HOWAビル津中央(津市)は築30年弱の賃貸事務所ビルだ。2018年に改修工事を実施してZEB Readyの建物とした。2020年4月時点で、既存の賃貸事務所ビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修したケースは全国でも5棟ほどしかなく(環境共創イニシアチブへの登録事例)、先駆的な事例の一つと言える。

 HOWAビル津中央は、市役所や城址公園などが集まる津市中心部の一画に位置する。延べ面積3752m2の地上7階建て。茶色のタイルで外観を覆った重厚な印象の建物で、東面を除く外壁3面に横連窓が並ぶ。北側の前面道路の向かいに津地方裁判所や津法務総合庁舎などが建つ立地特性から、入居テナントには法曹関係の事務所も多い。

HOWAビル津中央の正面入り口側を北から見る。津市の中心部に位置している(写真:守山 久子)
HOWAビル津中央の正面入り口側を北から見る。津市の中心部に位置している(写真:守山 久子)
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 2018年に設備の更新工事を実施してZEB Readyとした。建物の外観には工事に伴う変更が生じていないが、省エネ性能の向上をアピールした要素が玄関まわりに2ヵ所ある。一つはエントランスホールに置いたモニターだ。ZEBに対するビルオーナーの取り組みや、建物内の電気消費量と発電量などを画面に映し出し、前面道路から見られるようにしている。また玄関の上部のガラス面には、5つ星のBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)評価を示したラベルも貼ってある。

1階エントランスホールに設置したモニター。普段は外に向けて置いている(写真:守山 久子)
1階エントランスホールに設置したモニター。普段は外に向けて置いている(写真:守山 久子)
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 ビルの所有者は、トラック輸送業を中心に営む宝輪(三重県鈴鹿市)。経営多角化の一環でいくつかの既存ビルを購入し、不動産賃貸業も手掛けている。HOWAビル津中央(1991年完成)はその一つだ。今回のZEB改修には三菱電機がZEBプランナーとして参画し、改修工事を手掛けた三菱電機ビルテクノサービスとともに改修設計を担った。

 「空調機器の更新時期が来たのを機に、ZEB化に取り組んだ」と、宝輪の園田修一氏(経営企画部・CSR推進室・教育センター・不動産管理部顧問、監査役)は話す。3ヵ月を費やして改修を進め、屋上には4.5kWの太陽光発電設備を設けた。創エネルギーを含まない1次エネルギー消費量の削減率(その他エネルギーを除く)は59%、創エネを含む同削減率は60%となる。

 ZEB改修の主な対象は、空調設備と照明設備だ。HOWAビル津中央の1次エネルギー消費量(基準値)を見ると、空調と照明で建物全体の4分の3を占める。空調と照明の設備効率を高めれば、1次エネルギー消費量は大きく削減できる。

 まず、空調機を高効率タイプの機器に置き換えた。照明については、共用部は既に発光ダイオード(LED)に置き換えていたため、今回はテナント部分のLED化を実施した。さらに空調や照明、コンセントの電気使用量を各階のエリアごとに集計し、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)による集中管理を導入した。これらにより設計時の1次エネルギー消費量は空調で約4割、照明は約2割へと圧縮できた。

 BEMSのモニターは1階の管理室に設置している。月1回データを集計し、運用の改善をめざす。

テナントスペースの天井まわり。空調機と照明を更新した(写真:守山 久子)
テナントスペースの天井まわり。空調機と照明を更新した(写真:守山 久子)
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