システム標準化で自治体の危機を救う

 総務省の東理事官に続いて、武蔵大学社会学部の庄司昌彦教授が「自治体システムの標準化に向けて」と題して講演した。同氏は総務省の「自治体システム等標準化検討会」の座長を務めており、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の主幹研究員としても活動している。

庄司 昌彦氏
庄司 昌彦氏
武蔵大学 社会学部教授 総務省 自治体システム等標準化検討会 座長

 まず庄司氏は、「スマート自治体」を目指す必要性を説明した。今後、人口減少が深刻化しても、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供できる状況を維持するのが目的である。そのための行政システムについて、「今の仕事を前提にした“改築方式”ではなく、仕事の仕方を抜本的に見直す“引っ越し方式”が必要」と強調した。

 続いて、スマート自治体の実現に向けて求められる条件を3つ示した。(1)行政手続きの紙から電子への置き換え、(2)行政アプリケーションの自前調達式からサービス利用式へのシフト、(3)自治体・ベンダーともに守りから攻めの分野に踏み込むことである。スマート自治体の実現方策としては、業務プロセスやシステムの標準化、データ項目や様式・帳票の標準化、セキュリティに配慮したシステムやAIなどサービスの利用を挙げた。

 「現状では各自治体がシステムを独自にカスタマイズする傾向にあり、このやり方が住民や企業、自治体の負担になっている。まずは各行政分野のシステム標準を設定し、標準の設定後5年以内にベンダーが機能をパッケージ化。同時に自治体は標準システムを導入し、原則としてカスタマイズしないで使う。これを進めることで、2040年までにスマート自治体が実現する」(庄司氏)。検討会では住民記録システムから着手し、20年夏頃に標準仕様書を公表する。

 続いて、ITやデータの活用がなかなか進まない現状について言及した。「16年に官民データ活用推進基本法ができたが、都道府県別に市区町村のオープンデータ取り組み率を見ると、10%以下が9団体もある。また、町内会やPTA、農協などの地域コミュニティにおけるソーシャルメディアの活用状況を米英独と比べると、日本は非常に遅れている」(庄司氏)。

 最後に庄司氏は「自治体システム等標準化検討会の座長になって、“システム標準化を進めたいが余力がなく無理”という自治体の声をよく聞くようになった。ただ、その声を受け入れる余裕は、おそらくもうない。何とかしたいと考えている自治体には、微力ながら貢献したい」と締めくくった。