地震や台風などによる災害発生が続くなか、地域の防災訓練は重要な役割を持つ。しかし多くの自治体は、参加者には高齢者が多く、新たな市民の参加が少ないといった課題を抱えている。その一因は、防災訓練が「面白くない」から。こうした現状を変えようと、全国の自治体が注目している取り組みがある。臨場感のある防災訓練をオンラインで体験できる「リモート型 防災アトラクション」だ。

 「チャラン! チャラン!」。緊急地震速報を告げる音とともに、「強い揺れに警戒してください」の声がパソコンから流れる。動画には、家の中にいる小学生くらいの女の子、その母、祖母が映っている。その直後に地震が起き、激しい揺れで大量の食器や本が落ちた。祖母がうずくまると、画面には、アナウンスとともに文字が表示された。「頭の守り方を選択せよ!」

「リモート型 防災アトラクション」で流れる架空のニュース映像(画像提供:フラップゼロα)
「リモート型 防災アトラクション」で流れる架空のニュース映像(画像提供:フラップゼロα)
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 30秒間のタイマーも映り、焦りを誘う音楽が流れる。見ていた筆者は、つられて真剣に考えた。ヘルメットがなければ、堅い本を頭に載せるのが正解だろうか──。「解説編」が始まると、腕を上げて、頭の上の保護版を両手で持つ女性の写真とともに、頭の守り方のポイントが三つ、画面に映った。「手首は頭に固定する」「脇は閉じる」「隙間は空ける」。「隙間」とは、頭と保護版の間のことだ。筆者は、一つめと二つめを意識したことがなかった。三つめは完全に間違えた。「空ける」の文字だけ赤字にしているので、要注意点なのだろう。

 その後も動画は続く。母親は、食器の破片が散らばる床を歩き、血を流して倒れている祖母を見つける。すると再び、アナウンスとともに文字が表れた。「目の前に出血している人がいる あなたならどうしますか?」

 今度の制限時間は20秒。筆者は再び考えた。まずは消毒して止血だろう。でも消毒薬どころか、水もないかもしれない。そもそも正しい止血の方法を知らない。もしくは、先に相手の体の向きを変えたほうがいいのか? さっぱり分からない。20秒はあっという間に過ぎた。

ゲーム感覚で子どもを惹きつける

 これは、横浜市瀬谷区が2021年12月11日に実施した、リモートによる防災訓練の一部だ。この日のテーマは地震対策。Web会議サービス「Zoom」を使い、午前10時~11時20分の80分間にわたって開催された。

横浜市瀬谷区で2021年12月に実施したリモート防災訓練のチラシ(資料:フラップゼロα)
横浜市瀬谷区で2021年12月に実施したリモート防災訓練のチラシ(資料:フラップゼロα)
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 80分間は、大きく三つのステージに分かれている。第1ステージは「自助力に挑戦!」がテーマで、発災直後の状況を追体験して自分の対応力を知る。前述の「頭の守り方」や「出血している人」への対応などがこれに当たる。

 第2ステージは「知識・準備編」。謎解きとレクチャーを通じて、助け合う力や災害対応力を高める。その一例は、災害に備えるための四つのアイテムをヒントから導き出し、その名前の中の文字を並べ、言葉を完成させるというものだった。

 第3ステージは「自宅の備蓄品確認」。瀬谷区の訓練では、自宅に備蓄している手動ラジオやカセットコンロ、非常用トイレなどをカメラの前に持ってきて、得意そうに見せる子どもたちもいた。自宅にある大きな製品を見せることができるのは、リモートのメリットの一つだ。

 参加費は無料で、参加資格は瀬谷区内在住・在学の小中学生とその保護者。まずは、ゲーム感覚で子どもに興味を持ってもらうのが狙いだ。といっても、備蓄品を買うのは保護者なので、世帯で参加できるようにした。区内の小学校にチラシを配るなどして宣伝し、先着100世帯の募集に対して、88世帯の約230人が参加した。参加者からは、「楽しかった」「防災に触れるきっかけになった」といった感想が聞かれた。