く9人に、現地でインタビューした。
異端の実業家・田中義剛
八戸出身のタレント田中義剛氏は、今では北海道で花畑牧場を経営する実業家。世界進出も視野に入れ、異端とも言える手法で事業を拡大している。経営理念や事業戦略にインタビューで迫った。