約20年にわたって続いてきた、鹿児島県大崎町のリサイクルへの取り組み。今後は町内の子どもの教育や、リサイクルを学べる宿泊体験施設の整備といった町内での活動に加え、リサイクルのノウハウを国内外へ展開することも視野に入れている。取り組みのキーパーソンと、町で実際にリサイクルに取り組んでいる住民に、「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の今後の展望を語ってもらった。
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大崎町の「すごさ」を知らない子どものための教材開発も

 「リサイクル率日本一」に14回輝いた鹿児島県大崎町がめざす「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」。すべての資源がリサイクル、リユースされて循環する循環型社会の実現に向け、これまで20年以上にわたって、ごみの分別の見直しから人材育成まで、多面的な取り組みを実施してきた。その活動は今後も続いていく。

【前編記事「分別に無頓着だった町はなぜ変われたのか」はこちら】

 2022年度も、既にさまざまな取り組みがスタートしている。例えば、6月に鹿児島相互信用金庫と共同で実施した「GREEN KAGOSHIMA in大隅」は、鹿児島県内の中小企業が環境配慮型のビジネスを学び、業態転換に役立てるプログラムだ。

「GREEN KAGOSHIMA in大隅」第1回の様子(写真:大崎町SDGs推進協議会)
「GREEN KAGOSHIMA in大隅」第1回の様子(写真:大崎町SDGs推進協議会)
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 大崎町オリジナルの環境学習教材開発プロジェクトも始動した。協議会が大崎町教育委員会と町内の有志の教員と協力。大崎町内の学校に通う子どもたちが、地元の取り組みとその価値について理解を深めることを目的としている。

 「大崎町で生まれ育った子どもたちは、いまのごみ分別が当たり前になっている。だからこそ、このシステムがどれほど価値があるかを知らないんです。実際、私の子どもは中学卒業後、進学先で寮生活を始めたのですが、『父ちゃん、燃えるごみの袋があるけど、ごみって燃やしていいの?』と聞いてきました。教材を通して『自分たちがしていることはすごいことなんだ』と知ってもらいたいと思っています」。こう話すのは、かつて住民環境課の職員として資源リサイクルを推進してきた大崎町役場企画調整課課長の中野伸一さんだ。

環境学習教材開発プロジェクトの初回会合(写真:大崎町SDGs推進協議会)
環境学習教材開発プロジェクトの初回会合(写真:大崎町SDGs推進協議会)
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学校でも、分別の取り組みは浸透している(写真:志鎌康平)
学校でも、分別の取り組みは浸透している(写真:志鎌康平)
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 ほかにも、数々の取り組みが今後予定されている。その一つが、資源の域内循環を促進するための物産館・レストランの検討だ。生ごみ由来の堆肥は町の農業で活用されているものの、とれた有機野菜はほとんど町外で販売・消費されている。今年度は、それらの有機野菜を提供する物産館やレストランを、どうすれば実現できるか検討するフェーズに入る。

家庭での生ごみ分別。回収日にはバケツごと、ごみステーションに持っていく(写真:志鎌康平)
家庭での生ごみ分別。回収日にはバケツごと、ごみステーションに持っていく(写真:志鎌康平)
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生ごみ由来の堆肥「おかえり環ちゃん」(写真:志鎌康平)
生ごみ由来の堆肥「おかえり環ちゃん」(写真:志鎌康平)
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 大崎リサイクルシステムを学べる宿泊体験施設も計画している。大崎町の視察に来た人が町のごみ分別を体験したいと思っても、民間の宿泊施設に泊まればその機会はない。町の生活を体験しながら大崎リサイクルシステムを学べるモデル棟を整備し、トライアルを行っていく。

「カーボンニュートラル宣言」や新法の施行も後押し

 大崎町は、サーキュラーヴィレッジ実現のための取り組みを順調に進めている。ただ、いまのところ大崎町と連携を検討している自治体はすべて県外の自治体であり、鹿児島県内で名乗りを上げる自治体はまだ現れていない。なぜなのか。

 「鹿児島県内の市町村も含め、既に焼却炉を持っている自治体はごみを一定量燃やし続けて、焼却炉を使い続けなければならないからです。焼却炉は税金を投じてつくられていますから、ごみを燃やさないということはあり得ないんです。ごみが少なくなると炉の温度が上がりきらず、かえって効率が悪い。行政の立場としては焼却炉を効率よく稼働させるごみ処理施策は考えても、減量化の方向には向かいにくいんだと思います」(中野さん)

 それでも、いまは「追い風が吹いている」と、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の専務理事・業務執行責任者を務める齊藤智彦さんは話す。「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」のキーパーソンの一人だ。

 「昨年1年間活動してみて、大崎リサイクルシステム普及にとっての一番の阻害要因は、焼却炉の存在だということが分かりました。ただ、焼却炉の寿命は20〜30年。全国の埋立処分場の残余年数は平均20年ほどと言われています。焼却炉を持つ自治体でも、そこから出る焼却灰は最終的に埋め立てなければなりません。予算や土地に余裕のある自治体は、焼却炉や埋立処分場の寿命が来たらまた施設をつくるかもしれませんが、そうでないところは次の一手を考えないといけない。そのタイミングで、大崎リサイクルシステムに注目が集まる可能性がある、と考えています」(齊藤さん)

 社会情勢の変化も「追い風」を後押しする。2020年10月、当時の菅義偉首相が2050年までにGHG(温室効果ガス)排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を行った。2022年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行されている。「今後、プラスチックの絶対量は減っていく。そこでも大崎町の出番があります」と齊藤さんは力を込める。

 「焼却炉のある自治体は現状、プラスチックという『助燃剤』を入れて湿った生ごみを燃やしています。生ごみは水分が多く、それだけでは燃えないからです。だから、プラスチックが減ればごみの焼却ができなくなり、問題になると考えています。他の自治体が焼却炉で燃やしているごみの大部分は、大崎町では堆肥化される生ごみ、草木に当たります。他の自治体も、大崎町のように生ごみと草木を取り除いてリサイクルに回せば、たとえプラスチックが減っても小さな焼却炉に更新すれば済みますし、あるいは焼却炉が不要になるかもしれない。今後、焼却炉の更新や埋立処分場の問題が出てくる自治体に、大崎町の知見をお分けできるのではないかと考えています」(齊藤さん)