サウナは、座禅に似ている。

 朝7時。香を焚き、それが燃え尽きるまでの15分から20分程度、スタッフがインストラクターとなって朝の座禅が行われる。

 その座禅とサウナは、頭がすっきりする感覚、よりクリエイティブなマインドになるという部分に関して非常に似ている体験だそうだ。つまり、ZEN VAGUEのサウナは禅体験に通じるものとして設置されている。

 「日本ならではのサウナという点をコンセプトに、日本庭園を眺めながら楽しめるサウナをつくりました」

 エントランス左手の、黒いタンクのような構造物がサウナだ。中に入ると手前の庭が透けて見える。「『サウナ→水風呂(冷水シャワー)→外気浴』を1セットとして、3セット。時間ではなくて自分のペースで、自分の呼吸で、2時間の間で楽しんでもらうスタイルです」

 サウナで発汗し、拡張した状態の血管を冷水でしめることによって、温まった熱が体外に逃げ出さない。逆に体がぽかぽかする。それを外気浴で放熱していく。こういうサイクルで血管が広がったり狭くなったりすることで、血流がよくなり、いわゆる「ととのう」という至福の状態になるという。これが座禅にも通じる境地だということだ。

(左上)サウナの中から日本庭園がアートのように見える、(右上)サウナの外観。どことなく大人の秘密基地のようだ、(右下)サンダルもこだわりの黒、(左下)フィンランド製サウナストーブ「MISA」

 ZEN VAGUEでは一切食事を提供しない。食事やカフェは鎌倉の街で楽しんでもらう。その際、圡方さんは、必ず自ら味わって納得のいったお店をお客さまに紹介するのだという。お客さまが望むお店のスタイルや好き嫌い、その日のお客さまの体調などを訊いてお薦めする店を決めるそうだ。圡方さんの突出した語学力によるところも大きい。

 「10代の頃からスペイン、イタリア、アルゼンチンとサッカーで渡り歩いたので、スペイン語、フランス語、イタリア語、英語が話せます。その方の母国語を使って鎌倉の魅力を伝えていきたいと考えています」

 鎌倉はコミュニティの強い地域。紹介した先も圡方さんたちも、鎌倉に来てよかったと思って帰ってもらいたいと思っているので、紹介し合うのはお互いさま。なにも相手に求めたりはしない。

地域の施設全体で鎌倉体験をつくり出す

 そんな話の中で、「ぜひ行ってみてください」と案内いただいたカフェ「BASIC」にお邪魔して、オーナーの小菅幸大さんにも少しお話を聞いてみた。

長谷駅のそばにあるサンドイッチやホットドッグも人気のカフェ「BASIC」。圡方さんのお薦めだ

 「ZEN VAGUEの宿泊者の方が、圡方さんやスタッフの方の紹介で結構いらっしゃいます。特に連泊の方が毎朝決まって来てくれたり。小さなつながりかもしれませんが、それが嬉しいですね」

 大きなマグカップでサーブされるコーヒーにトーストやホットドッグ。飾らない接客と心地よいロコ感。観光地のカフェなどは意外に入りにくいものだが、圡方さんがここをすすめする理由がわかった気がした。

 ZEN VAGUEのこだわりの施設は、そこにいるだけで非日常的な開放感を味わえる。その一方で、地域とほどよい連携を組むことで、鎌倉らしさが旅にさり気なく入り込んでくる。そのじんわりとした幸福感をさらに高めてくれるのが、サウナの存在だ。海の話、お店の話、大仏の話、そんなことをサウナストーブを囲みながら語らう。翌朝には座禅を組んで、リフレッシュする。

 ZEN VAGUEは、地域に埋もれすぎない地域のための場。そんな感じがした。