ワーケーションと組み合わせたプログラムも

 タピックグループでは、ウェルネスツーリズムを推進するうえで五つの柱を掲げている。その一つが医療と観光を結びつけた医療ツーリズムだ。リハビリテーションの指導者や沖縄県内にあるさまざまな施設を生かした、長期滞在型のリハビリテーションプログラムを提供する。プランは1週間から1ヵ月、3ヵ月と複数あり、沖縄で観光も楽しみながら運動機能の改善をめざす。

 例えば、タピックグループの施設の一つとして、海洋療法が可能なタラソテラピー施設が県北部の宜野座村にある。海洋療法はフランスで取り入れられている療法で、海水を利用した温水プールの中を歩いたり運動したりすることで、健康改善をめざす。名護市で運営するスポーツ施設には、クリニックも併設されている。そこでは、健康運動指導士がさまざまなプログラムを実施しており、アスリートのスポーツキャンプなどでも利用されている。こうした施設との連携を取りながら、県外から来た観光客でも利用できるようなシナジー効果を発揮させようとしている。

 一方、ユインチホテル南城がある南城市は、沖縄本島の中でも歴史や文化が色濃く残るまちだ。加えて、南の島らしい青い海が楽しめる魅力あるスポットも多数存在する。世界文化遺産にも指定されている琉球王国最高の聖地「斎場御嶽(せいふぁうたき)」などを訪れる歴史探訪も楽しめる。

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南城市には太平洋に面した青い海や世界遺産「斎場御嶽」など、いろいろな観光スポットがある

 最近、ユインチホテル南城が力を入れている取り組みの一つが、ワーケーションと組み合わせたウェルネスプログラムだ。最上階にあった展望レストランを、Wi-Fi環境を整えたワーケーションスペースに改装した。ワーケーションを目的とした利用者だけでなく、ウェルネスツーリズムでリハビリや療養目的で宿泊する家族に同行してきた利用者が、宿泊中に仕事ができるようにすることも狙いだ。

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ユインチホテル南城にある、太平洋が見下ろせるワーケーションスペース。セキュリティに配慮し、ネットワークは一般フロアとは別の回線を引いている
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バリアフリーの部屋では、車椅子でそのままバルコニーに行ける

海外市場もめざすウェルネスツーリズム

 タピックグループとしては、ウェルネスツーリズムのターゲットとして、日本国内だけでなく海外、特に中国のリハビリテーション市場も見据えている。タピック事業開発室室長の白附潤一郎氏は、「中国はこれから10年間の間に一気に高齢化が進みます。今、リハビリテーションの分野においては急速に施設の数が増えているのですが、例えば年間250万人と言われている脳卒中後のケアが必要な患者に対しては、設備や専門家の数が追いついていません」と語る。現状では、中国の医療保険はリハビリテーション全体をカバーしておらず、早期リハビリテーションの重要性についての認識が低いという。

 世界に名だたる長寿国日本の中で見れば、沖縄の平均寿命の国内ランキングはここ20年で大きく順位を下げている。一方で、米国でベストセラーになった「The Blue Zones」(ダン・ベットナー著)では、サルデーニャ島(イタリア)やイカリア島(ギリシャ)、ロマリンダ(米カリフォルニア州)、ニコヤ半島(コスタリカ)と並んで、沖縄は世界5大長寿地域の一つに数えられている。すなわち、海外から見れば長寿の島という沖縄のブランド力は下がっていない。

 タピックグループでは、コロナ禍においても、中国の医療機関とコンタクトを取りながらウェルネスツーリズムの商品化を進めていこうとしている。そのために、沖縄の魅力をしっかり伝えていく。そこには、日本が持つ高度な医療技術だけでなく、沖縄の文化や体験が含まれるだろう。「そもそも、旅行に出ること自体がリハビリテーションと言えます。沖縄ならば滞在するだけで健康的な食事が食べられるし、気候も人も温かく、一歩外に出れば独自に発展してきた文化に触れられます。そうした場所を見て歩くことも運動(リハビリテーション)になるでしょう」(白附氏)。

 もちろん、日本には沖縄以外にも観光地は各地にある。だが、沖縄ならば1年を通して屋外で観光や運動をするのに最適だ。リハビリテーションを意識せず、日常生活の延長として気がついたら運動しているというのが、日本でも沖縄でしか実現できない健康促進ブログラムになるかもしれない。

沖縄では独自の琉球文化が根付くまちを散策するだけでもウェルネス効果が得られるだろう
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