イベントソリューションについては、国内最大級のアーケード版eスポーツ大会「闘神祭2020-World Championship of ARCADE―」の共催など、先進的なエンターテインメントショーケースの提供がクローズアップされがちだが、影澤氏が見ているのはさらにその先。地域ごとにリーグがあり、それぞれのリーグを勝ち抜いた地域代表チームが全国大会を戦う、都市対抗野球のような大会の立ち上げをめざしているという。

 「eスポーツが地域に根付くためには持続可能な形が大切です。施設だけあっても、教育して育てても、やはり目標となるイベントがなければ続きません。とはいえ海外のような高額の賞金が出る大会はカンフル剤のようなもので、草の根のコミュニティを育てるものではないと思います。まず草の根があって、プロへのキャリアパスがきちんとできた上での賞金でないと、効かないと思うんです。僕は日本がめざすべきは、賞金稼ぎのプロがどんどん出てくる世界というよりは、実業団でゲームをしていくモデルだと考えています」と影澤氏。

 米国の16歳の少年がeスポーツの世界大会で優勝し、300万ドルの賞金を手にしたことが話題になったように、海外では高額な賞金がeスポーツ人気に拍車をかけている。一方、日本では法規制のため高額の賞金は認められておらず、「ゲームばかりしていると、ろくな大人にならない」といったeスポーツに対するネガティブなイメージも根強い。だからこそ、きちんと会社で仕事をしながらゲームもして、という関わり方のほうが日本では受けが良く、eスポーツへの偏見を和らげ、結果eスポーツが文化として根付く土壌にもなるというのだ。

 「地域でコミュニティを作るには、『とりあえず参加してみんなで遊ぼうぜ』というほうが参加しやすいですよね。そのコミュニティが発展して地元企業の協賛を受けて地域リーグができ、実業団チームとして活動する人、その中からプロになる人もいれば、逆にプロから実業団チームに入る人もいて、という図式を作っていくことが大事なところかなと思っているんです。最近は企業同士の対抗戦も増えていますが、都心中心でゲームメーカーやIT企業が中心なのが現状です。それを地域というクラスターにして、横の広がりをつくっていくことができるのは、たぶん我々しかいないのではないかと思っています」

業務として試合に参加するeスポーツチームも社内に誕生

 NTT東日本は2019年6月から社員によるeスポーツチーム「TERA HORNs」を発足させている。呼び掛けたのは、影澤氏。社内公募で集まった約150人から40人を選抜して結成した。ユニークなのは、チーム公認のイベントや大会への出場が業務として認められていること。2020年2月の「第5回スプラトゥーン甲子園」関東地区大会にもメンバーがeスポーツ事業の一環として参加し、ベスト8に入ったという。

 チームの練習は業務時間外に行っているが、大会やイベント出場が業務になるのは、会社が進める事業とチームの活動に事業シナジーがあるからだ。例えばイベント運営を受託した場合にそのゲームに詳しいメンバーの知見を入れることができたり、新しいソリューションの実証実験の被験者にもなれたりする。単なるレクリエーションではなく、この活動からもeスポーツのイメージを変えたいという狙いもあるという。

 「まず、eスポーツの文化を根付かせられなければ、eスポーツを使った地域の活性化はなし得ません。eスポーツによる地域活性化は、eスポーツをフックに呼び込んだ人たちが地元の特性、特産にどれだけ触れてもらえるかが重要なポイントになると思います。人を集めてただ遊んで帰ってしまっては意味がない。eスポーツ×『何を見せるか』『何を食べさせるか』『イベントの翌日にどれだけ魅力的な行事を作れるか』。つまり『eスポーツと合わせてどんな体験をさせるか』を地域の方と一緒に考え組み上げていくのが、我々のミッションであり、得意とするところだと思っています」

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