NPO法人にこり(本部は福岡県遠賀郡岡垣町)は、障がい児や医療的ケア児を対象とした福祉サービスを手がけている。なかでも興味深い取り組みは、医療的ケア児の移動支援だ。夏は海水浴、さらには災害時の避難訓練も兼ねた「夜の動物園」など、遊びと実益を兼ねた取り組みを通じて、家族や地域を巻き込んださまざまな活動を展開している。

 夏休みも終わりに近づいた土曜日、福岡県北九州市に住むゆずちゃん(4歳)とお母さんは「にこたく(にこりタクシー)」の愛称で親しまれている車に乗って出かけた。お出かけ先は、福岡県遠賀郡岡垣町にある海水浴場である。出生後、1年間の生存率が2割を切るといわれる難病「18トリソミー」のゆずちゃんにとって、片道1時間の車での外出は初めての試みだ。数々の合併症を発症し、生まれてから何度も入退院を繰り返してきたゆずちゃんは、現在、初めて4ヵ月という長い期間を自宅で過ごせている。

「にこたく」の車内。荷物をたくさん積んだバギーもそのまま乗れる。バギーの足元には呼吸数などをチェックするモニターが付いている(写真:唐松奈津子)
「にこたく」の車内。荷物をたくさん積んだバギーもそのまま乗れる。バギーの足元には呼吸数などをチェックするモニターが付いている(写真:唐松奈津子)
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難病の娘と「楽しいことをする時間」を過ごしたい

 ゆずちゃんが起きている間は、10分から15分に1回の吸引が必要だ。呼吸器の管が水滴でぬれてたまると喉に詰まってしまうため、夜間も気が抜けない。2~3時間に1回は体の向きを変え、1時間に1回は呼吸器のエアが抜けていないかを確認しながら自宅で看護をする家族の日々。「せっかく病院の外にいられるのだから、家の外にも出て、楽しい思い出をつくってあげたかった」とお母さんは語る。

 ゆずちゃんの外出をサポートしているのは、障がい児や医療的ケア児を対象とした福祉サービスを手がけるNPO法人にこりだ。にこりがしばしば海水浴で使っているのは、眺めの良い波津海岸の海水浴場である。現地に着くと、すぐそばの宿泊施設「八幡屋」やレストラン「ぶどうの樹」のスタッフ、さらには同施設を経営する地元企業・グラノ24Kの社長までもが、にこたくの乗降できる駐車スペースを確保し、砂場にテントを張って迎えてくれる。呼吸器が外れないように水着に着替えるのも大人4人がかりだ。看護師2人とヘルパー、医師、そして当日は休みだったスタッフも子どもたちを連れて、海水浴を一緒に楽しもうとやって来た。砂浜の白いベンチで、浮き輪に浮かんで海で、スイカと一緒に砂浜のテントの中で、ゆずちゃんとたくさんの写真を撮った。

海岸沿いの駐車場にバギーで乗降できるスペースを確保してくれたり(上)、テントを貸したりしてくれるまちの人に挨拶(下)(写真:唐松奈津子)
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海岸沿いの駐車場にバギーで乗降できるスペースを確保してくれたり(上)、テントを貸したりしてくれるまちの人に挨拶(下)(写真:唐松奈津子)
海岸沿いの駐車場にバギーで乗降できるスペースを確保してくれたり(上)、テントを貸したりしてくれるまちの人に挨拶(下)(写真:唐松奈津子)
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呼吸器があるため、着替えも大人4人がかり(上)。看護師とヘルパーで機器を分担して携帯しながら海辺で記念撮影(下)(写真:唐松奈津子)
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呼吸器があるため、着替えも大人4人がかり(上)。看護師とヘルパーで機器を分担して携帯しながら海辺で記念撮影(下)(写真:唐松奈津子)
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呼吸器があるため、着替えも大人4人がかり(上)。看護師とヘルパーで機器を分担して携帯しながら海辺で記念撮影(下)(写真:唐松奈津子)
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呼吸器があるため、着替えも大人4人がかり(上)。看護師とヘルパーで機器を分担して携帯しながら海辺で記念撮影(下)(写真:唐松奈津子)