TOPマネジメント > 広がりつつあるインナーソースの文化、3社の事例(上)

マネジメント

広がりつつあるインナーソースの文化、3社の事例(上)

2021/11/29

Scott Carey InfoWorld

Bloomberg:自ら変化を引き起こす意欲

 インナーソースが根づいてきた業界の1つに、金融サービス業界がある。元来この業界は、組織の縦割りが長年にわたって続き、コードを共有しない保守的で秘密主義的なやり方がよく見られた。

 米US Bankのオープンソース担当責任者、Gil Yehuda氏は、英ロンドンで2021年10月に開催されたイベント「Open Source Strategy Forum」で次のように話していた。「どちらかと言えば従来型の業種にあたる我々にとって、インナーソースは、自分の守備範囲にとどまる昔ながらの世界観からの転換だ。コードを守るために共有は控えるという考え方は表層的だ。実際には、密接な相互依存関係が土台となる。共通の資産プールが全員に恩恵をもたらすと捉える方が健全だ」

 また、同じイベントで米Capital Oneのディスティングイッシュトエンジニア、Arthur Maltson氏はこう話していた。「現在のCapital Oneは、コード共有が盛んで、業務部門の枠を越えてプラットフォームへのコントリビューションを行うことも多い。経験を積んだエンジニアにとって、コードは目標達成の手段になり、ビジネス上の問題の解決につながる。それを実現するには、インナーソースを取り入れ、よりオープンになることが一番だ。関与する人数が増えるほど、問題を解決しやすくなる。エンジニア間での縄張り意識から脱却する必要がある」

 米Bloombergでは、この10年ほどの間にインナーソースが少しずつ浸透し、当たり前の存在になってきた。社内開発者向けツールのチームから広がり、現在ではクロスアセットトレーディングなどの主要アプリケーションでも普通に取り入れられている。

 Bloombergのチームリード、Joe Patrao氏は、2021年4月のプレゼンテーションで次のように述べた。「現在では、会社全体のエンジニアが、他のチームのコードベースに自ら変化を引き起こそうという意欲を、これまでにないほど高めている。変化の対象は、顧客の不満を解消する単純なバグ修正の場合もあれば、大勢のエンジニアの生産性を高める重要な新機能の場合もある」

 現在では、Bloombergのすべてのエンジニアが、GitHub Enterpriseを使ってコードの参照やメンバーとのコラボレーションを行っており、コントリビューションやテストの明確な指針もある。Bloombergでソフトウエアエンジニアリングチームを率いるBecky Plummer氏は次のように説明する。「プルリクエストやコードレビューを利用して変更を取り入れており、プルリクエストで求められる基準もチームによって異なる」。例えば、厳しい規制要件が適用されているトレーディングアプリケーションよりも、社内ツールの方が、プルリクエストの基準が低い場合がある。

 インナーソースの手法を取り入れる前のBloombergでは、新機能や統合を要求するエンジニアは担当のプロダクトマネージャーに連絡する必要があり、開発のベロシティを損ねたり、チーム間のコラボレーションを阻害したりする要因になっていた。「インナーソースは、非常に大きな学習経験になり、価値の向上やプロダクトのデリバリーの加速につながることが、ここまでの年月で分かってきた」とPlummer氏は言う。

翻訳:内山卓則=ニューズフロント

↑ページ先頭へ