東京・銀座で、伊ブランドのジョルジオ アルマーニが展開する高級レストラン「アルマーニ / リストランテ」のフードロスメニューが注目を集めている。「フードロス」とは食べられるのに廃棄される食品のこと。同店では、昨年設立されたフードロスバンクの協力により、2021年3月下旬より、こうした食材を用いたコース料理を提供しているのだ。9月下旬には、ニューヨークで開催される国連食料システムサミットで、同取り組みが紹介される。なぜ、同ブランドがこのようなプロジェクトに取り組んだのか。日本にはどのような現状があるのか。関係者に話を伺った。

 「日本では、これが捨てられるトマトなの?」

 東京・銀座の高級レストラン「アルマーニ / リストランテ」のエグゼクティブシェフ、カルミネ・アマランテ氏は、店に届いた食材を見てショックを受けた。同店では、2021年3月下旬よりフードロスを用いたコース料理を提供。形が不ぞろいであったり、傷が付いていたりすることが理由で出荷できなかった野菜や、コロナ禍で行き場を失い廃棄される運命にあった魚、売れ残りやすい部位の肉などの食材を利用し、全7皿のコース料理を提供している。アマランテ氏の故郷、南イタリアではトマトは欠かせない食材だ。同じような大きさ、形の野菜がパッケージされて売られることが多い日本とは異なり、イタリアでは野菜は基本的に量り売りで、それぞれの形、大きさはまちまち。廃棄になるとは信じられない数々の食材の中でも、故国であれば当たり前に使われている状態のトマトが届いたことに、心が痛んだのだろう。

「アルマーニ / リストランテ」で、現在提供中の夏メニューに使用されている岐阜県・寺田農園のトマト。皮にハリがあるきれいなトマトだが、サイズが不ぞろいであるため、市場で販売できないという(写真:大塚千春)
「アルマーニ / リストランテ」で、現在提供中の夏メニューに使用されている岐阜県・寺田農園のトマト。皮にハリがあるきれいなトマトだが、サイズが不ぞろいであるため、市場で販売できないという(写真:大塚千春)
[画像のクリックで拡大表示]
同じく夏メニューで使用されている岐阜県・ひるがのラファノスの大根。フードロスとなる理由は傷や変形だ(写真:大塚千春)
同じく夏メニューで使用されている岐阜県・ひるがのラファノスの大根。フードロスとなる理由は傷や変形だ(写真:大塚千春)
[画像のクリックで拡大表示]

 「アルマーニ / リストランテ」で、フードロスメニューを提供できないかという検討が始まったのは2020年秋のこと。アマランテ氏が、フードロス削減による環境改善をめざす会社であるフードロスバンク社長の山田早輝子氏と交流があったことがきっかけとなった。従来からの問題に加え、コロナ禍で膨大な食材が行き場を失う中、同社は2020年9月に設立された。山田氏から日本のフードロスの現状を聞き、以前よりこの問題に関心があったシェフは、活動をサポートしたいと考えたのだ。

「アルマーニ / リストランテ」のエグゼクティブシェフ、カルミネ・アラマンテ氏。ナポリ出身。各国のミシュラン星付きレストランで経験を積んできた。2020年8月より現職(写真:大塚千春)
「アルマーニ / リストランテ」のエグゼクティブシェフ、カルミネ・アラマンテ氏。ナポリ出身。各国のミシュラン星付きレストランで経験を積んできた。2020年8月より現職(写真:大塚千春)
[画像のクリックで拡大表示]

 もっとも、プロジェクトが実現したのは、同レストランを手掛けるイタリアの高級ファッションブランドであるジョルジオ アルマーニ自体が、かねてより社会貢献に対する意識が高いブランドであったからだ。「リサイクル素材を使ったコレクションの発表はもとより、ミラノの本社では社員によるペットボトルの使用が一切禁止され、ゴミの削減にも積極的に取り組んでいます。人気の高いフレグランスの売り上げの一部を、途上国の人々が安全な水を飲むためのプロジェクトに寄付するなど、環境や社会問題に対する取り組みは実に多岐にわたっている。東京のオフィスからフードロスメニューをレストランで提供したいという提案をあげたところ、ジョルジオ・アルマーニ本人が、ぜひやるべきだと言ってくれました」と、ジョルジオ アルマーニ ジャパンPR & コミュニケーションズ マネージャー、中西聖子氏は話す。

 「アルマーニ / リストランテ」は東京のほか、ミラノ、ニューヨーク、ドバイに店を構えるが、フードロスへの取り組みは日本が初めてだ。「国によって状況が異なるため、同様のかたちのプロジェクトになるとは限りませんが、本プロジェクトは本社でも高く評価され、今後、他国が追随してくる可能性があります」(同氏)と言う。