今、サウナが来ている。2013年に「週刊モーニング」(講談社)でマンガ化されたタナカカツキ氏の『サ道』がきっかけの一つとなって、情報感度の高い人やアーティスト、若者などの間で人気急上昇中だ。女性愛好家も増え、それを背景にサウナ自体も様変わりしてきている。今回は、そうした新しいウェーブの一つ、ZEN ENTERPRISEが展開する「ZEN VAGUE(ゼン ヴァーグ)」というサウナを併設した複合型宿泊施設を訪ね、プロデューサーの圡方周宏(ひじかた・のりひろ)さんに話を聞いた。

コンセプトは、「BEACH」「MODE」「TRADITION」

 ZEN VAGUEを展開するZEN ENTERPRISEは、フィットネス事業や企業のブランディング・ビジネス、あるいはアーティスト周辺のさまざまなコーディネイトなどを幅広く手がけるブランディング・カンパニーだ。代表取締役である増田将星さんは鎌倉育ち。鎌倉をベースにさまざまな事業を展開していきたいという思いを実現してきた。

プロデューサーの圡方周宏さん

 増田さんは幼少期からサーフィンをする環境に育ったこともあり、周りにはプロをはじめとするサーフィン関係者が多くいる。今回お話を聞いた圡方さんも増田さんがきっかけでサーフィンにのめり込んだという。有名なサーファーのジェリー・ロペスが禅を始めたことがきっかけとなって、サーフィンと禅はセットで考えられることが多いのだという。「波にのっているときは禅における“空”の境地に近い」というのがロペスの主張らしい。

 この話を聞いて、ZEN VAGUEのコンセプト「BEACH」「MODE」「TRADITION」の意味がクリアになってくる。「BEACH」はサーフィン文化であり、「MODE」はビーチカルチャーの新しい発信のあり方であり、「TRADITION」は、日本文化の象徴としての禅の考え方だ。それらが組み合わさったものとしてZEN VAGUEがある。

ZEN VAGUEから数分で由比ヶ浜に行くことができる

禅とサーフィン。日本文化とビーチカルチャーが出合う場所

 ビーチカルチャーを表現するために由比ヶ浜まで約100mという絶好のロケーション、大仏や長谷寺など日本文化へのアクセスも容易な場所で、ZEN VAGUEは2017年9月にオープンした。

 2階が宿泊スペースになっており、素泊まりだけというのが特徴だ。個室が大部屋と小部屋で2部屋(それぞれ1人から宿泊可能)、そして男女共用(4人まで)のドミトリールームがある。いずれも極力シンプルに、余計なものを削ぎ落とした和室仕様(ドミトリーはフローリング)である。それだけに、設えられている各部屋のアートが際立って印象的だ。

 例えば、大部屋には、サーファーで藍染プロダクトデザイナーである永原レキさんとZEN VAGUEのコラボレーション作品が飾られている。サーフボードが藍で彩られたものだ。

 「この藍染のサーフボードは、ZEN VAGUEのブランドコンセプトを表現するデザインを自社制作し、それを永原さんにプロダクトへと落とし込んでいただいた作品です。中央に私たちのロゴが据えられています。それに海を表現する日本の伝統的な表現、青海波があります。そこに、侍が縁起物で身につけていた下着の色『勝藍』を使ってもらっています。この色はサッカー日本代表のサムライブルーにも使われています」

どこか凛としたサーフボードアート

 小部屋には、リプランターの作品「スペースコロニー」がある。ガラス球体の中に植栽が設えられており、LEDライトによって照らされている。無駄のない居室が宇宙空間のようで、そこにまるで惑星のように浮かんでいるようだ。

テレビなどなくとも、これを見ているだけで飽きない

 1階には海や禅をテーマにしたギャラリー、近隣の方々のための会員制パーソナルトレーニングに使用するスタジオ(宿泊者も使用可)、リラクゼーションルームなどがあり、シャワーやトイレなどの水回りもまとめられている。

(左上)禅やビーチカルチャーを表現した作品が並ぶギャラリー、(右上)トレーニングスタジオ、(右下)大好評の藺草の呉座マット、(左下)リラクゼーションスペース