「実は黒子をやっている大人が一番楽しい」

 当初、豊島区側も手探り状態で、問題意識をどう形に落とし込めばよいか考えあぐねていたという。しかし「企画も予算の割り振りも、まるごと任せてくれる案件こそ、やりがいが感じられる」と語る三浦氏。風呂上がりにビールを飲みながら浮かんできたのは、人知れず池袋を見守るフクロウのイメージだった。

 池袋のマスコットキャラクターであるフクロウが、時を超えて空に舞う。農村から始まった過去、都市として発展した現在、そして人と自然と人工物が調和した未来都市である池袋を見守っていく──。ノートに書き込みながら、ストーリーの根幹を固めていった。

建築家の三浦丈典氏。「とべ!とべ!フクロウ」の企画・運営を主導した(写真撮影:筆者)
三浦氏がノートに描いたアイデアスケッチ(写真撮影:筆者)

 衣装、セット、ツールの制作には、三浦氏の建築設計事務所・スターパイロッツのスタッフが協力した。デザイン・コンセプトは、三浦氏いわく「ルイス・キャロル+楳図かずお的な世界」。「子どもにこびず、このイベントでしか体験できない特別な世界観を衣装やセットで作り出そうと考え、クオリティに妥協することなく取り組んだ」(三浦氏)。

 トータルで約2カ月の期間をかけて作り上げた衣装やセットは黒子チームや豊島区のスタッフにも好評で、「1回限りで終わらせるのはもったいない」との声も多いという。

 とべ!とべ!フクロウの運営に協力した黒子20人に対しては、マニュアルやシフト表の類はあえて用意せず、黒子同士で調整してもらいながら運営した。「細かいルールを決めず、みんなが楽しみながら自主的に動く組織形態にしたほうが、最初に考えていたものよりも面白いものが生まれる」と三浦氏は断言する。

 三浦氏は手作り映画館の経験も踏まえながら、「こういうイベントは実は、黒子をやっている大人が一番楽しい」と語る。

 「現代社会の基準からすると、ある意味ばかばかしいというか、そんな活動。でも、それを汗をかきながら一生懸命楽しめる大人ってかっこいい。その姿を見た子どもや若者は、明るい顔を見せる。どの世代も楽しんでいるコミュニティが各所にできれば、楽しい町、希望が持てる社会になるのではないか」(三浦氏)。

「人力遊園地 とべ!とべ!フクロウ」の記録動画も公開された(動画提供:三浦丈典氏)