イベントは区民と公共施設の新しい”接点”

 この日、とべ!とべ!フクロウを体験した子どもたちは、合計114人。付添いの親は合計187人。

 「メンバーの間では、80人くらいの子どもたちに体験してもらえたらいいな、という話をしていた。なので、まずは成功と言って良いと思う」と語るのは、イベントの仕掛け人である豊島区の宮田麻子氏。マーケティングコミュニケーション専門監を務める宮田氏は、民間の出身。マイクロソフト日本法人で広報を担当していたが、2016年の豊島区の民間公募で採用され、打って変わって公共の業務に従事することになった。今年3月まで「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長として子育て世代向けを中心とした施策を公民連携で展開してきた。

豊島区マーケティングコミュニケーション専門監を務める宮田麻子氏(写真撮影:筆者)

 なぜ、このようなイベントを仕掛けたのか。宮田氏は「区民と公共施設の新しい”接点”をつくりたかった」と語る。「未来を担う子どもたちと、子どもたちを育てている親世代に、池袋という都市を題材とした体験型イベントを用意することで、施設はもちろん、池袋にもっと親しんでいただけるのではないかと考えた」。

 豊島区では近年、公共施設のリニューアルを急ピッチで進めている。その代表がこのハレザ池袋だが、公共部門側の悩みとしてつきまとうのが、「リニューアルした施設の存在を区民にどううまく伝えるか」(宮田氏)。公金を使ってリニューアルしても、その意義や意味がうまく区民に伝わらなければ意味がない。区としてこうしたズレを放置していれば、区政全般への理解や支持にも影響しかねない。

 「いかにみなさんに新しい施設の存在を知ってもらえるか。さらには、変わっていく豊島区をどうみなさんに伝えるか。これらのテーマを複合的に考えていく中で、オープン前の施設を子どもたちに開放する体験型イベントという形で結実した」(宮田氏)

 イベント開催中の内外の様子を見ていると、独特なデザインのセットや子どもたちの本格的な衣装が印象的なのか、足を止めて様子を伺う人の姿が目立った。「窓越しにイベントの全体像が見られるというのも良かったと思う。街ゆく人に、ハレザ池袋の存在を認知してもらうきっかけにつながったのではないか」と宮田氏は振り返る。

 実はこのとべ!とべ!フクロウにはもうひとり立役者がいる。建築家の三浦丈典氏(スターパイロッツ代表)だ。三浦氏は本業の建築設計のほか、「できごとの設計」と称して「ハッピー・アウトドア・シアター」という活動の旗振り役としても知られている。こちらは映画館のない村に、地元の人々と一緒に1日限りの手作り映画館を設置するというものだ。

 ハッピー・アウトドア・シアターの最大の特徴は、映画で映し出されている情景に合わせて、ボランティアスタッフの黒子が特殊効果をわざわざ手作りで加えること。水しぶきをかけたり、着ぐるみで恐竜を登場させたりといった具合である。三浦氏はこれを「アナログ4D」と表現する。

「ハッピー・アウトドア・シアター」の記録動画。こちらは岡山県英田群西粟倉村の保育園、西粟倉保育園で実施したものである(動画提供:三浦丈典氏)