共同化など4テーマで討論

 午後の最後はグループディスカッション。「ICTツールの活用」「セキュリティ」「IT業務管理」「システム共同化」の4テーマでグループに分かれ、事例報告と意見交換を行った。各グループのファシリテーターは討論の内容をまとめ、参加者全員に向けて報告した。

EBPMデータは広域で活用を

 ICTツールの活用グループでは、大津市の木下克己CIOアドバイザーが「大津市におけるデータ利活用の取り組み~EBPM・AI・RPA」と題して取り組みを報告した。同市は、以前は情報システム課を中心にオープンデータなどを推進していた。18年に政策調整部企画調整課にデータラボを設置し、データ分析に基づくEBPM(証拠に基づく政策立案)事業を主導してきた。

木下 克己氏
木下 克己氏
大津市 CIOアドバイザー(CIOA)

 19年には、デジタルイノベーション戦略を策定して28事業を選定。同時に庁内横断組織として政策調整部の下にイノベーションラボ(専任6人、兼任26人)を設置し、「データやITを生かして市民生活を便利にする施策を生み出すことを目指している」(木下氏)。EBPM・RPA・AIなどの施策はラボが所管。以前は5年単位で計画を策定していたが、デジタルイノベーション戦略からは社会の変化の早さに対応するため計画期間を3年に短縮した。

 取り組み事例として、滋賀大学データサイエンス学部や滋賀銀行と共催したシビックテックによるオープンデータの活用、証明書の取得場所と居住地の関係性の調査、携帯電話の基地局データを使ったインバウンド動態調査などを紹介した。

 さらに企業などと共同で実施した実証として、保育所・幼稚園の未入所者の分布や移住・定住に向けた政策形成、いじめ事案の分析と予測についても説明。「LINEを使ったAIチャットボットの活用やRPA・AIOCRの導入を検討中」と木下氏は付け加えた。

 ファシリテーターを務めた東京都町田市総務部の中田直樹情報システム担当部長は、議論を総括。「EBPMは広域でのデータ利活用が有効。オープンデータの公開も、項目や形式を含め圏域単位で実施できるといいのではないか」とまとめた。

中田 直樹氏
中田 直樹氏
東京都町田市 総務部 情報システム担当部長

セキュリティ人材の育成が必須

 セキュリティのグループでは大分市企画部の林浩一情報政策課長が、顔認証とICカードによる多要素認証の取り組みを報告した。「職員が複数のパスワードを管理するのが困難になっており、顔認証とICカード職員証による多要素認証の導入を進めている」(林氏)。Windowsと職員ポータルへのログオンを従来のID・パスワードからICカード(職員証)・顔認証に変更し、シングルサインオンの実現も目指している。

林 浩一氏
林 浩一氏
大分市 企画部 情報政策課長

 多要素認証の基盤を整えるため、LGWAN(総合行政ネットワーク)接続系の更新を進めてきた。18年3月に庁舎内の管理サーバー群を更新して仮想基盤を構築。19年9月にはデータセンターにある業務サーバー群も更新して、プライベートクラウド仮想基盤も新しくした。

 20年4月には端末・ネットワーク機器を更新し、ICカードと顔認証による認証基盤を稼働させる。「これまで1人でマイナンバー利用事務系端末とLGWAN系端末の計2台を使っていたが、1台で両系統を利用できるようになる」(林氏)。グループウエアなどの業務アプリケーションも、一度の認証で利用可能になる。

 LGWAN系の仮想基盤は仮想端末600台分、マイナンバー系仮想基盤は同500台分に対応する。ハードウエアは、職員用に2in1型PCを3300台、会計年度職員用にシンクライアント端末400台を導入。職員証になるICカードは約3350枚を作成する。また、リモートアクセス環境として、閉域モバイルSIM(Subscriber Identity Module)とWi-Fiルーターで50台のアクセスを確保する。

 情報漏えいの原因にもなる紙書類に関しては、印刷認証基盤を整備。ICカード職員証をかざさないと印刷できないようにする。印刷ログを管理することで、不要な印刷も減らす。端末と印刷の認証基盤が整うことで、今後は組織的・人的なセキュリティ強化のために人材育成を継続して行いたいと語った。

 ファシリテーターとして議論をリードした北九州市総務局情報政策部情報政策課の高尾芳彦係長は、「今後のセキュリティ対策として、RPA導入時や在宅勤務でのリモート端末利用時の考慮も必要となる」と話し、「多様で複雑な技術を使いこなすためには、情報部門職員の人材育成が必須になる」と強調した。

高尾 芳彦氏
高尾 芳彦氏
北九州市 総務局 情報政策部 情報政策課 係長