都道府県CIOフォーラム第16回春季会合の様子。東京・目黒の「ホテル雅叙園東京」で開催した。
(写真:新関 雅士、以下同じ)

都道府県CIOフォーラムは、第16回春季会合を2019年2月5日・6日の2日間、東京都内で開催した。初日は、デジタルファーストをにらんだ電子申請・電子決裁の進め方と課題について意見を交換した。2日目午前は、業務効率化のためのRPA(ロボットによる事務効率化)とOCR(光学式文字認識)の活用策、午後はパブリッククラウドサービスを安全に活用する方策を議論した。冒頭の議事では、4月からの会長団体として島根県を選出した。

都道府県CIOフォーラムとは

都道府県および関係団体のCIO(情報化統括責任者)または情報化推進担当責任者で構成する任意団体。相互の情報共有や民間IT企業も含めた意見交換を通じて、IT施策の推進に寄与することを目的に2003年8月26日に設立された。基礎自治体にもオブザーバー参加を呼びかけており、今回は仙台市、さいたま市、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市、広島市の各政令指定都市が参加した。「日経BPガバメントテクノロジー」が事務局を務めている。

ディスカッション1 何が電子申請・電子決裁を阻むのか

 初日のディスカッションでは、政府が行政手続きのオンライン化の徹底と添付書類の撤廃を掲げて「デジタルファースト」政策を推進する中で、都道府県での電子申請や電子決裁の課題、成功/阻害の要因を議論した。初めに内閣官房IT総合戦略室の奥田直彦参事官が、デジタルファースト政策の法制化の経緯や方針を説明した。

根強い紙文化を乗り越えるには

 秋田県企画振興部情報企画課の本庄克彦ICT戦略推進監は、「添付書類の撤廃には賛同するが、阻害要因を因数分解して、できることから手を付けないとゴールにたどり着けない」と懸念を表明。さらに「行政は紙文化の慣習が根強く、電子化の賛同が得にくい。先日も市町村を集めてデジタル・ガバメント研修会を実施したが、紙を配って説明せざるを得なかった。まず紙の排除を強制すべきではないか」と提案した。

本庄 克彦氏
秋田県 企画振興部 情報企画課 ICT戦略推進監

 奥田氏は「添付書類は約4万6000手続きが法令で決まっており、住民票と戸籍、登記事項証明書、不動産登記で8割以上を占めることが判明した。まずそこから削減に取り組む」と回答。紙文化の払拭については、「霞が関も同じだが、庁舎内無線LANなどの環境整備から始めている。取り組みが進んだ部署では、関係者がPCを持ち寄り、資料をスクリーンに映してその場で修正を加えている」と事例を交えて答えた。

 事前のアンケート調査で電子決裁の比率が高く阻害要因はないと答えた山梨県総務部情報政策課の横田富雄情報システム専門監は、同県の状況を紹介。「会計伝票も含めて約88%が電子的に記録の残る電子決裁になっている。残りは特に緊急の案件や持ち回りの案件だ。実は、添付書類が多い、原本性が必要などの案件が88%の半分ほどあり、紙と併用している。ただ、職員が慣れてきたせいか、PDF化して電子決裁ルートに乗せた方が簡単という意見も出てきている。まずできる部分からやってみるのが大事」と述べた。

 電子データと紙には同じ番号を付けて同期させており、「原本相当でいいのなら電子ファイルで回せばいいが、相手先の印章のある書類などは実物を回さざるを得ない」(横田氏)と併用方法を説明した。

 千葉県からは添付書類をPDF化するソフトの説明があった。「電子決裁時に、WordやExcelの添付書類を自動的にPDF化して同一画面に表示する。作業が簡略化され、視認性も高まった」(総務部の小髙康幸情報システム課長)と評価する。

小髙 康幸氏
千葉県 総務部 情報システム課長

職員採用は電子申請と好相性

 事前のアンケート調査では、職員採用の応募で14団体が電子申請を導入済みだった。都道府県CIOフォーラム会長を務める富山県経営管理部の半田嘉正情報企画監は、電子申請の導入理由を「職員採用は件数が多いうえに県外からも応募があるので利用している。実は、職員採用の申請と人事委員会が管轄する採用システムが自動連携されているので、人事委員会の要望もあって取り組んだ」と説明した。

半田 嘉正氏
富山県 経営管理部 情報企画監

 職員採用に電子申請を利用中の他団体からも、「応募の7割強がオンライン。非常に有効に使われている。民間もほぼオンラインなので、当たり前とも思う」(北海道総合政策部情報統計局の千葉繁情報政策課長)、「職員採用では、本人が試験を受けに来る際に運転免許証や合格証明書などを持ってきてもらい、原本で確認できるのでオンライン化しやすい」(東京都総務局情報通信企画部の三関堯企画課統括課長代理)との意見が上がった。

千葉 繁氏
北海道 総合政策部 情報統計局 情報政策課長
三関 堯氏
東京都 総務局 情報通信企画部 企画課統括課長代理(電子自治体担当)

