ZEB化しやすい建物形状

 今回のZEB改修では、建物の躯体には手を加えていない。「建物の条件がある程度整っていたことも、ZEB化が可能になった要因の一つ」と、三菱電機ビルテクノサービスの前川聡史氏(中部支社栄支店営業課営業一係係長)は指摘する。

 ビルの外壁と屋根面には、ウレタンフォームやポリスチレンフォームの断熱材が施されていた。また、建物内の部屋の配置も有利に働いた。

 建物は南北に細長く、南面がやや西側に触れた長方形平面となっている。テナントのオフィススペースが建物の西側を占め、北側の正面玄関から東側外壁に沿ってエレベーターや廊下などの共用部が延びる。通用口のある東南の角には、立体駐車場が設けられている。

 「東側の共用部と東南角の駐車場が実質的な断熱エリアとして機能し、オフィススペースの空調負荷を低減することができた。事前の調査で、この建物なら設備機器の高効率化を図ればZEB化できると判断した」と前川氏は振り返る。

1階平面図(資料:三菱電機テクノサービス)
1階平面図(資料:三菱電機テクノサービス)
[画像のクリックで拡大表示]

 計画に際しては経済産業省のZEB実証事業の採択を受けて、工事費の約3分の2を補助金で賄った。

 既存テナントビルの改修で難しいのが、入居しているテナント企業の日常業務に影響を与えないようにすることだ。建物の躯体に手をつけず、設備機器の更新に絞ったとはいえ、テナントの室内に入って行う工事も多い。三菱電機、三菱電機ビルテクノサービスは宝輪や管理会社と入念な打ち合わせをしたうえで毎週金曜の夜から土・日曜にかけて集中的に作業を実施。2018年9月15日から同12月16日まで3ヵ月の工期中、テナントの机や備品類を一つも動かさずに「居ながら改修」の工事を進めた。

 「ZEBプランナー、設計、施工のチームが連携し、改修計画から工事管理まで一体的に進めていくことができたため、テナントからは工事中のクレームを一切受けなかった。管理会社が日常的に、テナントとコミュニケーションを密に取っていた点も円滑に工事を進められた要因だと思う」と園田氏は評価する。

 改修後、テナント部分の光熱費は概ね3分の1に減少しているという。園田氏はビルオーナーにとってのZEB改修の意義を次のように語る。「ビルオーナーが負担する改修コストは確かに大きい。ただし建物の快適性が高まり、光熱費が減るというメリットをテナントに提供できる。築年数が古いビルでも賃料の水準を維持していくための手段になり得る」。

建築概要

●HOWAビル津中央
●所在地:三重県津市
●地域区分:6地域
●建物用途:事務所等
●構造・階数:鉄骨鉄筋コンクリート造・地上7階建て
●延べ面積: 3752m2
●発注者:宝輪
●設計者:三菱電機、三菱電機ビルテクノサービス
●施工者:三菱電機ビルテクノサービス
●完成:2018年12月(改修)

HOWAビル津中央のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
HOWAビル津中央のZEBデータ(資料:環境共創イニシアチブ)
[画像のクリックで拡大表示]

この記事は、日経 xTECH(クロステック)の「省エネNext」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2020年4月27日)。

後編はこちら