リアルタイムで地域ごとの細やかな情報を提供するラジオ局「コミュニティFM」が、注目を集めている。とくに重要性が高まるのが災害発生時だ。猛威を振るった2019年10月の台風19号上陸時、開局前にも関わらず臨時災害放送局として市民に情報を提供した東京・狛江市の「コマラジ」の事例から、コミュニティFMの存在意義とその可能性を紹介したい。

コマラジ代表の松崎学さん(写真提供:コマラジ)

 2019年10月12日から13日にかけて、台風19号が日本に上陸。各地が記録的な大雨となり、各地に大きな被害をもたらした。このとき、11月に放送スタート予定だった狛江市のコミュニティFM「こまえエフエム(通称・コマラジ)」は、開局前にも関わらず、急きょ、臨時災害放送局として台風通過後まで災害情報を発信した。

 地域密着型メディアであるコミュニティFMの最も重要な役割の一つは、災害発生時に地域住民たちの安心・安全確保のため、リアルタイムできめ細やかな情報を提供すること。台風19号への対応を通じて、コマラジは正式な開局前ながら、狛江市民たちにコミュニティFMの意義を示すことになった。

 コミュニティFMは市町村単位の地域を放送対象とするラジオとして1992年に制度化。阪神淡路大震災をきっかけに注目を集めるようになり、今では全国各地に331局が開局している(2019年11月現在、日本コミュニティ放送協会調べ)。大手の広域放送とは異なるコミュニティFMならではの役割、そして可能性とはどのようなものなのか。コマラジ代表の松崎学さんに聞く。

災害時に地域ごとの細やかな情報を提供

コマラジは2019年11月11日に本放送がスタートしました。まず、なぜコミュニティFMを開局しようと考えたのでしょうか。発足の経緯を教えてください。

松崎市内在住の友人たちと5年ぐらい前から「地域コミュニティのためにラジオ局があればいいね」なんていう話をよくしていました。僕自身はラジオというメディアにそこまでこだわりはなかったんですが、ラジオ関係の仕事をしている知人がいて、阪神淡路大震災当時のことを聞いているうちにコミュニティFMの必要性を感じるようになりました。

 災害発生時にラジオは情報伝達の重要な手段のひとつです。しかし、阪神淡路大震災当時は広域放送が主流。広域放送だとエリアが広すぎて放送内容に地域差が出てしまうため、地域ごとの情報や被災状況を放送することができなかったそうなんですね。そこで市町村単位で細やかな情報を提供できるコミュニティFMが必要なんだ、と。

 狛江市に隣接する調布市や世田谷区、川崎市にはコミュニティFMがすでに開局されていて、実は狛江市も放送圏内なんです。ただ、当然ですが、それぞれの地域に密着した局なので実際に災害が起きたときに、狛江市の情報を発信してくれるわけではありません。狛江市は1974年に大きな水害が発生していますから、いざというときのためにもコミュニティFMは絶対にあったほうがいい。そう考える有志数人で3年ほど前に“FM狛江設立準備委員会”を発足。月に1度程度の会議を重ねてきました。

開局に至るまで、どのような苦労がありましたか。

松崎準備委員会といっても私を含めて基本的には素人ばかり。知らないことだらけでしたが、市内や近隣在住の大手ラジオ局の元番組制作担当者や電波技術のスペシャリストといった方々の協力を受けることができて、本当に一つずつ手探りで進めてきた感じです。

 資金繰りでも苦労がありました。コミュニティFMは災害発生のたびに局が増えてきていて、とくに東日本大震災後は一気に伸びているのですが、それでもまだ認知が行き届いていません。出資を募ろうとしても、怪しまれてしまって思うようにいかないこともありました。ただ、狛江市の松原俊雄市長は、1974年の狛江水害時に市役所職員として現場に出ていた経験があるそうで、市長にコミュニティFM開局について当初から理解と賛同をしていただいたことはありがたかったですね。

 狛江市からも協力を得られたことで、狛江市役所向かいのビル2階にスタジオと事務所を構え、市役所に隣接する狛江市防災センターに送信機器とアンテナを設置。7月31日に総務大臣から予備免許を付与していただき、当初の予定よりは遅れてしまったのですが、11月11日の本放送開始に向けて準備を進めていました。

(写真:編集部)