マイナス要因をプラスに転化。地道なPR活動が実を結ぶ

 2020年5月には岐阜県の文化を継承するためのプロジェクトとして、揖斐川町の薬草を使ったクラフトコーラの生産支援を求めるクラウドファンディングを開始するつもりだった。東京2020オリンピックが開催される夏は、クラフトコーラの話題をぶつける絶好のタイミングだと思っていた。オリンピックを観戦しながらクラフトコーラを飲んでほしかったのだ。

 ところが同年4月7日、新型コロナウイルス感染症対策の一環で東京都など7都府県に初の緊急事態宣言が発出された(4月16日には全国に拡大)。全国的に自粛ムードが漂い、支援を募っていいものか迷いが生まれた。オリンピックの開催さえ不透明になってきたため、冷静に考えてクラウドファンディングを無理やり進めるのはやめた。

 商品は720mlと200mlの2種類を用意していた。第1弾は720mlが100本程度、200mlが600本。本当はもう少したくさん作る予定だったが、コロナ禍で資金を集められるのかという不安があったため、本数を減らしたのだった。

「それぞれ別の仕事を持っているので会って作業するのは週に1〜2回ですが、あれもやりたい、次はこうしたい、と夢中になって話しています」と語る泉野さん
「それぞれ別の仕事を持っているので会って作業するのは週に1〜2回ですが、あれもやりたい、次はこうしたい、と夢中になって話しています」と語る泉野さん
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 クラウドファンディングを延期する代わりに、その間に県内で開催されるイベントに参加し続け、「ぎふコーラ」の開発を猛アピールした。それと並行して地域の人との関係性を築くために、薬草の採取や畑仕事などの手伝いを積極的に行い、事あるごとに「ぎふコーラ」を作る意義を話してまわった。

 やがて政府による「GO TOトラベル」キャンペーンが始まり、再び経済が動きだそうとしていたため、10月にクラウドファンディングを開始。みるみるうちに支援金額が増えていった。片山さんは「目標額に達したスピードには驚いたけれど、地道な広報戦略が功を奏したと思う。狙い通りだったかな」と言ってほほ笑んだ。

720mlと200mlの2種類を用意した「ぎふコーラ」
720mlと200mlの2種類を用意した「ぎふコーラ」
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 地域の人も前向きに応援してくれ、ふたを開けると支援者の半数は岐阜県内の人、もう半数は関東圏の人だった。トレンドに敏感な20~30代が多いのではないかと予想していたが、思いがけずその親世代の60代の支援者も多かったという。

 今年2021年の販売分については、事前予約者には8月2日から順次送付した。8月10日現在、引き続きネット販売も受け付けているほか、「to U organic」や「kitchen marco」など3人が関わっている店舗で販売している。このほか、200mlについては県内のイベントなどでも販売しているという。

ぎふコーラのレシピ本も作った。薬草のシロップなので、さまざまな使い道がある
ぎふコーラのレシピ本も作った。薬草のシロップなので、さまざまな使い道がある
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 今後の展望を聞くと、3人は目を輝かせながら話してくれた。

 岐阜県は、飛騨・中濃・東濃・岐阜・西濃の5つのエリアに大別できる。今回は西濃エリアに注目して伊吹山の薬草クラフトコーラを製造したが、今後はこの薬草コーラをベースに各エリアの特徴的な果物や植物などを加えて、そのエリアならではのクラフトコーラを作っていくつもりだ。

 その過程で、岐阜全土の埋もれてしまった文化をもう一度掘り起こし、岐阜の魅力を発信できるような「ぎふコーラ」を作り続けたいという。

 「ぎふコーラ」は、若者たちがUターンしたことで得た温故知新を地域の協力者と共に具現化し、地域を価値化する取り組みといえる。今回のような取り組みが、全国各地に広がることを期待したい。