サブカルチャーとのコラボで構築した人間関係が発端

 横須賀市がeスポーツに取り組む端緒は、サブカルチャーで集客を図る地域振興策にあった。同市では横浜、鎌倉といったネームバリューのある近隣市に埋もれないよう、10年前からアニメ・漫画・ゲーム・雑誌といったサブカルチャーとの“とんがった”コラボレーション企画を行っている。同市文化スポーツ観光部観光課にはサブカルチャー担当が組織として設けられているほどだ。

 観光課サブカルチャー担当の小山田絵里子さんは「長く続けるうちに、ゲームやアニメの制作会社さんなどから『横須賀市なら理解がある』と、こちらが予算を使わなくてもイベントをやってくださるような、良い循環が生まれています。その人間関係の中で立ち上がったのが、今回のeスポーツのプロジェクトです。特にパソコンメーカーさんには、ゲームなどもスマートフォンで行う人が増える中、パソコンに触れる機会を少しでも増やしたいという思いがあり、議論を重ねるなかで協賛企業が増えていきました」と説明する。

 同市がめざすのは、サブカルチャーと同じように「eスポーツと言えば横須賀市」というイメージを構築することだ。大道裕・観光課サブカルチャー担当係長は「eスポーツが盛んな街だという認知度が上がれば、大会を行うにしてもスポンサーがつきやすくなり、お客さんも横須賀なら行こうとなるでしょう。ですから、まずは文化としてeスポーツを根付かせたい。そのための第一弾が、学校で部活動として生徒さんに楽しんでもらうことなのです」と話す。

文化スポーツ観光部の大道裕・観光課サブカルチャー担当係長(右)と、観光課サブカルチャー担当の小山田絵里子さん(左)(写真撮影:高下義弘)
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 教育の場にeスポーツを導入することのメリットは多いと大道氏は指摘する。運動が得意ではない人や障害を持つ人も同じ土俵で戦える良さがあり、引っ込み思案の子どもや、eスポーツの部活動がなければ中退したり不登校になったりしたかもしれない子どもたちの活躍の場になっている実例もあるという。また、プログラマーやウェブデザイナー、eスポーツの大会運営に関わる仕事など将来の選択肢が広がる可能性もある。

 高校生のeスポーツに対する意識を探るため、市がプロジェクト開始前に任意提出のアンケートを私立3校、県立1校に行ったところ、「eスポーツ部に入部したい」「プレ入部したい」「話を聞きたい」といった前向きな回答をした生徒が4割に上った。精度の高いアンケートではないものの、予想以上の反応にプロジェクトが加速したという。

横須賀市庁舎内には市内の高校に貸与しているパソコンや関連機器を展示。eスポーツ振興への積極的な姿勢を見せる(写真撮影:高下義弘)
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 今後、既に導入した学校に対しては、賛同企業の協力を得ながら、(1)市が窓口となって対外試合をマッチングする (2)顧問や興味のある教員を対象とした指導法についてのセミナーを行う (3)ゲーム依存にならないための情報を共有する、といった形で継続的に支援していく。一方、導入していない学校には、パソコンを置くスペースがない、顧問を確保できないといった課題もあるという。市としては、市内13校すべてで部活動としてeスポーツを行ってもらえるよう、直接出向いて説明を重ねるなど今後も働きかけを続けていく考えだ。

 「学校への導入を進めていくと同時に、導入していない学校や地域の人たちが集まることのできるオフラインの場、そこに行けば仲間がいるというeスポーツの拠点づくりも進めていきたいと考えています」と小山田さん。オンリーワンの方向性で集客と地域活性化に成功してきたアイデアとバイタリティに今後も注目したい。