日経BPガバメントテクノロジーは2019年11月5日、「政令市・中核市・特別区CIOフォーラム」を東京都内で開催した。政令市、中核市(候補市)、特別区のほか、先進的なIT活用に取り組む基礎自治体から、CIO(情報化統括責任者)や情報化推進担当責任者が参加。デジタル自治体を目指す取り組みが報告され、活発に意見が交わされた。

写真●政令市・中核市・特別区CIOフォーラムの様子
2019年11月5日に東京都港区の赤坂インターシティで開催。47団体55人が参加(写真:皆木 優子、以下同じ)
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LINE窓口でサービス利便性向上

 「デジタル自治体への道」をテーマにした午前のセッションでは、まず福岡市総務企画局ICT戦略室の小玉豪人ICT戦略課長が、「LINEなどICTを活用した行政サービスの効率化と利便性向上」と題し報告した。

小玉 豪人氏
福岡市 総務企画局 ICT戦略室 ICT戦略課長

 福岡市は、人口約159万人(19年10月)で政令市5位、人口増加率は5.1%(15年国勢調査)で同1位である。このためもあり、引っ越し時期は役所窓口の混雑が深刻化している。加えて今後、少子高齢化が進むことも考慮し、ICTを活用した行政サービスの効率化や市民の利便性向上を優先度の高い施策としている。

 同市は公民連携の一環としてLINEおよび子会社のLINE FUKUOKAと18年に包括連携協定を結んだ。「LINEとは行政サービスの効率化や充実、サービス強化、課題解決に取り組んでいる」(小玉氏)。具体的には、福岡市のLINE公式アカウントを作成し、さまざまな情報を提供。例えばPM2.5や気象などの防災情報、ゴミ収集方法、予防接種などの子育て情報、不審者などの防犯・交通安全情報、市政便りなどだ。

 LINEのチャット機能を利用してゴミの品名を入力すると、分別方法や出し方を表示する。粗大ゴミの収集受け付けでは、導入前の14年度との比較で、「申し込みにかかる時間はインターネット申し込みの平均1分半から、LINEでは40~50秒にまで短縮した。役所への申し込み・問い合わせで電話が占める比率も85.4%から22.2ポイントも減った」(小玉氏)。

 加えて、少しでも窓口の混雑を減らそうと、転出入の際に必要な手続きについてAI(人工知能)チャットボットで案内したところ、繁忙期となる19年3~4月の2カ月間で約3300人の問い合わせに対応できた。小玉氏は「LINEを活用することで、転出入の手続き方法が分からないというだけで住民が何度も役所に足を運ぶような事態を減らすことができた」と説明した。

 19年4月には、LINE Payを利用したQRコードによるキャッシュレス決済にも対応した。現在は、各区役所の市民課窓口や課税課窓口、財政局納税管理課窓口、天神・博多駅などの証明サービスコーナー、各区の体育館・市民プールなど市内の20窓口・39施設で対応している。「区役所窓口での住民票交付などでの決済が多い」(小玉氏)。

 このほか福岡市では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI-OCR(光学式文字認識)を活用した行政事務の効率化も進めている。18年に実施したRPAの実証実験では、年間520時間分(約65人日分)の事務軽減効果が出ることを確認。NTTデータ九州と業務委託契約を結び、19年度中に国民健康保険や介護保険、市税関係など10~20業務への導入を目指している。

 質疑応答では、茨城県笠間市総務課の細谷有策係長が、行政手続きのオンライン化の際に起こり得る現場作業の複線化の結果として、職員の作業負荷が増加するかを尋ねた。小玉氏は「理想的には、業務のプロセスを見直すのがいい。ICT部門だけで進めるのではなく、各部門と連携することが重要」と答えた。