島根県の南西に位置する津和野町。伝統文化や古いまち並みなどが、地域の人々に守られている歴史あるまちで、山陰の小京都とも呼ばれている観光地だ。このまちもまた、新型コロナウイルスによって、ホテルや旅館、飲食店、土産物店などが大きな影響を受けた。人をまちに呼べない状況のなか、バーチャル空間を使ったユニークな観光ツアーが開催されたことを耳にした。そのイベントの仕掛け人であり、津和野町の地域おこし協力隊として活躍している舟山宏輝さんに、イベント開催のきっかけや過程、バーチャルを利用したまちおこしの可能性について話を伺った。

まちを伝え続けたい。その想いからのひらめき

 「 “リアルのまち” を “あつ森” のなかに再現できたら、おもしろいことになるのでは?」

 そんなことを思い立ち、本当に津和野のまちを再現して、オンラインでバーチャルの観光ツアーまで開催した人物がいる。それが、舟山宏輝さんだ。

 あつ森(「どう森」とも略される)とは、Nintendo Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』のこと。プレイヤーはまっさらな無人島の住民となり、スローライフを送りながらオリジナルの島をつくり上げていくシミュレーションゲームだ。朝昼夜や四季の移り変わりなど、現実と同じ時間がゲーム内に流れていて、個人プレイはもちろん、オンラインで友達と交流することもできることから、外出自粛時のコミュニケーションツールとしても関心が高まった。

町のWebメディアの取材・執筆や、町内向けのフリーペーパーの作成、住民たちとまちの課題をディスカッションする大人の学び場を提供するなど、情報発信や社会教育を中心に活動している舟山さん
町のWebメディアの取材・執筆や、町内向けのフリーペーパーの作成、住民たちとまちの課題をディスカッションする大人の学び場を提供するなど、情報発信や社会教育を中心に活動している舟山さん
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 「僕は2018年に、地域おこし協力隊の一員として津和野町に来ました。今年で任期が終わるので、集大成としてやりたいイベントなどがいくつかあったんですが、その矢先に新型コロナの影響を受けてしまって。観光客に来てもらうことが難しくなったとき、それでもまちの魅力の発信は続けようと思い、できることを探していました。そうしたなかでひらめいたのが『どうぶつの森 津和野観光ツアー』でした」

外出自粛期間中、舟山さんも夢中になったというあつ森。ゴールデンウィーク中は特に、世代も性別も関係なく多くの人が遊んでいたからこそ、イベントに興味をもってくれたり、参加してもらいやすかったりしたのではと舟山さんは考える
外出自粛期間中、舟山さんも夢中になったというあつ森。ゴールデンウィーク中は特に、世代も性別も関係なく多くの人が遊んでいたからこそ、イベントに興味をもってくれたり、参加してもらいやすかったりしたのではと舟山さんは考える
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 イベントはゴールデンウィークの2日間にわたって行われた。午前の部・午後の部があり、ツアー1時間、自由時間1時間。一度に参加できる上限は7人。参加者にはアバターでバーチャル津和野に集まってもらい、別途Zoomでビデオチャットをつなぎながら、口頭でまち案内をしたという。

 イベントのお知らせは、まず配信サイトの「note」に詳細を書き、そのリンクを舟山さん個人や津和野町、津和野町東京事務所がある文京区のアカウントなど、SNSを通じて告知した。

 「参加者は、津和野に来たことのない方が多かったんですが、『実際に遊びに行った感覚になった』とか、『津和野町の歴史を知るいい機会になった』という感想をいただきました。なかには、津和野出身で、今はほかの地域で働いている方が参加されて、『すごい懐かしい』と感動してくれたりして。やはりゲームの空間なので、ある程度デフォルメされた再現なのですが、その方の記憶とリンクして思い出すものがあったようです」

 このイベント後も、遊びに行きたいというリクエストをうけて、個別にもバーチャルツアーを行ったという。