2022年に「猫勢調査」からスタート

 そのネコリパブリックが、2021年度の「飛騨市ふるさと納税活用ソーシャルビジネス支援事業」の事業者に認定された。この事業は、ふるさと納税を活用して市内の社会課題や地域課題の解決に取り組む事業者を募集し、その事業者が行う事業を市が支援するというものである。もう少し説明すれば、市で管理する各種ふるさと納税の窓口を利用して寄付金を募り、その寄付金を事業の運営資金として交付する。

 ネコリパブリックが手がける事業は、冒頭でも触れた「SAVE THE CAT HIDA」。飛騨市にいる保護が必要な猫を助けることで、まちが魅力的になり、猫と共生することで地域も潤うと行った好循環を生みたいという河瀬さんの思いが起点となった事業だ。

「SAVE THE CAT HIDA」のキャッチ画像(資料:ネコリパブリック)
「SAVE THE CAT HIDA」のキャッチ画像(資料:ネコリパブリック)
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 ふるさと納税の寄付金の目標額は5億円。その半分の2億5,000万円がネコリパブリックに交付されることになっている。ふるさと納税としての寄付は2021年9月から受付が始まっており、取材した2022年3月時点の寄付総額はおよそ1億8,000万円。4月から交付金が支給される。

 事業は2022年からスタートする5年計画で、プランの概要は次のようなものだ。飛騨市内に活動拠点を借り、スタッフを常駐させる。まず市内の猫の情報を一元管理して、保護活動を最適化する「猫勢調査」を開始する。順次、猫を起点とした高齢者見守り事業「ネコミュニティー」(詳細は後述)、保護猫シェルターの設置、移動型保護猫専門病院、ホスピスなどの開設にも着手したいという。

今後「SAVE THE CAT HIDA」を通じて行う事業内容の年間イメージ。市内の猫の情報を一元管理するための「猫勢調査」などを計画している。いずれも、猫の保護活動を通じて地域が潤い、活性化するという姿をイメージした内容だという(資料:ネコリパブリック)
今後「SAVE THE CAT HIDA」を通じて行う事業内容の年間イメージ。市内の猫の情報を一元管理するための「猫勢調査」などを計画している。いずれも、猫の保護活動を通じて地域が潤い、活性化するという姿をイメージした内容だという(資料:ネコリパブリック)
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クラウドファンディングの仕組みに感銘を受けた

 なぜネコリパブリックは、このようなユニークな事業を手がけることになったのか。その経緯をたどってみよう。

 河瀬さんの実家は、岐阜県内で古くから学校給食のパンをメインに製造するパン工場を営んできた。河瀬さん自身は東京の大学を卒業し、東京や大阪で働いた後、Uターンし、父親の会社でネット通販事業やカフェなどの飲食店事業を任されていた。その関係で、ネット通販の事業者や会社経営者が集まる異業種勉強会などに頻繁に顔を出していたという。

 ある時、勉強会でクラウドファンディングという新しい資金調達の仕組みがあることを知る。日本では2011年に初のクラウドファンディングサービスとして「READYFOR」が登場し、ほぼ時を同じくして「CAMPFIRE」が創業。政府でもクラウドファンディングに注目し、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で、資金調達の手段の一つとしてクラウドファンディングの活用を取り上げている。

 河瀬さんは、その仕組みに興味をそそられた。もし自分ならどういうかたちでクラウドファンディングを活用するか、事業計画を思い描いたという。資金が調達できたら、猫助けにつながることを事業化したい。実家には生まれた時から猫がいて、幼い頃から大の猫好き。捨て猫を見つければ連れて帰るような子どもだった河瀬さんは、本気で保護猫活動に取り組みたかったのだ。

 そんな折、岐阜県が女性や若者が起業する新規事業に助成金を支給する「女性・若者起業支援プログラム」(起業支援型地域雇用創造事業)を立ち上げたことを耳にした。聞けば、父親の会社に在籍していても、製パンや飲食に関連する事業ではなく、まったく新しい事業であれば「起業」と見なされるという。

 河瀬さんの頭の中を、クラウドファンディングのために立案した事業計画が駆け巡った。「猫に関係する事業なら新規事業に違いない。単なる猫カフェではなく、保護猫カフェを経営しよう」。河瀬さんは飲食店運営のノウハウを生かして動物愛護活動の理念と絡めた企画を練り上げ、「女性・若者起業支援プログラム」に応募した。

 その河瀬さんの事業計画は助成されることとなり、2014年2月、今回訪ねた保護猫カフェ1号店をオープンさせた。

 当初、父親の会社の一事業として開始したが、カフェの売り上げとは別に寄付金も集まるようになる。すると親から「経理がややこしいから、事業を分離してはどうか」とたびたび言われるようになった。そこで新規事業開始から1年もたたずに、保護猫カフェをはじめ猫関連の事業を独立させ、2015年に法人化したのである。

2階建ての民家を改造した岐阜店には、猫カフェに40匹、シェルターを含めると80匹の保護猫がいて、病気や性質などそれぞれ個体の状況に応じて居住空間が区切られている(撮影:中島 有里子)
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2階建ての民家を改造した岐阜店には、猫カフェに40匹、シェルターを含めると80匹の保護猫がいて、病気や性質などそれぞれ個体の状況に応じて居住空間が区切られている(撮影:中島 有里子)
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2階建ての民家を改造した岐阜店には、猫カフェに40匹、シェルターを含めると80匹の保護猫がいて、病気や性質などそれぞれ個体の状況に応じて居住空間が区切られている(撮影:中島 有里子)
2階建ての民家を改造した岐阜店には、猫カフェに40匹、シェルターを含めると80匹の保護猫がいて、病気や性質などそれぞれ個体の状況に応じて居住空間が区切られている(撮影:中島 有里子)
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 猫の殺処分ゼロをめざして、保護猫の存在や現状を知ってもらうきっかけづくりのために、アパレル雑貨ブランド「NECOREPA/」を設立し、猫をモチーフにした小物やバッグ、アクセサリーなどの販売も開始。ECサイトを立ち上げ、飲食店の経営にも乗り出した。保護猫のイベントや譲渡会も定期的に開催し、保護猫活動を広める努力は惜しまない。

 保護猫カフェの売り上げは多くはないが、ネコリパブリックには物販やイベントなど他の事業があるため、寄付に頼らなくてもやっていける。寄付金は収入の1割か多くて2割で、売り上げの多くを物販が占めているそうだ。

岐阜店から200m程度のところにある「NECOREPA STORE GIFU」。ショップ内にはカフェスペースが併設され、猫好きならずとも欲しくなる愛らしい猫グッズが並ぶ(撮影:中島 有里子)
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岐阜店から200m程度のところにある「NECOREPA STORE GIFU」。ショップ内にはカフェスペースが併設され、猫好きならずとも欲しくなる愛らしい猫グッズが並ぶ(撮影:中島 有里子)
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岐阜店から200m程度のところにある「NECOREPA STORE GIFU」。ショップ内にはカフェスペースが併設され、猫好きならずとも欲しくなる愛らしい猫グッズが並ぶ(撮影:中島 有里子)
岐阜店から200m程度のところにある「NECOREPA STORE GIFU」。ショップ内にはカフェスペースが併設され、猫好きならずとも欲しくなる愛らしい猫グッズが並ぶ(撮影:中島 有里子)
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