2021年10月、長崎県波佐見町(はさみちょう)に、地元メーカーが単独でつくった公園「HIROPPA(ヒロッパ)」がオープンした。企業が営利で運営するテーマパークのようなこれまでの公園とも、行政が管理・運営する都市公園とも趣が異なる。いったいどのような公園で、なぜ一企業がつくることになったのか。公園をつくった波佐見焼メーカー、マルヒロの代表取締役社長・馬場匡平(ばば・きょうへい)さんと、公園の運営を支えるスタッフに話を聞いた。
入り口に設けられたグラフィカルなサイン。いつの、どこの国のものか分からない土偶のようなオブジェ。建物の中には、ガラス窓越しにカラフルな商品や置き物が見える。HIROPPAの“得体の知れない”外観と、背景に広がる波佐見町ののどかな里山の風景とのコントラストに驚き、思わず車を停める人も少なくないのではないか。
敷地面積約1,200坪の公園の入り口側にある、シンプルに美しく設計された建物は、波佐見焼メーカーであるマルヒロの直営店でもあり、公園のカフェ・売店でもある。園内には芝生が広がり、アーティストがデザインする遊具やちょっとした菜園のようなものも見える。ラフな起伏のある土地には、車椅子でも通りやすいように設計されたフラットな通路が美しく延びている。
取材した日は近隣の保育園の散歩の日だったようで、黄色い帽子をかぶった子どもたちと先生が「おじゃましまーす!」と建物の入り口で手を振って公園内に入っていった。
直営店の店長である二宮三裕さんによると、休日は、商品を見に来る顧客や観光客と思われる人の来訪が多いが、平日は、近隣の保育園や幼稚園の子どもたちのほか、お弁当を買いに近所の人がよく来るのだと言う。
「これまで直営店に来るのは『商品を買いに来るお客さま』でした。でも、今は犬の散歩をする人なども気軽に立ち寄ってくれます。お互いに名前も覚えて、声をかけ合える場所になっていることが嬉しいんです」(二宮さん)