「住宅仕様」で高断熱化

 ZEB化に際しては、外皮の高断熱化と設備の高効率化を図った。「計算上、住宅に比べて事務所ビルでは外皮性能の向上がエネルギー消費量の削減に与える効果は小さく、空調や照明といった設備の影響が大きい。そのため中心的な対策となったのは、日中の空調や照明のエネルギー消費量の削減だ。ただし快適な室内環境を得るために、住宅会社として当然備えるべきだと考える外皮性能も確保した」(小山代表)

 建物の外皮は、同社が日ごろ手掛けるZEHを目安に断熱仕様を設定した。まず、ほぼ無断熱の状態だった既存建物に高性能グラスウールを追加した。断熱材の厚さは、2階の天井で180mm、外壁で105mm、1階の床で80mmとしている。

 加えて内窓を追加した。既存建物の開口部に用いられていた単板ガラスの金属サッシは、断熱性能が低く熱の出入りが大きい。そこで、1階の多目的スペースを除くほとんどの部屋で、Low-E複層ガラスの樹脂サッシの内窓「インプラス(LIXIL)」を設置した。

断熱工事。外壁と天井上などに高性能グラスウールを充填(写真:エコワークス)
断熱工事。外壁と天井上などに高性能グラスウールを充填(写真:エコワークス)
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1階会議室の開口部。主な開口部に内窓を取り付け、既存窓と合わせて3重ガラスとした(写真:守山 久子)
1階会議室の開口部。主な開口部に内窓を取り付け、既存窓と合わせて3重ガラスとした(写真:守山 久子)
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 設備面では、各室の空調機器に高効率の天井付けエアコンと壁付けのエアコンを導入した上で、照明を全てLEDにした。意識したのは「いかにコストパフォーマンスの良いZEBにたどり着けるか」(小山代表)。

 当初案では、全て天井付けのパッケージエアコンを使い、全熱交換器を用いた第1種換気とする計画だったが、実際の使い方や地域の気候を考えて設備仕様をダウンサイジングした。小会議室や休憩コーナーなど一部の部屋では家庭用の壁付きエアコンとし、換気は熱交換をしない第3種換気に変更した。

 屋根の上には45.225kWの太陽光発電パネルを設置した。自家消費を前提とし、余剰分は売電する。電力が足りない夜間などには電力会社から再生可能エネルギー由来の電力を購入する。

 太陽光発電パネルは、防水層を痛めずに既存の折半屋根の一部に穴を開けて専用ボルトで固定。また既存の梁(はり)に対する構造計算を行い、増える荷重に対する安全性も確認している。

屋上のほぼ全面に約45kWの太陽光発電パネルを設置(写真:エコワークス)
屋上のほぼ全面に約45kWの太陽光発電パネルを設置(写真:エコワークス)
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太陽光発電パネルは既存の折板屋根に取り付けた(写真:エコワークス)
太陽光発電パネルは既存の折板屋根に取り付けた(写真:エコワークス)
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 新本社の計画は、社員数が増えて旧本社が手狭になったのがきっかけだった。旧本社が入居していたビルのオーナーが所有する近隣の建物が空いていたので打診し、移転が決まった。

 入居に伴う改修計画の最初からZEBをめざしたわけではない。計画途中の19年夏に、「せっかくならZEBにしよう」と新たな目標を掲げた。改修工事費は約4900万円。国土交通省の既存建築物省エネ化推進事業の補助金を利用している。

 ZEHには手慣れているエコワークスにとっても、ZEBは初めての取り組みだった。三菱電機住環境システムズに設備改修の設計を依頼。ZEBなどの申請や省エネ計画についてはイエタス(東京・千代田)のサポートを得た。イエタスの西山博マーケティング開発部長は、「今回は非住宅にもかかわらず断熱改修によって外皮性能が高くなっており、三菱電機住環境システムズも高機能の設備機器を提案していた。ZEB化に際して大きな苦労はなかった」と振り返る。

 エコワークスは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、新本社の入居後早々に1カ月の在宅勤務を実施した。BEMS(ビルエネルギー管理システム)も導入しているが、本格的な計測と運用調整はこれからの作業になる。

エコワークス新本社
●所在地:福岡市博多区
●地域区分:7地域
●建物用途:事務所等
●構造・階数:鉄骨造・地上2階建て
●延べ面積: 603.24m2
●発注者:エコワークス
●設計者:三菱電機住環境システムズ、エコワークス
●施工者:エコワークス
●完成:2020年2月(改修)


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エコワークス新本社のBELSプレートと評価書の一部(資料:エコワークス)

この記事は、日経 xTECH(クロステック)の「省エネNext」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2020年7月29日)。

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