大成建設は横浜市の技術センター内に立つ「ZEB実証棟」を改修した。築6年の建物を特徴付ける外壁の太陽光発電パネルを高効率化したうえ、汎用技術を使って設備や外皮の性能をさらに向上させた。前編に続き、関係者に解説してもらう。

大成建設の技術センター内に建つZEB実証棟「人と空間のラボ」南側外観。窓以外の外壁に設置した太陽光発電パネルを高効率なタイプに一新した(写真:大成建設)
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「人と空間のラボ」は、「エネルギー収支ゼロ」を目指して2014年に建設したZEB実証棟を2020年に改修したものですね。

小林信郷氏(大成建設エネルギー本部ZEB・スマートコミュニティ部長)建物の完成は、2015年12月に国がZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の定義を公表する前のことです。そのため計画時には「再生可能エネルギーによる創エネ量がエネルギー消費量を上回ればZEBになる」という考えで設計を進めました。当時はともすると、省エネの建物は寒かったり暑かったりするのを我慢しなければいけないのではないかと思われていました。そこで、まずは自分たちで快適性を兼ね備えたZEBをつくり、実証しながら技術を改善していこうと考えたのです。

 以降もオフィスビルや研究施設などで実績を積みながら、汎用技術を使ったコストダウンや、私たち設計者側の作業の標準化などを進め、顧客の予算やニーズに合った実践的なZEBを提供できるようにしてきました。そうした過程を踏まえ、今回は外壁の太陽光発電パネルの一新をはじめとする改修を実施しました。

関根賢太郎氏(大成建設技術センター都市基盤技術研究部空間研究室長)もともとこの建物は、「いきいきオフィス」「ゼロエネルギー」「ひとつ上の安心」というコンセプトで計画していました。そのコンセプトを残しつつ、改修では「健康、生産性の向上、AI・IoTの活用」「さらなる創エネ、汎用技術による省エネ」「事業継続計画(BCP)の強化」といった対策を施しました。

砂賀浩之氏(大成建設エネルギー本部ZEB・スマートコミュニティ部ZEB推進室長)2014年時点で導入した技術には、エネルギー消費性能計算プログラムを使う現行の方法では評価されにくいものもあります。例えば人を検知して照明や空調を最適制御するT-Zone Saverというシステムは、同プログラムで評価されるのは一部分の効果だけです。

 でも、エネルギー消費量の削減効果は実績に表れます。テナントビルとして初めてZEB Ready(創エネを含む1次エネルギー消費量削減率が75%未満)の評価を得たJS博多渡辺ビル(福岡市、2018年完成)では、汎用技術とT-Zone Saverを組み合わせて導入しました。エネルギー消費量の計算値に比べて実績値は明らかに小さく、これは未評価技術であるT-Zone Saverの成果だととらえています。

 顧客に対する説得力を高めるために、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証のような第三者機関のお墨付きを得ることは重要です。同時に、実際の運用段階でもエネルギー消費量を削減していくこと、その削減を証明していくことも大切になります。私たちは、未評価技術を有効に取り入れたうえで、使用開始後は実際のエネルギー消費量を把握して運用改善を提案するエネルギーサポートにも取り組んでいます。

「人と空間のラボ」の新築時には、燃料電池の排熱を利用した躯体(くたい)放射空調などを導入したそうですね。新たに導入したビル用マルチエアコンとは、どういうバランスで運用していくのでしょうか。

関根氏新築時に導入した技術のデータはこれまでに収集し、年間のエネルギー収支ゼロの実績を得ています。今後は、新たにBELSのZEB評価を得た技術を対象にデータ収集していくことが優先になります。