U・Iターンに向けた土壌も整備

 CCCの募集にあたって、MEUTRALでは三好市が備える魅力も打ち出す。

「三好市は、いわば“田舎の都会”。山もあり、吉野川などの自然もすぐそばにありながら、生活の不便さを感じさせない。これらのポイントは、いま都市部で暮らしていてUターンやIターンを考えている人には魅力的に映るはず」(池田博愛会の岡さん)

 行政が移住に力を入れていることも追い風となっている。三好市は内閣府による地域再生制度に基づき地域再生計画を推進している。計画の柱はいくつかあるが、吉野川を主な観光資源とした観光サービスの開発のほか、注力しているのは移住促進事業だ。移住に向けたハードルを下げるため、市内に「お試し暮らし住宅」やコワーキングスペースの拡充が進んでいるという。

 MEUTRALを推進する池田博愛会も三好市の地域再生計画に協力している。「働き方のモデルのひとつ」(岡さん)であるCCCは、まさに地域再生と移住促進という文脈を汲(く)み取ったものだ。

 加えて、三好市には全体的な傾向として、住民にとって福祉活動を親しく感じる土壌があるという。池田博愛会は三好エリアで約50年にわたり福祉事業を展開してきた、いわば老舗の法人。三好市における高齢者介護施設の整備率は、高齢者人口比で徳島県内トップクラスという。

 中心部に当たる箸蔵地区では「箸蔵福祉村」というコンセプトを掲げ、地域住民団体と連携しながら福祉を起点にしたまちづくりが進められている。祭りや施設運営に健常者と障がい者が分け隔てなく参加している姿も踏まえて、Ubdobeの萩原さんは「三好は地域に福祉がよく馴染んでいる。厚生労働省が『地域共生社会』を提唱しているが、そのモデルとも言える地域だ」と評する。

 UターンやIターンを希望する人が気になるのは、移住先に安定した労働環境があるかどうか。池田博愛会の岡さんは「CCCの一側面である福祉の仕事について言えば、ここ三好には十分に応えられる環境がある」とアピールする。

介護・福祉の視点がまちづくりに生きる

 CCCとして働いている2人、木村公明さんと島和也さんに話を聞いた。他地域で暮らし働いた経験を持つ、いわゆるUターン組である。

 島和也さんは三好市の隣町・徳島県東みよし町の出身。三好市内の地域交流拠点「箸蔵とことん」で、イベントの企画・運営活動に従事している。箸蔵とことんにはパン工房、食堂、産直市、相談所などのほかイベントが開催できるスペースがあり、島さんはここを拠点にして地域の住民のニーズを反映した企画を展開しようとしている。

「箸蔵とことん」の外観および内観(キッズスペース)。館内は交流のためのさまざまなイベントが開催できる趣向の空間にした(写真提供:池田博愛会)
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「箸蔵とことん」の外観および内観(キッズスペース)。館内は交流のための様々なイベントが開催できる趣向にした(写真提供:池田博愛会)
「箸蔵とことん」の外観および内観(キッズスペース)。館内は交流のための様々なイベントが開催できる趣向にした(写真提供:池田博愛会)
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「箸蔵とことん」の外観および内観(キッズスペース)。館内は交流のためのさまざまなイベントが開催できる趣向の空間にした(写真提供:池田博愛会)

 また、島さんは移動販売業務も担っている。買い物に行きにくい住民の要望に応じて、生活必需品などを販売する業務であり、まさにインフラである。

島さんがCCCとして従事する業務の一つ、移動販売は買い物に出づらい住民にとっては欠かせないサービスだ(写真提供:Ubdobe)
島さんがCCCとして従事する業務の一つ、移動販売は買い物に出づらい住民にとっては欠かせないサービスだ(写真提供:Ubdobe)
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 島さんは、「コミュニティづくりに興味があった」と語る。CCCの業務の一つとして、箸蔵とことんの多目的スペースを活用したイベントを企画・運営している。「三好市は地域内のつながりが濃いこともあって、発信した情報をキャッチした人は敏感に反応してくださる。反応がわかりやすく返ってくるところが、難しさでもあり、面白さでもある」と島さんは話す。

 また、三好には多様性を受け入れる土壌があることも魅力だと言う。「外国人が住み、地元のおばあちゃんと普通に会話をしているような地区もある。こうした地域性は、UターンやIターンを考えている人にとって安心しやすい要素と言えるのではないか」(島さん)。

 もうひとりのCCCである木村さんは三好市の出身。池田博愛会に就職してCCCになる前から、香川県で障がい者を支援する仕事に携わってきた。CCCとして活動するようになってからは、池田博愛会における障がい者支援の業務を起点に、仕事の範囲をまちづくりに広げようとしている。

木村さんはCCCの業務のひとつとして障がい者支援業務に従事。地域の健常者や障がい者を交えて農業を通じた地域交流活動も行っている(写真提供:Ubdobe)
木村さんはCCCの業務のひとつとして障がい者支援業務に従事。地域の健常者や障がい者を交えて農業を通じた地域交流活動も行っている(写真提供:Ubdobe)
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 地域おこしに力を入れる地域の動きに呼応するように、最近は若手が起こした新しい活動も目につくようになってきた。「コミュニティがコンパクトなので、活動が相互に触発されやすいのも特徴だ」と木村さんは言う。

 木村さんはCCCという職種を通じて、自身のビジョンである「障がい者も健常者も分け隔てなく暮らせる社会」のモデルづくりを探っていきたいと語る。「弱者と言われる人たちが楽しく暮らせる社会は、結果として誰しもが安心して暮らせる社会であるはず。もともと三好は障がい者が溶け込みやすい土壌があるが、ここでの活動を通じて自分なりの活動の仕方を模索できたらと思っている」(木村さん)。

CCCを増員、他地域への展開も視野に

 Ubdobeの萩原頌子さんは、2人のCCCが持つ三好地域外での暮らしの経験が、地域の福祉の仕事、地域おこしの仕事の両方に好影響を及ぼすと見る。「現地の人が気づいていない、三好の魅力を引き出してくれる可能性があるからだ」(萩原さん)。

 「人にとても近い業務である介護・福祉は、本来、非常にクリエイティビティを要求される仕事だ」と萩原さんは語る。「それがCCCの先頭にある『クリエイティブ』という言葉に込められている。そのクリエイティビティは当然、地域おこしにも生きる」(萩原さん)。

 池田博愛会では2020年4月時点で、CCCの就職希望者2人との面接を進めているほか、CCCを引き続き広く募集していくという。またUbdobeはCCCの枠組みを他の地域でも展開することを検討中だ。

■MEUTRAL・CCCのWebページ:https://meutral.com/cccentry.html