空き家を活用し、周辺地域の活性化につなげようとする動きが各地で見られる。長野県北部の白馬岩岳エリアでは、後継者がいない“空き家候補”の民宿など6つの建物を改修して再生させてきた。コロナ禍の後を見据え、持続性を備えたまちづくりの取り組みは続く。

 白馬岩岳スノーフィールドは、国内有数の山岳リゾート「HAKUBA VALLEY」が擁する10のスキー場のうちの一つだ。そのお膝元となる白馬岩岳エリアに、水路が流れ、民宿が立ち並ぶ通りがある。

 2018年12月から2019年12月にかけて、この通り沿いにある6軒の建物が相次いで生まれ変わった。いずれも「自然と伝統の融合した白馬岩岳の街並み活性化株式会社(以下、岩岳街並み活性化会社)」が事業者となり、地元のオーナーから借りた建物を改修・再生させた。それぞれの施設は別途、オペレーター会社に運営を委託している。

白馬岩岳エリアの一画、雪に覆われた新田地区の街並み。通り沿いに、既存の建物をリノベーションした6棟が並ぶ(写真:守山 久子)
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施設配置図(資料:自然と伝統の融合した白馬岩岳の街並み活性化株式会社)
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 レジャー白書によると、近年の国内のスキー・スノーボード人口はピークだった1998年頃の3分の1ほどに落ち込んでいる。白馬岩岳エリアでも、1990年代初頭に150軒あった宿泊施設が、2019年には80軒近くにまで減ったという。

 「周辺の民宿は1960年前後に新築し、1998年の長野五輪前に改修した建物が多い。今では多くの経営者が高齢を迎え、後継者問題を抱えている。ただ、自分で運営するのは難しくても、愛着を持つ建物をできれば使って欲しいと考える人もいる。空き家が出てにぎわいを失う状況は、まちにとっても良くない。そこで、リノベーションによる既存建物の活用を考えた」。岩岳街並み活性化会社の和田寛社長は、取り組みの背景をそう話す。

 2018年12月に、旧庄屋の古民家を利用した「旅籠丸八クラブハウス/庄屋丸八ダイニング」と、2棟の民宿を改修した宿泊棟「旅籠丸八壱番館・弍番館」を開業。1年後の2019年12月に「参番館」をオープンした。運営を担うのは、宿泊・飲食施設の開発や運営などを行うFunny(東京都港区)だ。和のテイストを織り込んだ内装デザインも、リノベーション事例を複数手掛けてきた同社が担当した。

江戸時代末期に地元の豪商が建てた古民家を改装した「旅籠丸八クラブハウス/庄屋丸八ダイニング」。宿泊客は、ここでチェックインしてから別棟の宿泊室に向かう(写真:守山 久子)
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 並行して2019年8月には、土産物の店舗を改装した「白馬ハム」の販売所をオープンした。安曇野食工房合同会社(長野県安曇野市)が入居し、地元産の豚を使った自家製ハムを販売している。

 2019年12月に、6つ目の施設として誕生したのが“セルフリトリート型”複合宿泊施設の「haluta hakuba」だ。長野県上田市を中心に北欧の家具や雑貨の輸入販売などを行うハルタが改修設計と運営を担当し、館内に北欧のビンテージ家具を並べている。

土産物店だった建物を改修した「白馬ハム」の販売所(写真:守山 久子)
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ハムづくり40年の職人、久保田彰夫さん。ドイツでマイスターの資格を取得した(写真:守山 久子)
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haluta hakubaの1階ラウンジ。民宿を改装し、8室の客室と石風呂のミスト浴などを用意した。館内には北欧のビンテージ家具を配している。改修設計はハルタ建築設計事務所(写真:守山 久子)
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