“老舗旅館の女将の接客”をスタッフ全員で

 デザイン重視。それはハードや装飾的な意味だけでなく、接客という面においても言えるという。

 「私はいろいろなブランドのホテルで仕事をしてきましたが、その中でもキンプトンは、お客さまの心に残るサービスを提供することに対して、とても真摯に向き合っているホテルだと思います」

 「そう感じたのは、研修を受けるために、ウェストハリウッドのキンプトン ラ ピア ホテルに泊まったときのことです。ちょうど私の誕生日でもあったのですが、部屋に着くと、『出張に来ていてウィラ(注:ネイザン氏の愛犬)に会えなくて寂しいでしょう』というメッセージカードとともに、ウィラへのお土産がプレゼントとして用意されていました。ウィラと一緒に過ごせず寂しかった私にとって、それは最高のおもてなしでした。私自身も体験したその感動を、キンプトン新宿東京にいらっしゃるお客さまにも提供したいのです」

 キンプトンでは、ゲスト一人ひとりに寄り添った画一的ではないホスピタリティを提供しようとしている。

客室での最初のおもてなし。ここにもゲストへの理解の深さが求められる
客室での最初のおもてなし。ここにもゲストへの理解の深さが求められる
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 そうした“とんでもなくパーソナルな体験”を象徴するイベントが、午後5時から行われる「イブニングソーシャルアワー」だ。

 「このサービスは、創業者のビル・キンプトンが、ホテルスタッフとのミーティング中に、近くにいらしたお客さまも誘って、ワインをふるまいながら話をしたことがきっかけだと聞いています。かしこまったミーティングではなく、リラックスした雰囲気をつくることで、自然にスタッフとお客さまとの距離が縮まりました。今ではキンプトンのすべてのホテルで行われています」

 ドリンク片手にピンチョスなどをつまみながら、スタッフとゲストや、ゲスト同士が交流する「ソーシャルアワー」。これはサービスの一環なので、ゲストに料金の負担はない。気軽に参加してもらい、できるだけ親密なコミュニケーションをとることで、ゲストが求めているものやことの個別性を知り、それをサービスにつなげていく狙いがホテル側にはある。言ってみれば、老舗旅館の女将がやっている接客を、キンプトンではスタッフ全員でやろうとしているのである。

お客さまとスタッフが交流する「ソーシャルアワー」は、他のホテルではできない体験(写真提供:キンプトン新宿東京)
お客さまとスタッフが交流する「ソーシャルアワー」は、他のホテルではできない体験(写真提供:キンプトン新宿東京)
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創業者の想いが詰まったペットフレンドリーな客室

 さらにキンプトンを特徴づけているのは、ペットを連れて宿泊が可能な点だ。

 「『犬も大切な家族の一員なのに、どうしてホテルでは一緒に過ごせないんだろう。この子と一緒にご飯も食べたいし、一緒にお酒も飲みたい』。そんなビル・キンプトンの愛犬への想いがあって、ペットと滞在できるホテルになっています。お客さまがペットを連れていらっしゃることで、スタッフとの接点が多く生まれ、さらにホテルのフォーマルさをいい意味で崩すことができる点も、私たちはいいことだと思っています」

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ペットと一緒に泊まれる部屋は全体の10%。部屋には、動物の置物も。ペットのアメニティはPEGIONが監修している(写真提供:キンプトン新宿東京)

 ちなみに、どんなペットでも泊まれるのか聞いてみると、「基本的に家庭で飼えるペットであって、ホテルのエレベーターに入る動物であればOK」とのこと。これまでに、犬、猫、フクロウ、子ぶた、うさぎなどが実際に滞在したそうだ。

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ロビーでレンタサイクル(専用のバスケットもあり)を借りることもでき、ペットとサイクリングを楽しむことができる(写真提供:キンプトン新宿東京)

 当初見込んでいたインバウンド需要が期待できない今、キンプトン新宿東京を支えているのは、キンプトン新宿東京そのものを楽しんでくれる日本人の宿泊客である。デザインにこだわった、クリエイティブで、アートにあふれたラグジュアリーライフスタイルホテルで、“とんでもなくパーソナルな体験”を楽しむ。それはこれまで日本人があまり体験してこなかった、“滞在”という楽しみ方だ。

 観光の拠点としてだけでなく、ホテルで過ごすひとときを目的に、ホテルそのものを楽しむ。ひとたび滞在すれば、きっとリフレッシュして日常へ帰ることができるだろう。都市に、滞在に値するホテルがある。それはおそらく、これからの都市の豊かさのひとつの指標になっていくに違いない。

■施設概要
キンプトン新宿東京
住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿3丁目4番7号
電話:0120 056 658 (IHG・ANA・ホテルズ予約センター)
   03 6258 1111 (ホテル)

宿泊:6タイプのゲストルーム
〔プレミアムキング/ ツイン〕¥50,000~、〔プレミアムコーナー〕¥50,000~、〔エグゼクティブキング〕¥65,000~、〔ジュニアスイートキング/ツイン〕¥80,000~、〔プレミアスイートキング/ツイン〕¥110,000~、〔ザ シンジュク スイート〕¥220,000~(税・サービス料込み、1名利用1泊あたり)

公式サイト:https://www.kimptonshinjuku.com/jp/
お話を伺った人
ネイザン・クック(Nathan Cook)氏

ニュージーランド出身。ニュージーランド、イギリス、日本の3ヵ国にて投資やリノベーション、リポジショニングなどさまざまなプロジェクトに携わり成功へと導く。直近では、IHG ANAホテルズグループジャパンのグループホテルであるストリングスホテル東京インターコンチネンタルにて総支配人を務め、2年間に渡りオーナーやIHGと共に業績向上に尽力。その後2019年4月よりキンプトン新宿東京の総支配人へ就任。ニュージーランド政府観光局(東京)でのマーケティングの経験も活かし、ホテルという枠にとらわれず独自の感性で人を惹きつける空間を表現していく
ネイザン氏の背景に注目。TOKYOの文字の中に“Oh”が隠されている!
ネイザン氏の背景に注目。TOKYOの文字の中に“Oh”が隠されている!
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