マンガ、アニメ、ゲーム。根強い人気を誇る日本発祥のサブカルチャー。このサブカルチャーを地域の活性化に活用しようとするケースが増えている。サブカルコンテンツのファン、コンテンツ事業者、そしてまちの「三方良し」を実現するにはどうしたらいいか。「サブカルチャー+観光」に力を入れている横須賀市のケースを見てみよう(全2回、前編)。

 東京湾の入口に位置する神奈川県横須賀市。古くから江戸(東京)を海の侵攻から守る拠点として重視されてきた横須賀は、要塞の遺構が残り、今も防衛関係の施設が多く立地している。そうしたハードなイメージがある一方で、「よこすか海軍カレー」「ヨコスカネイビーバーガー」「ヨコスカチェリーチーズケーキ」といった港町ならではの特色あるグルメでも知られている。猿島や観音崎をはじめとする自然資産も豊富だ。戦後におけるジャズ復興の起点地でもあり、エッジが立った文化都市としても名高い。

 そんな横須賀市が近年、アニメやゲームといったサブカルチャーコンテンツとの連携を強めている。2020年8月には、スマートフォン向けゲーム「アズールレーン」とのコラボ企画が行われている。ゲーム内に登場する女性キャラクター「三笠」をメインに据えた「『YOKOSUKA✕アズールレーン』コラボイベント『三笠大先輩のおうちで横須賀散歩』」だ。

 (参考:『YOKOSUKA×アズレン』コラボイベント『三笠大先輩のおうちで横須賀散策』公式サイト)。

 アズールレーンは、中国・上海と東京に本拠を置くゲーム会社Yostar(ヨースター)が提供しているシューティングゲームである。特徴の一つは、戦艦をモチーフにした女性キャラクターたちが多数登場すること。プレーヤーは女性キャラクター(戦艦)を選び出して艦隊を組み、敵と戦う。コラボイベントでメインに据えた三笠は、戦艦三笠をモチーフにしたキャラクター。戦艦三笠は横須賀市の歴史資産・記念艦「三笠」として、海辺の三笠公園に保存されている。

市内「三笠ビル商店街」の入り口にかけられているコラボ企画の横断幕。横断幕の左側に描かれているのが、ゲーム「アズールレーン」の女性キャラクター「三笠」。記念艦「三笠」は横須賀市の歴史資産であり、また三笠ビル商店街の名は記念館「三笠」にちなむ(写真撮影:筆者)
市内「三笠ビル商店街」の入口にかけられているコラボ企画の横断幕。横断幕の左側に描かれているのが、ゲーム「アズールレーン」の女性キャラクター「三笠」。記念艦「三笠」は横須賀市の歴史資産であり、また三笠ビル商店街の名は記念館「三笠」にちなむ(写真撮影:筆者)
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オンラインコラボ企画のキャッチ画像(資料:横須賀市報道発表資料)
この画像はイベントのキャッチ画像(資料:横須賀市報道発表資料)
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 企画の調整役を担ったのは、横須賀市文化スポーツ観光部観光課サブカルチャー担当(通称・サブカルチャー班)。デザイナー(観光課内の他分野業務も兼務)を含めて総勢9人の陣容で、各種サブカルチャーコンテンツとの共同企画を推進するためのさまざまさまざまな業務を実行する。

 なぜ、横須賀市はサブカルチャーに力を入れるようになったのか。サブカルチャー班はどのようにしてコンテンツ事業者とまちを結びつけているのか。サブカルチャー班を率いる大道裕氏(横須賀市文化スポーツ観光部観光課サブカルチャー担当係長・課長補佐)と、サブカルチャー班でさまざまな企画推進を担ってきた小山田絵里子氏(同課サブカルチャー担当)に、サブカルチャーと地元をつなぐ支援活動の要諦を聞いた。

横須賀市文化スポーツ観光部観光課サブカルチャー担当の大道裕氏(右)と、小山田絵里子氏(左)(写真撮影は筆者)
横須賀市文化スポーツ観光部観光課サブカルチャー担当の大道裕氏(右)と、小山田絵里子氏(左)(写真撮影は筆者)
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ライバル観光地を越えた誘客の有力手段

横須賀市が、サブカルチャーとまちおこしを結びつけた企画を推進するようになった経緯や背景について教えてください。

大道氏(以下、敬称略)横須賀市は記念艦「三笠」をはじめとした歴史資産、また自然が豊かな土地です。これまでも観光課としてはご当地グルメの開発、ウォーキングなどのイベント、そして各種の旅行メディアへの露出といったことを多面的に実施してきました。

 主な観光客の属性は男性や比較的年配の方々でして、若い世代や女性の観光客にも目を向けていただくことが、課題として長く挙げられていました。多様なファン層が結びついているサブカルチャーを観光の要素として組み合わせることで、より多くの観光客を呼び込むことができないか。そのような考え方の下で、サブカルコンテンツとのコラボ企画を推進しています。

小山田氏(以下、敬称略)横須賀市は東京都内から約1時間で着く、比較的アクセスが良いまちです。しかし、東京から地理的に見ると、手前には横浜市や鎌倉市などの有力な観光地があります。観光客にもう一歩こちらに踏み出していただくためには、より強力なコンテンツが必要であり、その一つにサブカルチャーを位置づけています。

大道実際、サブカルチャーコンテンツは全国各地から観光客を呼び込むのに非常に有効だと実感しています。これまで横須賀市がどこにあるのかを知らなかった方でも、アニメやゲームなどのコンテンツが好きな方は、面白い企画さえあれば横須賀にまで足を運んでいただけるからです。

最初に取り組み始めたのは、アニメ作品「たまゆら〜hitotose〜」とのコラボ企画だったと伺っています。

大道はい、最初に行ったのは、2011年に実施した「たまゆら」とのコラボ企画でした。この作品は横須賀市が舞台となっています。

 たまゆらとのコラボ企画はいくつかの要素で構成されていますが、その一つがグルメスタンプラリーで、横須賀市内の参加店舗がたまゆらに登場するキャラクターのイメージに沿ったメニューを提供しました。作品のファンが横須賀市に足を運んでいただくことを狙ったものです。

 (参考:PR企画「たまゆらの素敵な不思議」第1弾「たまゆら」×「横須賀市」

 ゲーム、アニメ、マンガは相互に作品化やゲーム化が進められており、そのためサブカルチャー班はサブカルチャー全般とのコラボレーション企画を総じて扱うようになりました。このようにして、横須賀市ではサブカルコンテンツとまちをどう結びつけていくか、そのノウハウを蓄積してきました。

画像はコラボイベントの初日である2020年7月4日にYouTubeライブで放映されたトーク番組「アズレン公式生放送〜三笠大先輩のおうちで横須賀散策 トークイベント配信SP〜」より。横須賀市内の三笠公園にある記念艦「三笠」(戦艦三笠)内部から配信された。画像中右から2人目の女性がアズールレーンで三笠の声を担当する声優の大原さやか氏(画像取得は筆者)
画像はコラボイベントの初日である2020年7月4日にYouTubeライブで放映されたトーク番組「アズレン公式生放送〜三笠大先輩のおうちで横須賀散策 トークイベント配信SP〜」より。横須賀市内の三笠公園にある記念艦「三笠」(戦艦三笠)内部から配信された。画像中右から2人目の女性がアズールレーンで三笠の声を担当する声優の大原さやか氏(画像取得は筆者)
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