リゾートなどで休暇を兼ねてリモートワークを行う「ワーケーション」。ネットワーク環境さえ整っていればビーチなどでも仕事はできるが、ネットワーク環境が整ったコワーキングスペースなどの施設があれば、もっと多様なワークスタイルが体験できるかもしれない。すでに、地方自治体や民間企業からも、ワーケーション施設の提供などで企業や個人の新しい働き方を支援する動きがいろいろと出てきた。(前編はこちら

地方自治体が誘致するワーケーション施設

 ワーケーションの支援に早くから取り組んでいる自治体の一つ和歌山県は、南紀白浜空港から車で10分ほどのアクセスに便利な場所にある白浜町に、IT環境を整えたオフィスを設けて民間企業を誘致している(写真1)。和歌山県は以前から、県外企業誘致を担当する企業立地課が積極的な企業誘致活動を行ってきた。2015年には「ふるさとテレワーク事業」を活用し、複数のIT企業を白浜町に誘致している。

 和歌山県が企業誘致のために力を入れてきたことの1つが、ネットワーク環境の強化だ。県内の観光施設や飲食店、スーパーマーケットなどで無料利用できるフリーWi-Fiを整備したほか、情報通信研究機構(NICT)が開発した地域分散ネットワーク「NerveNet(ナーブネット)」を導入して災害時の通信確保にも備えている。

 世界文化遺産にも登録された「熊野古道」でのマインドフルネス体験や、白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」での観光を盛り込んだ親子ワーケーションプログラムなど、地元の観光資源を活用して、さまざまなワーケーションの取り組みを支援している。

 地方自治体がワーケーションによる企業誘致に期待することとして、和歌山県情報政策課・課長の桐明祐司氏は、「地域でのビジネス創出」や「ICT人材の集積」、「地域の魅力発信」のほかにも「少子高齢化が進む地方において、多様的かつ継続的につながる関係人口が創出できる」と語る。

(写真1)2019年5月にオープンした和歌山県白浜町の第2 ITビジネスオフィス内には、三菱地所がテナント企業向けに提供するワーケーションオフィスなども開設されている(写真:筆者)

 2019年11月に設立された「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」で、阿部守一知事が会長代行に選任された長野県も、ワーケーションに取り組む企業を積極的に支援する地方自治体の一つだ。県内3地域(茅野市、軽井沢町、白馬村)をモデル地域に、「リゾートテレワーク拠点整備事業」を推進している。

 長野県信濃町とNPOがコラボレーションして2019年6月に誕生した「信濃町ノマドワークセンター」は、40人強を収容できるワークスペースに加え、少人数で利用できる会議室も備えた法人向けの貸し切り型リモートオフィスだ(写真2)。一般的なワークスペースとしての利用だけでなく、ものづくりを行う企業に対応するための作業スペースや3Dプリンタを備えた工作室なども設置。併設するキャンプ場では、都会では難しい自走車やドローンのテストフィールドの利用にも対応している。

(写真2)長野県信濃町にオープンした「信濃町ノマドワークセンター」は、コテージのような外観の建物の中に最新のオフィス環境が整えられている(写真:信濃町ノマドワークセンターのホームページより引用)

 福井県福井市は、以前はレストランとして使われていた空き店舗を改装したテレワーク推進拠点「越廼サテライトオフィス」を運営し、ワーケーションに取り組む企業を支援する(写真3)。2019年4月にオープンした同施設は、日本海に面するロケーションを誇り、オフィスから眺める日本海の夕日と周辺の観光地への良好なアクセスが自慢だ。

(写真3)福井市が運営する「越廼サテライトオフィス」では、日本海を眺めながらのワークを推奨する(写真:越廼サテライトオフィスのホームページより引用)