香川県にある東かがわ市で、地域が抱える課題を自発的に解決することをめざして、市役所の外部組織として「東かがわ市わくわく課」が立ち上がった。市民はもちろん、市外の人も参加して、『わくわくする未来の東かがわ市』の創造に取り組む。わくわく課は、どのようなきっかけで立ち上がり、どのような成果をあげてきたのか。

地元の人形劇のボイスドラマを完成、アニメ化めざす

 香川県東かがわ市は、2003年4月に大川郡引田(ひけた)町、白鳥(しろとり)町、大内(おおち)町が合併して誕生した市だ。香川県の最も東に位置し、2万8800人あまりが住む(2022年3月31日時点)。地場産業には3つの柱がある。1つは、全国シェア9割を超える手袋産業。2つ目は、ハマチの養殖。3つ目が伝統産業の和三盆だ。

東かがわ市役所
東かがわ市役所
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 東かがわ市には30年前に発足した『人形劇場とらまる座』がある。全国でも珍しい⼈形劇専用の劇場で、この劇場も含め、博物館や子どもが遊べる遊技場を備えたテーマパーク『とらまるパペットランド』が整備されており、多くの市民に愛されている。

 この人形劇の文化を生かして2022年4月、ボイスドラマ『パペットカルテット』が完成した。東かがわ市の高校生が人形劇の制作をめざすストーリーで、主役の声優をオーディションで決定するなど話題を呼んだ。ボイスドラマは東かがわ市観光協会のYouTubeで公開されている。今後、『パペットカルテット』を使った観光プロモーションや、アニメ化の計画も進行中だ。

 『パペットカルテット』を仕掛けたのは、東かがわ市の活性化を目的に2020年に発足した「わくわく課」。東かがわ市に属する公的な組織ではなく、市内外のメンバーが連携する横断的な組織だ。『パペットカルテット』のほかにも、地元の魅力を盛り上げるためのさまざまなプロジェクトを手掛けている。

 どのような経緯で、わくわく課が⽴ち上がったのか。1980年⽣まれの若き市⻑・上村(うえむら)⼀郎さんと、課を立ち上げた、わくわく課課⻑の⼭下翔⼀さんに話を聞いた。

選挙公約は「ワクワクするまち」

 東かがわ市では少子高齢化が大きな課題となっている。「香川県で一番、人口減少スピードが速い地域になります」(上村市長)。民間企業に勤めていた上村さんは、2019年に市長選に立候補し、政界に身を投じた。選挙公約は、東かがわ市を「誰もが知っている、ワクワクするまち」にすること。「未来に対して希望を持てるまちにしたいという願いを込めました」(上村市長)。これが、少子高齢化に歯止めをかけるという期待もあった。

上村一郎(うえむら いちろう)市長
上村一郎(うえむら いちろう)市長。1980年生まれ。合併前の大川郡大内町の出身。阪神淡路大震災で災害救助に当たる自衛隊に心動かされ、中学校を卒業してすぐに入隊。20歳までの5年間を自衛隊で過ごす。その後、中央大学法学部から電通パブリックリレーションズ入社。香川県出身で自民党の参議院議員・磯﨑仁彦氏に秘書として師事していたことが政治の道に入るきっかけとなった。
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 しかし、ワクワクさせるために、具体的にどこから手を着けていいのか。上村市長は悩んだ。「明るい未来を描くためには、まず地域経済の自立が必要です。ただ、何をどうやったらモノが売れるのか。人に関心を持ってもらうにはどうしたらいいのか。民間事業の構築や継続に携わった経験があり、地方行政にも理解のある、民間の方からアドバイスをいただこうと決めていました」(上村市長)

ペライチ創業者、山下さんとの出会い

 一方、「わくわく課」の課長・山下翔一さんは、ホームページ制作プラットフォームを運営する株式会社ペライチの創業者で現・取締役会長の肩書を持ちつつ、もともと地方創生に強い関心を持っていた。

 山下さんは語る。「私は九州の佐賀県で生まれ育ち、大学、大学院時代は広島県の地方部で過ごしました。今は東京に出てきていますが、もともと、地方のあり方に強い興味がありました。地方の課題を解決するということは、日本全体の重大な課題を解決することでもあります」

山下翔一氏
山下翔一氏 1983年、佐賀県生まれ。広島大学大学院理学研究科数学専攻博士課程前期修了。株式会社ペライチ 創業者・取締役会⻑。ペライチをはじめ上場企業数社を含む多数の企業の役員や顧問、環境省 地域循環共生圏や2025年大阪・関西万博など多数の国家プロジェクトに従事し、複数自治体のアドバイザー、大学教授など を務める。東かがわ市わくわく課・課⻑
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