 大阪府総務部の八尾学IT・業務改革課長は、「電子申請の成功例に共通するのは、行政側と応募者のコストが両方とも下がっていること。例えばイベントの申し込みは往復はがきで受け付けていたが、電子的にやり取りすれば相当コストが下がる」と分析した。ただし「設計図面などは印刷コストが申請者から行政側に移転するので、庁内の抵抗があるかもしれない」と懸念している。

八尾 学氏
大阪府 総務部 IT・業務改革課長

 京都府は、「電子申請を促進するため、電子申請に慣れていない事業者には、窓口に来て電子申請してもらう方法を検討している」(政策企画部の原田智情報政策統括監)。

電子決裁を文書管理と連動

 電子決裁が浸透した団体には、文書管理などの他システムと連動させているところもある。鳥取県総務部情報政策課の下田耕作課長補佐は、電子決裁利用率が100%であることについて、「2005年に電子決裁と文書管理が連動したシステムを導入した際に、膨大な添付ファイルがある案件を除き、文書管理の規程で電子決裁すると決めた。修正や意見は電子的に書き込んで、それに対して回答し、最終決裁後は文書管理システムに移行する。経緯はすべて記録される」と説明。電子決裁の有効性を特に感じるシーンに、「決裁権限を持つ幹部の出張時でもリモートで決裁が進行する点」を挙げた。

下田 耕作氏
鳥取県 総務部 情報政策課 課長補佐

 京都府の原田氏は、「財務会計システムの導入時に、電子決裁をせざるを得ないフローにした。庁内から反発はあったが、今では定着した」と経緯を紹介。電子決裁の効果については、「同時並行で複数の案件が回るので、決裁期間は知事決裁で2週間、部局長決裁で1週間以内と以前の半分。念のために回す行為を排除し、本当の責任者だけにフローを回しているのも効果的」と説明した。

電子化は内部統制に影響する?

 宮城県震災復興・企画部情報政策課の水戸信吾副参事兼課長補佐からは、内部統制に関する質問があった。「会計事務には厳しい内部統制があって、請求行為などをきっちり確認する。当県では、電子決裁と紙の回覧の二重で実施している。添付書類を画面に同時に出すのは難しく、請求書の中身の確認などは紙の方がやりやすいと個人的には思うのだが、他団体の状況はどうか」。

水戸 信吾氏
宮城県 震災復興・企画部 情報政策課 副参事兼課長補佐

 これに対し京都府の原田氏は、決裁フローはすべてデジタルで回し、必要な場合は原本を参照できるようにしたと答えた。「書類はスキャナーでPDF化して添付し、決裁フローに回している。特に不満は聞こえてこない。決裁はデジタルだけで行い、必要な場合は会計担当部署が保管している紙の原本を参照する。会計担当は作業を効率化するために、ディスプレーを2台使っている」。

講演 まず添付書類を一括撤廃する

 最新のデジタル・ガバメント実行計画は、行政サービスの100%デジタル化を目指し実現の障害をなくしていくとしている。具体的には、そもそも必要性から見直して、最終的に添付書類を一括して撤廃する法案を作成する。添付書類を外すだけでは申請内容などを確認できなくなるので、行政機関間の情報連携システムも整備する。

 加えて、手続きのオンライン化を徹底する。現在の本人確認手法は署名や押印など紙ベースだが、本人確認できるデジタル手法を定義し、システム化を進めていく。

奥田 直彦氏
内閣官房 IT総合戦略室 参事官

 十数年前、すべての手続きをオンライン化する取り組みが頓挫した。入り口だけのシステム化を推し進めたのが原因で、年間数件、数十件の手続きまでオンライン化してしまった。利用率が伸びず、1件当たりのシステム整備費が数百万円、数千万円の手続きもあった。この失敗を生かし、ターゲットを絞るのに加えて、制度や行政事務のあり方を見直して業務改革を進めたうえで、デジタル化に取り組む。

 併せて、複数手続きのワンストップ化を重視し、先行的に子育て関連手続きから進めている。今後は、引っ越し、介護、死亡相続などを重点的にワンストップ化する計画である。法人向けでは、従業員の社会保険・税の手続きなどについて検討する。関連して各省に中長期計画の策定を義務付けた。各府省のCIO、副CIOなどの幹部が責任を持って進めていく。

地方自治体にも努力義務

 基盤整備では、行政データ連携標準の策定や、語彙、コード、文字の標準化を、制度とシステムの両面で進める。例えば、文字では漢字や外字の処理方法、コード標準では日付で元号・西暦、算用数字・漢数字のどれを利用するかなどを標準化し、データベースで名寄せができるようにする。

 また2018年に問題になった文書管理では、文書管理システムを改修して電子決裁を組み込み、文書の改ざん・決裁完了後の修正ができないようにする。システムごとに決裁権保有者が異なるので調整が必要になる。

 今回の実行計画は、2018年1月の決定から半年で改定した。政府の力の入れようを分かっていただきたい。

 現行の行政手続オンライン化法は「書面に加えてオンラインでも可能」としているが、検討中の「デジタル手続法案」ではオンラインを原則とし、「書面でも構わない」という形に表現をひっくり返す。法案は国を対象としているが、自治体は住民とのインタフェースそのものであり、オンライン化できないと障害が大きい。義務化はしないが、準拠のような形で努力義務として盛り込まれるので、対応をお願いしたい。