2021年11月、夜の鳥取砂丘で一風変わったイベントが行われた。東京のベンチャー企業amulapo(アミュラポ)が企画・提供する「月面極地探査 実験A」だ。最新のデジタルデバイスを用いて、砂丘に月面をイメージした映像を投影。夜の砂丘を月面に見立て、仮想ミッションを行うという。筆者はこの「月面極地探査 実験A」に参加。前編では、その体験をリポートする。

 東京のベンチャー企業「アミュラポ」が企画・提供する「月面極地探査 実験A」とは、次のような体験アクティビティーだ。

 参加者はAR(*)グラスをかけて夜の砂丘を散策する。砂丘には、参加者へのミッションに関係する設備が配置されており、そのそばにはミッションを記した立て札がある。例えば、太陽光発電パネルの模型が置かれた付近には、「太陽光パネルを展開して電力を確保せよ」と書かれた立て札が設置されている、といった具合だ。

(* ARとは拡張現実をあらわす略語。現実の光景にバーチャルな視覚情報を加えて、現実環境を拡張する技術のこと)
アミュラポのプレゼンテーションによる「月面極地探査実験A」の様子。宇宙服風のコスプレでミッションを実行している(写真:amulapo)
アミュラポのプレゼンテーションによる「月面極地探査実験A」の様子。宇宙服風のコスプレでミッションを実行している(写真:amulapo)
[画像のクリックで拡大表示]

 参加者はその指令を読み解き、ミッションを遂行する。正しくミッションを完遂すると、ARマーカーがプリントされたパネルを発見できる。そのARマーカーをARグラスで読み込むと、各ミッションに関連したCG映像が眼前に投影される。3~5分程度のCG映像が終わると、そのミッションは終了。砂丘上に散在する次のミッションを探して、移動する。

「月面極地探査実験A」におけるミッションの基本的な流れを解説した図。イベント参加者に配布されるパンフレットに掲載されている(資料提供:amulapo)
「月面極地探査実験A」におけるミッションの基本的な流れを解説した図。イベント参加者に配布されるパンフレットに掲載されている(資料提供:amulapo)
[画像のクリックで拡大表示]

 さて、ここからは私の体験を具体的にリポートしていこう。

 2021年11月27日17時30分、JR鳥取駅前からタクシーに乗り、運営者から指示された集合場所に向かった。集合場所は、鳥取砂丘の西側地域にある駐車場。一般的に観光地として知られている地域は砂丘の東側で、西側の砂丘を訪れる人は少ない。ましてや夜の時間帯となれば、数少ない街灯の下、周囲に人の気配はほとんどない。少し離れたオートキャンプ場から、わずかな明かりと人の気配がうかがえる程度だ。

 指定された地域でタクシーを降りたけれど、周囲を見渡しても派手なイベントの気配はない。街灯の下を離れ、暗がりの中を駐車場の先にある防砂林の方向へ進むと、やがてわずかな明かりと小さなテントが見えてきた。

 あの小さな明かりがレセプション施設?

受け付けや順番待ち、イベント後の食事などを行うレセプション用のテント(写真:バウム)
受け付けや順番待ち、イベント後の食事などを行うレセプション用のテント(写真:バウム)
[画像のクリックで拡大表示]

 イベントの受け付けなどを行うのは、2張りのテントと、資材・機材の積まれたワゴン車1台。参加受け付けからイベントの説明、機器の装着、順番待ちの待機など、レセプション一切はこのテントで行う。

 今回、私はタクシーで現地に向かったが、これはちょっと失敗だった。冬の鳥取砂丘の風と寒さを甘くみていた。「極地」に挑む身としては、考えが浅かったかもしれない。順番待ちの待機時間がそれなりにあるし、ちょっとした着替えなどもできたほうがいい。一時的に暖を取れるレンタカーで訪れるのが正解だったように思う。実際、他の参加者たちはみんなレンタカーやマイカー利用。タクシーでやってきた、初心(うぶ)な遊山(ゆさん)客は私だけであった。