夜の鳥取砂丘をロケーションに、AR技術を使って疑似月面体験を提供する。そんな独創的な試みを企画・提供するのは、ベンチャー企業の「amulapo(アミュラポ)」。教育やエンターテインメントを目的とした宇宙体験サービスを企画、提供する企業だ。前編では、アミュラポの提供するアクティビティー・イベント「月面極地探査 実験A」について、 筆者の体験リポートを報告した(前編はこちら)。後編では宇宙エンターテインメント企業「アミュラポ」の実態に迫る。

 「月面極地探査 実験A」は鳥取砂丘をロケーションに、月面探査をモチーフにしたCG映像をAR(*)グラスを用いて投影するという体験アクティビティーのイベントだ。これは2020年に観光庁が行った「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成(第1次)」実証事業にて採択。先進的な観光振興策として高い評価を受け、観光庁の支援の下で実施された。現在も、毎週土曜日の夜に開催されている。

(*ARとは拡張現実をあらわす略語。現実の光景にバーチャルな視覚情報を加えて、現実視覚を拡張する技術のこと)
「月面極地探査実験A」ガイダンス映像の一場面。ARグラスを用いて、鳥取砂丘に月面をイメージした映像を投影する(資料提供:amulapo)
「月面極地探査実験A」ガイダンス映像の一場面。ARグラスを用いて、鳥取砂丘に月面をイメージした映像を投影する(資料提供:amulapo)
[画像のクリックで拡大表示]

 この「月面極地探査 実験A」を企画・運営するのは、ベンチャー企業のアミュラポ(東京都新宿区)。宇宙開発技術をエンターテインメント化する事業に取り組んでいる。

 アミュラポの事業の狙いは、宇宙産業の市場拡大の試みだ。宇宙開発とそれに伴う科学技術への豊富な知識を生かし、ARやCG(コンピューターグラフィックス)、VR(仮想現実)といった技術を用いた「宇宙エンターテインメント」を企画・実践。その宇宙エンターテインメントを媒介に、広く宇宙産業への理解を促し、啓蒙と市場の拡大をめざす。

 代表取締役を務めるのは、田中克明氏。田中氏は大学でロボット工学を専攻の後、民間の宇宙開発ベンチャー企業にエンジニアとして勤務。企業に所属しながら、アミュラポの代表を兼務している。

アミュラポ代表取締役の田中克明氏。現在は民間の宇宙開発ベンチャー企業にエンジニアとして勤務しながら、アミュラポの経営も担っている(写真:バウム)
アミュラポ代表取締役の田中克明氏。現在は民間の宇宙開発ベンチャー企業にエンジニアとして勤務しながら、アミュラポの経営も担っている(写真:バウム)
[画像のクリックで拡大表示]

 田中氏がアミュラポを立ち上げることになった最初のきっかけは、2017年のこと。当時、民間の宇宙開発ベンチャー企業でのインターンシップに参加していた田中氏は、同じインターンシップの仲間3人と、大手電子機器メーカーが主催する宇宙開発アイディアコンペに参加。架空の火星移住計画を策定し、プレゼンテーションするという内容のコンペだった。

 田中氏らのチームはこれに入賞。高い評価を受けたことで、「宇宙開発のエンターテインメント化というテーマに手応えを感じた」という。翌年、コンペのために結成したチームの4人は共同で合同会社を設立。これが、アミュラポの母体となる。その後、この合同会社から田中氏と、国の宇宙研究開発機関に勤務する日高萌子氏が独立するかたちでアミュラポを設立。宇宙開発をエンタメ化する事業を本格化してゆく。現在は、田中氏と日高氏に加え、早稲田大学先進理工学研究科博士課程に在籍する松広航氏の3人が同社のコアメンバーとして活躍している。