和歌山県白浜町で開催された「南紀白浜 パンダバンブーEXPO.」(前編を参照)。地元では、まちの観光コンテンツの一つとして、今後もEXPOを開催していきたい考えだ。白浜町ではこれまでにも「パンダのまち」として、観光客を呼び込む取り組みを行ってきた。しかし、冬場に観光客数が落ち込むという課題を抱えていたところに、新型コロナウイルス禍の影響も出ている。こうした状況を乗り越えようと、パンダのまちは新たな取り組みを始めている。

 和歌⼭県⽩浜町は「関⻄の奥座敷」と呼ばれる温泉やビーチを目当てに、昔から主に関⻄の観光客が来ている。雄のジャイアントパンダの永明(えいめい)と雌の蓉浜(ようひん、1997年死亡)が中国からアドベンチャーワールドへやって来た1994年以降は、パンダを目当てに訪れる⼈も増えている。

観光客頼みには課題も

 ⽩浜町を歩くと、いたるところでパンダの写真やイラスト、お菓⼦やグッズを⾒かける。JR⽩浜駅では改札にパンダのぬいぐるみが並べられ、待合室の椅⼦にはパンダ柄の座布団が敷かれている。パンダをデザインしたJR⻄⽇本の特急列⾞「パンダくろしお」も停⾞する。搭乗者数が約17万7000人(2019年度)の南紀⽩浜空港で唯⼀のレストランには、パンダのグッズやメニューが並ぶ。町役場の入口には「パンダのまち ⽩浜」の⽂字とパンダの写真が⼤きく掲げられている。

JR白浜駅にあるパンダ像と「パンダのまち 白浜」の文字。2021年1月に、電車の発着を表示する電光掲示板を見ていたら「赤ちゃんパンダ誕生おめでとう☆早く大きくなってネ!白浜駅一同」の文字が出現した(写真:中川美帆)
JR白浜駅にあるパンダ像と「パンダのまち 白浜」の文字。2021年1月に、電車の発着を表示する電光掲示板を見ていたら「赤ちゃんパンダ誕生おめでとう☆早く大きくなってネ!白浜駅一同」の文字が出現した(写真:中川美帆)
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⽩浜駅に停⾞したJR⻄⽇本の特急列⾞「パンダくろしお Smileアドベンチャートレイン」(写真:中川美帆)
⽩浜駅に停⾞したJR⻄⽇本の特急列⾞「パンダくろしお Smileアドベンチャートレイン」(写真:中川美帆)
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和歌山観光PRシンボルキャラクター「わかぱん」の法被を着て、チャーターの到着客を出迎える南紀白浜エアポートの岡田信一郎社長ら。新型コロナ禍前の2019年12月撮影(写真:中川美帆)
和歌山観光PRシンボルキャラクター「わかぱん」の法被を着て、チャーターの到着客を出迎える南紀白浜エアポートの岡田信一郎社長ら。新型コロナ禍前の2019年12月撮影(写真:中川美帆)
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 ⽩浜町は、⼈⼝約2万⼈に対し、訪れる観光客はコロナ禍前の2019年が約345万⼈、コロナ禍の影響を受けた2020年でも約237万⼈にのぼる。ただ、課題も抱えている。ビーチが目当ての⼈が多いためか、観光客の数が冬に落ち込む傾向がある。また、パンダはこの先も⽣まれるかどうかわからない。パンダの永明は28歳で、⼈間でいうと80代。2020年11⽉に⽣まれた⾚ちゃんが永明の最後の⼦どもになる可能性もある。

ビジネス客の誘致も

 こうした事情を背景に、近年はビジネス客を誘致する動きが盛んだ。 白浜町は複数の「白浜町ITビジネスオフィス」を整備。企業などに貸し出していて、IT企業のセールスフォース・ドットコムなどが入居している。⽩浜町は、国の機関である情報通信研究機構(NICT)と共同で「NerveNet」(ナーブネット)という耐災害ネットワークの実証実験をしており、平時はWi-Fiを無料開放しているので、通信環境も整っている。

 観光地などで休暇を取りながら働く「ワーケーション」の施設は、コロナ禍で世間の注目を浴びる前から整備。三菱地所は「白浜町第2ITビジネスオフィス」内でワーケーション施設を2019年5⽉から運営している。

 コロナ禍で観光業が大きな打撃を受けたこともあり、ビジネス客誘致の動きはさらに加速している。和歌山県は、県有地の南紀白浜空港展望広場(空港公園)を借りてビジネス拠点を整備・運営する事業者を2021年2月3日~3月2日に募集した。 借地期間は15年以上30年未満で、県は施設整備費の6分の1(上限3000万円)を補助する予定。 2022年中の開業をめざしている。

 より長期的な視点に立ち、白浜町の5~10年後のビジョンをつくる活動もスタートした。2020年に地元の有志を中心に「南紀白浜みらい創造委員会」が立ち上がり、「南紀白浜をもっと良くしたい」という人やチームを支援する体制ができた。モデレーターは、アワーズ(アドベンチャーワールドの運営会社)社長の山本雅史さんと南紀白浜エアポート(南紀白浜空港の運営会社)誘客・地域活性化室長の森重良太さんが無償で務めている。

 委員会では「南紀白浜ビジョンミーティング」を毎月1回、オンラインで開催。参加者はテーマに沿って、10年後のビジョンなどを語り合う。肩書きや年齢を問わず誰でも参加でき、参加者の年齢は10~70代とさまざま。居住地は白浜だけでなく、県外、海外におよぶ。東京に住む筆者も複数回参加している。

 南紀白浜エアポートの森重さんは「周りの人が何を考えているのか、知る機会は意外と少ない。ミーティングでは、互いの考えを知り、参加者全員が当事者意識を持って、自分だったらどうするかを考えるようにしました」と話す。

クラウドファンディングの返礼品は「お魚セット」や「女将体験」

 2020年7月に開催した第1回のミーティングでは、クラウドファンディングが「南紀白浜デジタル化プロジェクト」として実現した。集まった資金を使い、オンラインで南紀白浜を楽しめる地図を作る構想だ。

 支援の募集を同年11月30日に締め切ったところ、目標額の150万円に対し、165人が計297万9000円を支援。リターン(返礼品)は、「白浜のお魚セット」(3万円)といったモノだけでなく、サイクリング体験(白浜のお土産付きで1万円)、オンラインによる釜飯プロデュースを含む温泉旅館の女将体験(海鮮釜飯付きで1万円)などもあってユニークだ。

 2020年9月のミーティングでは、アワーズ経営企画室の新東貴行さんが白良浜の清掃活動を提案した。同年9月22日に実現し、約150人が参加して1時間ほどで約20袋のゴミ袋が一杯になった。

2020年9月22日に実施した白良浜の清掃活動。本物そっくりのパンダが応援に(写真提供:アドベンチャーワールド)
2020年9月22日に実施した白良浜の清掃活動。本物そっくりのパンダが応援に(写真提供:アドベンチャーワールド)
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