「地元やファンと一丸になって盛り上げていきたい」

 館林市では、自治体だけでなく市民の間でも『宇宙よりも遠い場所』によるアニメの聖地巡礼を盛り上げる動きが加速している。例えば、館林地域の情報を発信するサイトの運営者が市役所以上に作品の広告塔になり、アニメ聖地の細かい情報を発信。また、キャラクター4人それぞれの誕生日にファンが集まるオフ会で使われる館林市内の飲食店では、著作権者と個別にライセンス契約を結んで作品にちなんだオリジナルメニューを開発。飲食店以外にも著作権者とライセンス契約を結んでオリジナルの公式グッズを作っている店がある。

ファンのオフ会が開かれたりする居酒屋で作られたオリジナルメニュー「南極チャレンジ!カレーうどん」。トッピングされたチーズが南極の形をしている(写真提供:館林市)
ファンのオフ会が開かれたりする居酒屋で作られたオリジナルメニュー「南極チャレンジ!カレーうどん」。トッピングされたチーズが南極の形をしている(写真提供:館林市)
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著作権者との間でライセンス契約を結んだハンドメイドショップが作った『宇宙よりも遠い場所』の公式グッズ(写真提供:館林市)
著作権者との間でライセンス契約を結んだハンドメイドショップが作った『宇宙よりも遠い場所』の公式グッズ(写真提供:館林市)
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 こうしたオリジナル商品を作る際も館林市が最初の窓口となり、どういった企画でどのような内容のグッズを作りたいのかなどを、事業者と共に検討している。「単に利益を得るためだけの企画や商品づくりではなく、作品やファンのことを大切に考えたうえで、館林市を盛り上げていくんだという思いを事業者と共有して著作権者につなげています」(中村氏)。

 今後の課題について中村氏は、「著作権者と正式にライセンス契約を結んだことで、広報誌やホームページ、チラシ、ポスターなどで市がアニメを生かしたまちづくりをPRしやすくなりました。コロナ禍が収束したら、アニメアンバサダー就任のお披露目会など参加型のイベントを開催したり、さまざまなグッズ展開も検討していきたいと考えています。そうした取り組みを積極的に行うことで、もっと地元の方々に作品に親しんでいただき、市民やファン、事業者、行政が“ワンチーム”になって、地域活性化やシビックプライドの醸成につなげていきたいと思っています」と語った。

館林市経済部つつじのまち観光課主任の中村智仁氏(写真提供:館林市)
館林市経済部つつじのまち観光課主任の中村智仁氏(写真提供:館林市)
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 自治体が聖地巡礼を生かしたまちづくりに取り組む場合、作品人気に火が付いて地元に多くのファンが来るようになったタイミングで、オリジナル商品を作ったりイベントを企画したりするのが理想的だ。できれば、作品の評価やファンの反応などを見ながら、放映中もしくは放映終了直後から、まずはアイデア募集やアンケートなど予算をかけずにすむ方法で準備を進めたいところだ。そのためにも、自治体の職員や地元住民にも作品の認知度を十分高めておきたい。

 しかし、館林市のケースのように、必ずしも物語の舞台となった地域の地上波で作品が放映されるとは限らない。それでも、館林市の場合は市長という行政のトップが作品に興味を持ち、職員もアニメコンテンツをまちづくりに生かしていきたいという意欲を強く持ち続けたことで、放映後早い段階で準備が進められた。

 今回は、結果的にコロナ禍の中での聖地巡礼の取り組みになってしまったが、館林市の例は今後自治体が聖地巡礼によるまちの活性化に取り組む際の参考になる、貴重な先行事例と言えるだろう。