目標は「ZEB要件を満たす」

エネフィス四国の計画時には、まず目標とする性能値を設定した上で設計を進めたのでしょうか。

杉浦 今回は建設コストの低減を目標の1つに据えていました。そこで、創エネを含まない1次エネルギー消費量の削減率50%以上というZEB要件をギリギリ満たすレベルを目指しました。最終的な設計値は53%になりましたが、実際の運用では60%程度まで高められる予定です。

甘粕 陽介氏(NTTファシリティーズエンジニアリング&コンストラクション事業本部プロジェクト設計部。以下、甘粕) 外皮性能については、まずエネフィス九州と同じレベルを目指しました。エネフィス九州は鉄骨造で、今回は鉄筋コンクリート造という違いはありますが、エネフィス九州をベースに断熱材の厚みなどをシミュレーションして設定しました。結果的に外皮性能を示すBPI(PAL*の削減率)は0.59となり、エネフィス九州の0.70に比べて高性能となりました。

この差は、エネフィス九州の設計をフィードバックして開口部からの熱負荷を低減した効果が表れたと思います。エネフィス九州では東面の開口部が若干大きく、その分熱負荷が大きくなっているだろうと考えました。そこで今回は東西面をできるだけ閉じ、南北面に開口部を集約しています。

エネフィス四国の南西側外観(写真:ダイダン)

通常のプロジェクトと比べて、建築と設備の設計の進め方に変化はあったのでしょうか。

甘粕 今回はZEBを目指すことからスタートしたため、建築と設備の関係性が若干、一般的なプロジェクトとは異なりました。建築を先行してから設備を調整するのではなく、建築と設備を同時に検討して互いの条件を擦り合わせながら設計していきました。双方向にZEBというゴールを目指す設計の進め方は合理的かつ効率的だったと思います。

意匠と設備だけでなく、同時に構造とも擦り合わせました。事務室では、空調吹き出し口と照明の一体型ユニット「シーリングフリー」を採用しましたが、設備の条件を基に梁(はり)の大きさやスパンを調整しています。設備に建築を整合させることで、結果的に合理的な計画になりました。ZEBという目標があったからこそ可能だったと感じています。

NTTファシリティーズエンジニアリング&コンストラクション事業本部プロジェクト設計部の甘粕陽介氏(写真:省エネNext)

エネフィス四国では、アースチューブなどによる採熱や躯体(くたい)蓄熱といった技術を採用しています。他にも、省エネやコスト低減に関する設備上の工夫はありますか。

片山 パッケージエアコンを併用するなど、エネフィス九州に比べ汎用性の高い設備を採用してZEB化に要するコストを下げました。あまり複雑なことをせずにシンプルな設備で構成しています。

杉浦 設備機器の容量をギリギリまでそぎ落としました。

設備機器は、使用条件や経年劣化などを見込んで選定します。ただし通常は、事前に得られる情報が部屋の利用者数程度に限られ、室内に持ち込むOA機器の種類や数などまでは分かりません。余裕を見込んで設備機器を選ぶため、実際には定格容量の半分程度で運用するといった状況が起こりがちです。

それに対して今回は自分たちが使うビルですから、事務室の利用者数だけでなく、使用時間や移設するOA機器まで全て調べられます。精緻な情報に基づいて必要な容量を細かく算出しました。さらに電気配線を4系統に分け、セキュリティー関連や冷蔵庫のように常時稼働が必要な電源と、時間によってはコンセントから外せる機器の系統を別にしました。