現在、NTTグループでは「未来の街づくり」を実現するために「街づくりDTC🄬」というデジタル基盤の開発、実証実験に取り組んでいる。これは現実世界から収集したデータを仮想空間に再現することで、将来の予測などに役立てる「デジタルツイン」技術を活用し、街に暮らす人々の幸せにつながる新たな価値を提供しようというもの。これまで便利で快適な生活の実現という文脈で語られることが多かったデジタル活用だが、「街づくりDTC🄬」ではその一歩先を見据えているという。

現実世界での体験価値を高める街づくり

 オフィスに行かずに仕事をしたり、通販サイトで当たり前のように買物を楽しんだり──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で私たちの生活は一変した。

 しかし、その一方で、実体験の大切さに気付かされたという声を耳にすることも多い。確かにオンライン会議は便利だが、画面越しのコミュニケーションに限界を感じたという人は少なくないだろう。また、何気なく訪れた店で偶然気になる商品を見つけるなどの体験は、オンラインショッピングでは起こりにくい。デジタル化で世の中が便利になればなるほど、実体験の価値が高まっているのである。

 そんな中、NTTグループでは、現実世界での体験価値を高める街づくりを実現する取り組みを進めている。それが「街づくりDTC🄬」だ。

 グループ内で取り組みの中心的な役割を果たすNTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 DTC推進担当部長の高田照史氏は、「街づくりDTC🄬」について次のように説明する。

 「理想的な街とひと口に言っても、そのカタチは人によって異なります。また、今回のコロナ禍でそうだったように、街に求められる要素も時代や社会情勢によって変化します。『街づくりDTC🄬』は、そこに暮らす人や働く人、集う人が幸せと感じることを把握し、デジタル技術や建物、空間で幸せだと感じる価値を提供していきます。つまり、環境や社会の変化はもちろん、人々の価値観やライフスタイルの変化に合わせて、常に変化・成長しつづける街を実現させていくのです」

NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 DTC推進担当部長 高田 照史 氏
NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 DTC推進担当部長 高田 照史 氏
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 「街づくりDTC🄬」の“DTC”とは、Digital Twin Computingの頭文字を取ったもので、「デジタルツイン」とは、現実世界から収集したさまざまなデータを仮想空間上に再現する技術のこと。仮想空間上でシミュレーションを行うことで、現実世界の将来予測などに役立てることができる。「街づくりDTC🄬」でも、高精度の未来予測により、暮らしを快適にするサービスの提供や省エネ、SDGsなどの社会課題解決をめざしている。

(画像:NTTアーバンソリューションズ 街づくりDTC®特設サイト「わが まち みらい」より」)
(画像:NTTアーバンソリューションズ 街づくりDTC®特設サイト「わが まち みらい」より」)
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複数のデジタルツインを掛け合わせて提供できる価値

 仮想空間上に再現されるデジタルツイン(DT)は、用途に応じてさまざまなものが用意される。そして、これに横串を刺して連携させることで、さまざまな価値の提供を実現していく。その横串を刺して連携させる部分がデジタルツインコンピューティング(DTC)の領域になる。

街づくりDTC🄬のアーキテクチャ(画像提供:NTTアーバンソリューションズ)
街づくりDTC🄬のアーキテクチャ(画像提供:NTTアーバンソリューションズ)
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 「まず街区センサや個人の端末などから収集した街・人のデータを、データ交流プラットフォームで蓄積します。そこから必要なデータを使って、目的に応じたデジタルツインで予測分析を行うのです。そして、今この瞬間にどうすればそこにいる人たちが幸せな状態になるかについて、全体最適化を図るために複数のデジタルツインに横串を刺していくのです」(高田氏)

 ここで誤解してはいけないのが、「街づくりDTC🄬」では、初めにあらゆるデータを取り込んで、どのような課題に対しても解決策を導き出そうという万能型のデータプラットフォームをめざしているわけではない。あくまで、その街に住む人や集う人にどのような価値を提供するかを定義した上で、それを実現するために必要なデータや技術を積み上げていくという思想で設計されているのだ。

(画像:NTTアーバンソリューションズ 街づくりDTC®特設サイト「わが まち みらい」より」)
(画像:NTTアーバンソリューションズ 街づくりDTC®特設サイト「わが まち みらい」より」)
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 また「私たちが考える『未来の街』は、便利さや効率性を追求するものではありません。あくまで追求すべきは人の幸せです。デジタルや空間デザインの力を借りて、人によって異なる幸せを提供しようとするものにほかなりません。だからこそ、サポートの内容は人々が自然に受け入れられるような、さりげないものであるのが理想。決して、行動変容を促すとか、人々の行動をコントロールしようとするものであってはいけないのです。『機械やロボットが全てを自動的にやってくれることが、人間にとって本当に幸せなのか?』といった問いに答えていくことも必要だと考えています」と高田氏は強調する。