海に面した和歌山県白浜町。人口約2万人の自然豊かな、この町にあるテーマパークのアドベンチャーワールドで2020年11月22日、元気な雌のジャイアントパンダが産声をあげた。白浜町で暮らすパンダの数は、これで7頭に。中国以外の施設で世界最多を誇る。そんな白浜町で、パンダにちなんだ地域おこしが盛り上がっている。その一つが、2020年12月19日~2021年1月17日に初めて開催された「南紀白浜 パンダバンブーEXPO.」。パンダが食べない竹の有効活用と持続可能な社会について考えるきっかけを作り、誘客と地域活性化もめざす、地域一体型のイベントだ。

 アドベンチャーワールドは約1400頭の動物を飼育し、年間で約100万人が訪れる。これまでに17頭のパンダが無事に生まれ育ち、11頭が中国へ旅立った(そのうち4頭が中国で繁殖して、25頭以上の子や孫が生まれている)。これほど多くのパンダが生まれ育った背景には、雄と雌のパンダの相性の良さ、スタッフの豊富な飼育経験や中国の施設との共同研究、そして白浜の澄んだ空気などがある。

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2020年11月22日に生まれた赤ちゃんパンダ。名前は2月23日まで募集していた(写真提供:アドベンチャーワールド)
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パンダが食べない竹を再活用へ

 パンダは主食の竹を1日に20~30kgほど食べる。竹はアドベンチャーワールド内でも栽培しているが、多くは大阪府岸和田市と京都から運ばれる。岸和田市では竹が増えすぎて、里山に暮らす動植物に悪影響が及んでいた。そのためアドベンチャーワールドで竹を引き取り、パンダのエサにするとともに、山の荒廃を防ぐことにも役立てている。

 ただ、パンダは竹を非常に選り好みするので、与える量の3分の1くらいしか食べず、残りの3分の2は廃棄する。エサにならない竹の幹も廃棄の対象だ。竹の種類はいろいろあるが、モウソウチクに換算した場合、アドベンチャーワールドによると、廃棄量は年約2万本にのぼるという。大量の竹を処分するために、多くの費用を使い、二酸化炭素を発生している状況だ。

 アドベンチャーワールドは、2019年からSDGsに取り組んでいる。パンダが食べない竹の幹を活用して、エネルギー源となるバイオコークスにしたり、竹紙や料理に使える竹粉を作ったりする試みも実施。そうした考えや活動をアドベンチャーワールドの外まで広げたいという願いもあり、「南紀白浜パンダバンブーEXPO.」の開催に至った。

竹のシンポジウムを3000人がYouTubeで視聴

 「南紀白浜パンダバンブーEXPO.」は、竹に関するシンポジウムとアート作品で構成する。

 シンポジウムは、2020年12月19日~20日にアドベンチャーワールドで開催した。「竹イノベーション研究会」の代表を務め、土木(地盤工学など)の専門家でもある福岡大学教授の佐藤研一さんは「日本の竹の現状と新しい竹の利活用の取組み」をテーマに講演。滋賀県立大学教授の陶器浩一さんは、構造設計者として日建設計に17年間勤務した経験も生かしながら「竹建築の魅力と可能性」について話した。自然素材を使った構造物を手がける建築・デザインチーム「IBUKU」の創設者で建築家のエローラ・ハーディーさんは、インドネシアのバリから中継で出演した。

 新型コロナウイルスの感染者が全国的に増えた時期でもあり、会場の参加者は約100人(2日間の合計)にとどまったが、YouTubeでのライブ配信は約3000人(同)が視聴した。視聴者からは「竹の利用法ってさまざまですね」「プラスチック使わないで、竹の定規がたくさん普及すればいいのにな…」(原文ママ)といったコメントが寄せられた。

 アート作品は、白浜町役場、JR白浜駅、南紀白浜空港、アドベンチャーワールド、景勝地の千畳敷と三段壁などで展示。さまざまなアーティストが手がけているので、作品巡りをして楽しむことができる。

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JR白浜駅と南紀白浜空港の竹あかり(写真:中川美帆)
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